焼酎と聞いてまずイメージすることはなんだろう。強いお酒、癖のある味と香り、初心者にとってはハードルが高いイメージがあるのではないか。その認識に間違いはない。しかし、ハードルが高いからと言って手を出さないのはあまりにももったいない。
焼酎は飲み方やアレンジ次第では初心者から長年の愛飲者まで、幅広い層の口に合うお酒へと変化する懐の深いお酒なのだ。
「男の隠れ家デジタル」ではこれから焼酎を嗜んでいきたい初心者、焼酎の新たな可能性を見出したい愛飲者のために、焼酎の基本やおすすめの飲み方について詳しく解説しよう。
焼酎の基本
焼酎の起源は諸説あるが、14世紀頃、タイのラオロン蒸留酒が海上取引や貿易をしていく中で当時の琉球王朝を経由し、その技術が薩摩へ渡ったという説が一番有力だ。
鹿児島県伊佐市にある郡山八幡神社では1559年に行われた補修の際に大工が残したとされている落書き、「ケチな神主で、一度も焼酎を飲ませてくれなかった。がっかりした。」が1954年の解体修理時に発見されている。
この発見から、焼酎は古くから日本人の生活の中に浸透していたことがわかる。
焼酎の種類
焼酎にはたくさんの種類がある。その数は時代の流れと共に増える一方だ。
特に今まで焼酎に触れたことがない初心者にとっては、はじめての焼酎選びで戸惑うこともあるだろう。
ここでは現在主流の焼酎とその特徴について解説する。焼酎選びの参考にしてほしい。
1.米焼酎
米焼酎は日本酒を蒸留し、米のみで作られた焼酎。
焼酎といえば九州地方で作られているというイメージがあるが、日本酒メーカーが手がけることも多いことから全国各地で作られている。高橋酒造の白岳しろが有名だ。
数ある焼酎の中でも最もすっきりした飲み口で、初心者にもおすすめできる。
米がもつ甘味やフルーティーな香りを楽しむことができるのが米焼酎の特徴だ。
2.麦焼酎
麦焼酎はウイスキーやビールと同じ大麦を主原料とした焼酎。大麦のみ使用するのが基本だが、米をベースに仕込み途中で大麦を加え作られるパターンもある。
大分を中心に、主に九州地方で作られている。三和酒類のいいちこが代表的だ。
大麦を蒸留して作られる点ではウイスキーと同じだが、ウイスキーのように長時間樽の中で熟成させることがないため、麦焼酎は全く異なる味わいのお酒になっている。
あっさりした味わいで、大麦がもつ香ばしい香りを楽しめるのが特徴だ。
シンプルな味のため、アレンジする際のベースとしても使用されることが多い。
3.芋焼酎
芋焼酎は米とさつま芋を主原料とした焼酎。米をベースとし、仕込み途中でさつま芋を加え作られることが多い。
米がベースとなっているのには理由がある。さつま芋だけでは十分にアルコールを生み出すことが難しく、米の力を借りて不足分を補う必要があるからだ。
芋焼酎は鹿児島を中心に作られている。霧島酒造の黒霧島は焼酎の中でも超定番だ。
実は元々鹿児島は米焼酎が主流だったが、16世紀初頭に桜島の噴火により深刻な米不足に陥り、米は貴重な食物となってしまった。そこで、より安価なさつま芋を使用したアルコール生成方法が発案され、それが芋焼酎の起源だと言われている。
コクがあり、さつま芋特有の香りと甘味を楽しむことができる。
ストレート、ロック、水割り、お湯割り、どの飲み方をしても風味が崩れない特徴がある。
4.黒糖焼酎
黒糖焼酎は米と黒糖(サトウキビ)を主原料とした焼酎。
黒糖焼酎以外でサトウキビを原料とし、蒸留して作られるお酒にラムがある。黒糖焼酎とラムの違いは米麹が使用されているかいないか。使用されているものが黒糖焼酎となり、使用されていないものがラムとなる。
