「お酒を知ること」は一生の趣味づくりに直結します。「日本酒はやっぱり冬に飲むのが美味い?」「日本酒は夏こそ熱燗!」「芋焼酎はお湯割り以外邪道!?」・・・酒好き同士で交わされる様々な議論があります。「そんなめんどくさい酒の場に巻き込まれたくない!」という気持ちもわかりますが、自分の味の好みを知りながら、お酒を共通の趣味として意見を交わして飲むお酒は実に楽しいものです。居酒屋で飲むだけでなく、リモート飲み会もスタンダードになった令和の時代。たまたま隣り合った酒好き同士が初対面とは思えないほど意気投合する酒場ならではの楽しさもありますが、リモート飲み会ならではの出会いや再会も楽しい!さぁ、酒飲み新時代の幕開けです!
日本酒飲みの二大派閥!?「日本酒は冷酒・熱燗どっちが美味しい?」
あさやん:冷酒が好きか熱燗が好きか、日本酒の飲み方って好みが出るよな。
北井:「飲む温度」ね!二大派閥とも言えるのが冷酒派・熱燗派!お酒自体を温めて飲むのがこんなにも普通なお酒って世界でも珍しいね。
あさやん:日本酒ならではやな。でもやっぱり日本酒はキリっと冷やした冷酒が美味い!スイスイ飲め特に夏には最高!一方熱燗というと北井みたいなおじさんがチビチビ飲むイメージやな。
北井:誰がおじさんやねん!まだ35歳やし、あさやんとも1歳しか変わらへんやないか。しかも!!日本酒は熱燗の方が美味い!日本酒が持ってる味わい深さを楽しむには熱燗に限る!冷酒で飲むなんてもったいない!味が分かってないやつの飲み方や!酒が泣くわ!酒の一滴は血の一滴!!
あさやん:語り口が完全におじさんやん!いやいや、最近の日本酒は香りもフルーティで上品な甘味があるものが多いんやから冷酒で飲む方が香りも楽しめてええねんて!
北井:確かにそういうタイプは冷酒で飲むと美味しいけど「親父の小言と冷酒は後で効く」っていう言葉があるように、冷酒は口当たりがよくてついつい飲みすぎてしまう上に、燗酒に比べて体内で吸収される速度も遅い!だから親父の小言のように後から効いてくるねん!
あさやん:気分良く飲んでたのに居酒屋さんを出るころ一気に酔いが回ってくるのはそういうことか。
北井:その分熱燗は体温に近い温度で飲むから体内への吸収が早くて、すぐに酔いが回るけどその分「あぁ、今これぐらい酔ってるなぁ。今日はこのへんでやめとこかな」っていう判断ができるわけ!身体にも優しくてかっこええ大人の飲み方ができるのが熱燗やねん!だから日本酒飲むなら絶対熱燗で飲めよ!わかったな!さぁ、柔らかい甘味・旨味が持ち味で、温めても最高な「会津娘 純米酒」を飲みながら激論を続けようぜ!!
あさやん:このおじさんとお酒飲みたくなーい!
冷やす・温める、それぞれのメリット・デメリットは?
北井:すまん、まさに親父の小言を言ってしまってたな。ちょっと冷静になるわ。
あさやん:小言というか普通に怒ってたで?日本酒を冷やす場合と温める場合のメリット・デメリットをちゃんと整理しとこう!あ、ここからは「冷静」に頼むで?「冷酒」だけにな。
北井:・・・え?
あさやん:なんか北井のせいで空気悪いから俺も調子悪いわ。
北井:人のせいにすなよ!まず冷やすメリットは「香りが清涼に感じられる」これが一番のポイントかな!特に吟醸酒とかのフルーティな香りは温めると感じにくくなるからね。味わいでいうと飲み口が引き締まる、甘味が軽やかに感じられる、酸味が清涼に感じられるとか。デメリットは冷やしすぎた場合に日本酒の味わいの核である旨味や甘味を感じにくくなるところかな。
あさやん:なるほど。冷やしすぎには要注意やな!じゃあ温める場合のメリット・デメリットをどうぞ!
北井:温める場合のメリットは、旨味と甘味がふくよかに感じられること!これがやっぱり一番重要かな!温めるときにもコツがあって、お酒を入れた徳利を80度くらいのお湯で湯煎したらアルコールの刺激も少なくて穏やかな味わいに仕上がるのも覚えておきたいですね!デメリットは香りの清涼感がなくなるから吟醸酒の香りを楽しみたい場合には不向きとか、熱すぎるお湯で温めるとアルコールの揮発が高まってアルコール臭の刺激が強くなりすぎたりとか。
あさやん:なるほどな!じゃあこの流れで今回のまとめをどうぞ!
北井:さっきからお前楽やなぁ!ほんで勝手に終わらすなよ!冷酒の説明まで俺がやってるし。
あさやん:まぁええやんか。え?まだ話すことある?早く飲み比べしようよ!
使い分けたら上級者!冷酒・熱燗の色んな温度帯
北井:もうちょっと話すことあるって!
