11月18日、ボージョレ・ヌーヴォの解禁日だ。毎年この時期を心待ちにしている方も多いのではないだろうか。
まだワインとしては若いヌーヴォだが、ここではより楽しみを深めるための「食品」について考えてみる。
今年のボージョレ・ヌーヴォはどんな楽しみ方ができるのか、参考にしてみて欲しい。
●ボージョレ・ヌーヴォの特徴
一般的なボルドーワインは1年以上の熟成期間を設けて、渋み・酸味・色合い・味わいなどを深めていく。
しかし、ヌーヴォと呼ばれるワインは、ほんの数週間しかこの熟成期間を設けていない。ほぼ「ぶどうジュース」の状態でビン詰めされている。
ボージョレ・ヌーヴォのぶどう収穫時期は9月から10月なので、11月第3木曜日の解禁日までの時期を考えると、9月1日の収穫だとしても熟成期間は1ヶ月ほどしかないことになる。
▼解禁日
11月の第3木曜日とされているが、本来は11月15日という指定日だった。しかし、15日が土日にぶつかるとワイン運搬業者が休日となってしまうことがあり、1985年から第3木曜日の指定に変更されたのだ。
この解禁日の指定は、ワインの早出し競争の激化をストップするためのものであり、ワインをワインとして楽しむための措置になる。
▼ぶどうの品種
ボージョレ・ヌーヴォには「ガメイ・ノワール・アジュ・ブラン」という黒ぶどうを使用する。ボージョレ・ヌーヴォといえばガメイと世の中に浸透している。
発芽と成熟が早く、涼しい気候でも繁茂するため豊作になりやすいという特徴から、安定してボージョレ・ヌーヴォを産出しやすい品種になる。
▼醸造方法
ワインは、昔から大きな木桶の中で女性が足踏みしながら絞るという工程を経ていたが、ボージョレ・ヌーヴォはぶどうを潰さずに房ごと発酵用のステンレスタンクに詰め込まれ密閉される。
ぶどう自体の重みにより潰れていき、果皮の酵母により自然発酵させていく。酵母菌の量によってはぶどうの枝や培養酵母を添加するが、本体はぶどうのみで自然発酵させるのがボージョレ・ヌーヴォの醸造方法だ。
●ボージョレ・ヌーヴォに合わせたい肉料理
赤ワインには肉料理が合う。肉特有の獣臭さを洗い流してさっぱりさせるのがボージョレ・ヌーヴォの特徴だ。よりボージョレ・ヌーヴォを楽しむにはなくてはならない存在。
ボルドーワインとしてはまだまだ熟成不足のボージョレ・ヌーヴォだが、それでも肉との相性はさすがボルドーワインと言えるだろう。ラム肉のようなクセの強い肉料理でも、ボルドーワインの魅力で最高のハーモニーが生まれる。
▼鳥料理【チキンのグリル】
さっぱりとした胸肉よりも、もも肉やテールの脂をワインで流し込むのが美味。
▼豚料理【豚の紅茶煮込み】
バラ肉を紅茶で一度さっぱりと脂抜きしつつ、口の中に広がるラードの甘味とワインの酸味が最高の絡みを感じさせてくれる。
▼牛料理【ローストビーフ】
王道中の王道。牛肉特有の臭みをワインで流し込む幸福感。ピンクペッパーとガーリックの刺激はワインで濯げば不思議と消えていく。
●ボージョレ・ヌーヴォに合わせたい魚介料理
一般的に魚介料理には白ワインを合わせるが、ボージョレ・ヌーヴォはボルドーワイン特有の渋みがないため、魚介料理とも合わせやすい。ボージョレ・ヌーヴォは素材の味を邪魔しない数少ないボルドーワインなので、こんな料理にも気軽に合わせられる。
▼焼き魚【白身魚のポワレ】
手早くできる焼き魚。クリスマスまで待つなら、ムニエルとのマリアージュもおすすめだ。
▼生魚【タコのマリネ】
渋みが少ないヌーヴォだからこそ、さっぱりとしたマリネとの相性が抜群。タコやエビを使ったマリネ、カルパッチョには白ワインとはまた違った楽しさがある。
▼煮魚【アサリとイカのたっぷり入ったアクアパッツァ】
アサリの出汁、イカの歯応えを楽しみつつ、メインになる魚を存分に楽しめるアクアパッツァと、ボージョレ・ヌーヴォがあれば最高のパーティタイム。
●ボージョレ・ヌーヴォに合わせたいチーズ
ボージョレ・ヌーヴォに限らず、ボルドーワインとチーズの組み合わせは絶対不可侵のマッチングだ。普段チーズを食べない方でも、ワインと一緒なら口にするほどに絶妙な世界が生まれる。
色々なチーズがあるが、ボージョレ・ヌーヴォにぜひ合わせてみたいチーズは「食べやすい」という特徴を持っている。
▼ブリ・ド・モー
白カビチーズの王様。チーズとしては軽い味わいだが、誰からも愛されるまろやかさがある。
▼モン・ドール
「金の山」という意味を持ち、外皮はややオレンジ掛かっているのがモン・ドールだ。厚めの外皮の中にあるトロリとした部分が強いチーズの香りを放つウォッシュタイプのチーズ。
▼フルム・ダンベール
食べやすい青カビタイプのブルーチーズ。ロックフォールやゴルゴンゾーラ、スティルトンに比べ、とてもあっさりとしていて初心者にもおすすめ。
●2021年のボージョレ・ヌーヴォの出来に期待が高まる
昨年のボージョレ・ヌーヴォのキャッチコピーは「偉大なヴィンテージ濃縮ワイン」だったが、今年2021年はどんなキャッチコピーがつけられるのだろうか。2011年の「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」「出来がよく、豊満で絹のように滑らかな味わい」を抜ける作品が現れるのかがポイントになる。
だが、どんな出来であろうと「ボージョレ・ヌーヴォ」は世界中に喜びと笑顔を届けてくれることに変わりはないだろう。今年のボージョレ・ヌーヴォに期待したい。そして、一緒に味わう料理で最高のひと時を堪能して欲しい。