黒糖焼酎を名乗るにはもう一つ条件がある。それは鹿児島県奄美大島で作られているか否か。
酒税法上、米麹を使用し、奄美諸島で作られたお酒しか黒糖焼酎を名乗ることが許されていない。奄美諸島以外で同様の方法で作られたお酒はすべてスピリッツ扱いとなる。
町田酒造の里の曙はまさに黒糖焼酎といった味わいで、初心者にもおすすめできる人気の一本だ。
黒糖焼酎はすっきりした飲み口で、芋焼酎とはまた違った優しい香りと甘味が楽しめる。是非一度試してほしい。
5.そば焼酎
そば焼酎はそば(ダッタンソバ)を主原料とした焼酎。
そば焼酎は他の焼酎に比べ歴史は浅く、1973年に宮崎県で開発された焼酎だ。当初は宮崎県のみでの販売だったが、徐々に全国に広まっていき、現在では宮崎県を中心に全国のそばの名所で作られるようになった。
独特な味わいとコクがあるが、すっきりとしていて飲みやすい。初心者におすすめだ。
雲海酒造の雲海はそば焼酎の中でも定番中の定番だ。雲海酒造は世界ではじめてそば焼酎を販売したことでも知られ、迷った時はこれを選ぶと良いだろう。
銘柄数は少ないが、その独特な味わいに魅了され、ファンになった人は多くいる。
和食との相性が特に良く、食中酒として飲むのもおすすめだ。
おいしい・おすすめの飲み方(定番編)
焼酎を嗜む上で、欠かせない定番の飲み方がいくつかある。焼酎本来の味を楽しむという意味でも是非試してもらいたい。それでは一つずつ紹介しよう。
1.ストレート
ストレートは言葉の通り、焼酎をそのままグラスに注ぎ、飲む。定番中の定番の飲み方だ。
何にも邪魔されず、焼酎本来の味と香りを楽しむことができるのがストレートの魅力と言えるだろう。
ストレートは常温で飲むのが基本だ。しかし、冷凍庫で冷やして飲むとまた焼酎の違った一面に巡り合える。
焼酎を冷凍庫で冷やすことによって、旨味が凝縮され、まろやかな口当たりに変化していく。そのトロっとした独特な舌触りは癖になる感覚だ。ただし、冷凍庫で冷やすことができるのはアルコール度数が40を超えるものに限るので、注意してほしい。
ストレートは焼酎本来の味とは別に、アルコールをダイレクトに受けることになる。小さいグラスでゆっくり、じっくり飲むことが最大限楽しむ秘訣だ。
2.ロック
海外では「on the rocks」とも言い、これは氷を岩に見立て、上からお酒を注ぐことから由来する。
グラスいっぱいに氷を入れ、氷に当てるように焼酎を注ぐ。マドラーで数回混ぜ、良く冷やして飲む。
シンプルな飲み方だが、実はかなり繊細な飲み方でもある。
氷が溶けることによって生まれる味の細かい変化、それを楽しむことこそがロックの醍醐味。
ロックは氷が命だ。せっかくの焼酎を製氷機の氷で飲むのはあまりにもったいない。市販のロックアイスを使うことを強くおすすめする。純度が高いロックアイスは溶けにくい。ロックをより長く楽しむためには必要不可欠だ。
3.水割り
水割りは焼酎を水で割ってアルコール度数を低くする。飲み口がまろやかになって初心者にもおすすめできる定番の飲み方だ。
飲む口がまろやかになることによって、料理を食べる際に邪魔にならない。良く馴染む。
作り方は簡単だ。ロック同様、グラスいっぱいに氷を入れ、まず焼酎を注ぐ。マドラーで数回混ぜ、味を馴染ませる。そのあとに水を入れ、再度マドラーで数回混ぜる。
焼酎:水を5:5で割るのがおすすめだ。初心者にとっても良いスタート地点になる。自分の好みに合わせ、割合を調整すると良いだろう。
ここでポイントになるのが水だ。水道水で割るのも決して悪くはないが、ここはひとつこだわって軟水のミネラルウォーターを使ってもらいたい。市販品であれば、い・ろ・は・す天然水やクリスタルガイザーがおすすめだ。