あさやん:せっかく熱燗も飲みたい気分になってきたのに。
北井:ほんでさっきから熱燗熱燗って言ってるけど、温めて飲む日本酒のこと全般を言うときは「熱燗」じゃないから!「燗酒」っていう言い方が正しいから!
あさやん:また小言親父が出てきた!、、、しかも自分でも「熱燗」って言うてたやん。
北井:やかましい!「燗酒」って一言に言っても5℃ごとに名称が違ったり、合っているタイプのお酒も違うんですね。
あさやん:5℃ごとに違う!?
人肌燗、ぬる燗、上燗、、、まだまだある燗酒の呼び方!5℃違いで香味が変わる?
北井:30℃で「日向燗(ひなたかん)」、35℃が「人肌燗」、40℃が「ぬる燗」、45℃が「上燗(じょうかん)」、そして50℃が、、、「熱燗」やねん!そして55℃以上の燗酒のことを……?
あさやん:えっと……「もうあ燗」!
北井:……??
あさやん:ちょっと、冷酒を頭からぶっかけてくれ・・・
北井:変な頭の冷やし方すな!ちょっと追い込んでしまった、すまん。ほんまは知ってるやろ?
あさやん:「飛び切り燗」な!
北井:そう!今回使わせてもらってる「会津娘」の純米酒はほっこりするやわらかい旨味があるから燗酒にするなら熱々にはせず、ぬる燗から上燗ぐらいがおすすめです!旨味がしっかりある純米酒、特に生酛(きもと)仕込みや山廃(やまはい)仕込みだと製法上旨味成分が多いのでぬる燗ぐらいにしてあげるとよりその魅力が引き出されますよ!
あさやん:会津娘の純米酒はぬる燗美味しいよなぁ。あと、本醸造酒とか「辛口」ってラベルに書いてるお酒とか、キレが良くてアルコール感もしっかりあるタイプなんかは熱燗とか飛び切り燗にしたらキリっと締まった味わいを楽しめるな!寒い日にあえて外でおでんをつまみながら飲む熱々の本醸造酒の燗酒は最高!
北井:そうそう!旨味がしっかりならぬるめに!引き締まった味わいの日本酒は熱々に!
あさやん:飲めば心も熱々に!ということでかんぱーーい!!
冷酒も5℃違いで世界が変わる!? 雪冷え、花冷え……?冷やしすぎにも要注意!
北井:まだ終わってないってば!!冷酒の話!冷酒も5℃ごとに呼び方が違いますよ!5℃で「雪冷え(ゆきびえ)」、10℃で「花冷え(はなびえ)」、15℃では「涼冷え(すずびえ)」という呼び方になります。
あさやん:もう!覚えることが多いなぁ!
北井:お前はすでに覚えとけよ!読者の皆さんは名称を全部覚える必要はないですからご安心を。吟醸酒などのフルーティな香りと上品な甘味がある日本酒は10~15℃ぐらいで飲むのがおすすめです。冷やしすぎるとせっかくの香りも閉じてしまいますのでご注意を!
あさやん:そんなん言われても実際さ、家の冷蔵庫でお酒冷やしてて、グラスに注いで飲むときの温度なんか見た目ではわからんやんか。消費者視点に立って話さんと!
北井:めっちゃちゃんと怒られてる……まぁそれはそうやけど。
あさやん:俺だっていつも吟醸酒を冷蔵庫から出して「うわ、どうやろー?吟醸酒の香りまだ閉じてるかなぁ?わからんなぁ。ええい!もう飲んでしまえ!」ってなるまでいつも10分とか20分経ってしまうねん!
北井:ベスト出してるわ!自然と。
あさやん:え・・・?
北井:家庭用冷蔵庫は庫内がだいたい5℃前後なので冷蔵庫から酒瓶を出して10分~20分後にグラスに注いで飲むと香りも味もちょうど良い感じです!
あさやん:どうりで家で飲む冷酒がいつも美味いわけや!
北井:あさやんは理屈も分かって飲んでくれよ!
あさやん:さて、皆さんも「冷や」と「燗酒」の違い、よーくわかりましたね?
北井:わざとかっていうくらい話の種をうまく落としてくれるな。
あさやん:柿の種?今日は持ってないけど。
北井:いや、柿の種じゃなくて話の種!……普段柿の種持ち歩いてんの!?
あさやん:うん、まぁ。俺なんかおかしなこと言ってた?
北井:「冷酒」じゃなくて「冷や」って言うたやろ?「冷酒」と「冷や」は違う温度ですよ!っていう話もしたかったのよ。
あさやん:あぁ、俺「冷や」って言ってしまったか。
北井:そうそう!
え?「冷酒」と「冷や」はまた別!?
あさやん:「冷酒」は冷蔵庫などで冷やしたお酒のことで、「冷や」は20~25℃くらいの常温のことやもんな。冷やしてなく温めてもないお酒のことを「冷や」と呼ぶねんな。そもそも日本酒を冷やして飲むのが普通になったのは冷蔵庫が普及してからの話で、それより前の時代は「温めるか常温か」の二択やったわけやんな?だから温める「燗酒」に対して温めない飲み方を「冷や」と呼んだと!
北井:そうそう!
あさやん:でも現代では酒場ごとに呼び方が違ったりして「冷や」を頼んでも常温じゃなくて「冷酒」の状態で出てくるお店もあるから、「常温でください」っていう言い方をすれば間違いなく伝わるかな!
北井:そうそう!
あさやん:で、この「冷酒・冷や」議論になったときに頼んでもないのに会話に入ってきて講釈を垂れる日本酒おじさんがこの方……北井さんです!
北井:どんな締め方やねん!! ほんで、ここだけめちゃくちゃ詳しいな!! ……ここの説明好きやのに……
決着!冷酒・熱燗はお酒の香味のタイプによって使いわけよう!
あさやん:温度が変われば香味の表情が変わる、日本酒はほんまにおもしろいお酒やな!俺ら漫才師にほんしゅもお客さんが冷たいときと温かいときで全然変わるのと一緒やな!
北井:確かにそうやな!お客さんの温度は熱燗がええわ。今回の会津娘の純米酒なんかはこの違いを体験するのにもってこいのお酒です。旨味が優しいし、ほどよいボリューム感のある味わいやから冷酒でも冷や(常温)でもぬる燗でも美味しい。
あさやん:みんな違ってみんな良い!
北井:今回は香味タイプごとのベターな温度帯を紹介しましたけど、冷酒で飲むことがおすすめされる吟醸酒とか生酒でも燗酒にしても美味しいものがあるんです。だから「これ、吟醸酒やけどわりと旨味もしっかりあるな、、、」と思ったら徳利に注いでぬる燗にしてみるとか、ぜひ気軽に試してみてください!よーし、これだけ伝えられたら満足や!さぁ、あさやん、いよいよがっつり飲むか!飲みながら「今後の日本酒界」について熱く話そうぜ!
あさやん:えっと、、、ちょっとこの後用事あるからsiriに相手してもらってくれる?
北井:いや、一緒に飲んでくれや!俺そんなにめんどくさい!?
あさやん:しゃあないなぁ。。。じゃあまずは冷酒の状態から徐々に温度上げていって温度変化を楽しもう!
あさやん・北井:かんぱーーい!!
にほんしゅの味評定
- お酒:「会津娘 純米酒」(福島県)
- 香り:穏やか ◀ 〇★〇〇〇 ▶ 華やか
- 味 :淡 麗 ◀ 〇〇★〇〇 ▶ 濃 醇
「どんなお酒?」
地元会津産の五百万石を使って醸す「会津娘」定番の純米酒。非常に飲み口が優しく、ほっと心を落ち着かせてくれる優しい甘味が魅力です。お酒だけでも美味しいですが、ニシンの山椒漬けや馬刺しなど味わいの濃い会津の名産と合わせるとより一層美味しいです。
本文中でもあるように冷酒から常温、ぬる燗まで幅広い温度帯で楽しめる逸品。
「どんな酒蔵?」
高橋庄作酒造店は会津若松市に蔵を構え、創業は1868年頃(明治初め)。人気銘柄がひしめき、近年の地酒界を語るのに欠かせない福島県の中でも根強いファンが多い「会津娘」を醸す。
以前にほんしゅ2人で酒蔵と田んぼの見学にお邪魔させていただきました。蔵元の高橋亘氏を中心とし、女性蔵人も生き生きと活躍され、美味しい日本酒を造るためのオリジナルの酒造道具も各所に見られました。蔵の回りには酒米を育てる田んぼがあり、のどかな風景が広がります。
豊かな田園地帯に囲まれた環境を活かし、蔵元が目指す「土産土法(どさんどほう)の酒造り」(その土地の人がその土地の米と水を使い、その土地の手法で仕込む)の酒づくりを行っています。小規模醸造の純米酒造りが中心です。
蔵は会津盆地の南端に位置し、会津の重要な穀倉地帯にあり、その地名も「門田町一ノ堰(もんでんまちいちのせき)」といいます。会津盆地は南北に長方形にひろがっていて博士山、大戸岳、磐梯山、飯豊連峰などの周囲大小の山々からは数々の支流が扇状地形に本流の阿賀川(大川)に合流して米づくりに適した肥沃な地質と豊富な地下水で潤っております。
会津娘は洗練された技術と心がほっとするような優しさが同居する日本酒です。ぜひ一度飲んでみてください。
高橋庄作酒造店WEBサイト
【取材協力】
「SAKE story」五反田
「旅する様に日本酒を」がテーマの銘酒居酒屋。元旅行ライターでもあった店主の橋野元樹(初代(2017) Mr.SAKE)さんが、各地で巡り合えた食やお酒に感動した体験を飲食店として表現できないかという思いから「SAKE story」では3か月ごとに対象地域を変え、日本酒を揃えています。前菜(お通し)はその地域からピックアップした食材やお料理をご用意。
四季があり、また南北に長いこの日本と言う国をお酒を飲みながら旅する様に楽しめる五反田の名店です。
「SAKE story」WEBサイト https://sake-story.com/