4.お湯割り
焼酎のお湯割りを飲んで一日の疲れを癒し、心身ともにリラックスする。昔から九州南部で愛されている定番の飲み方だ。
冬場のお湯割りはまさに絶品だ。だが、夏場のエアコンで体を冷やしながら飲むお湯割りもまた贅沢なひと時である。
水割りと違い、お湯割りを作る際は、お湯を先に注ぐことがポイントになる。先に焼酎を注いだ上にお湯を注いでしまうと味が飛んでしまうからだ。
お湯を先に注ぎ、上から焼酎を優しく注ぐようにしよう。
お湯と焼酎の温度差によって対流が生まれ、マドラーを使わずとも自然に混ざりあう。
湯気と一緒に舞い上った焼酎の香りを是非楽しんでもらいたい。
5.ソーダ割り
近年当たり前になってきたソーダ割り。焼酎を飲んだことがない初心者や普段とは少し違った味わいを楽しみたい方におすすめの飲み方だ。
まず冷えたグラスを用意する。意外かもしれないが、これが重要なポイントになる。常温のグラスでソーダ割りを作ってしまうと、炭酸が抜けやすくなるからだ。
冷えたグラスに氷を入れ、先に焼酎を注ぐ。次にソーダを注ぐのだが、一つ注意してもらいたい。上から一気に注ぐのではなく、グラスの縁に注ぎ口を当て、ゆっくり注ぐようにしよう。これも炭酸が抜けないようにする工夫である。
最後にマドラーでかき混ぜる。これまでに紹介した混ぜ方とは違い、氷を下から軽く持ち上げて落とすを数回するだけで良い。
焼酎:ソーダを4:6で割るのがおすすめだ。慣れてきたら好みに合わせて濃度を調整すると良い。
ソーダ割りは暑い季節やバーベキューに最適だ。初心者や往年の焼酎ファンに是非一度飲んでもらいたい。
おいしい・おすすめの飲み方(アレンジ編)
これまで定番を紹介してきたが、ここからはアレンジレシピ。焼酎をより一層楽しめる、おいしい飲み方を紹介しよう。
1.コーヒー割り
コーヒー割りは実は沖縄が発祥だ。10年程前、沖縄で泡盛のコーヒー割りが流行したことで一時期話題になった。
作り方は至ってシンプル。グラスに氷を入れ、焼酎を注ぐ。その上からコーヒーを優しく注ぎ、マドラーで数回混ぜるだけだ。
焼酎:コーヒーを1:3で割ると良いだろう。
コーヒー割には麦焼酎が最適だ。麦焼酎とコーヒー、お互いの香ばしさが前面に押し出され、複雑だが、まろやかな味わいになる。
芋焼酎との組み合わせもおすすめだ。コーヒーが芋焼酎の香りを引き立て、より華やかな香りを楽しむことができる。
2.金魚割り
唐辛子と大葉を使用した粋な飲み方として一部の焼酎ファンに愛されている金魚割り。
グラスに浮かぶ唐辛子が金魚に見えることからこの名前がついた。ビジュアルの美しさから、味だけではなく、雰囲気も楽しめる飲み方だ。
グラスに氷、唐辛子、大葉を入れ、優しく焼酎を注ぐ。簡単な作りになっている。
飲みはじめは多くは主張しないが、飲むごとに増していく大葉の爽やかな香りと唐辛子の辛みは癖になる味わいだ。
金魚割りの飲み方に決まりはない。ロック、水割り、お湯割りと楽しみ方の幅が広いのも金魚割りの魅力とも言える。
その日の気分や雰囲気に合わせて自分だけの金魚割りを楽しんでもらいたい。
3.シナモン割り
焼酎の新たな飲み方として、少しずつではあるが、ファンが増えているシナモン割り。
普段の焼酎にシナモンスティックやシナモンパウダーを加えるだけで作ることができ、気軽に楽しむことができる。
シナモン割りには芋焼酎がおすすめだ。芋焼酎の甘い風味とシナモンの甘い香りはまさに相性抜群。際立った甘さが良いアクセントとなり、まさに大人な味わいだ。
シナモンは古くから存在するスパイスの一種で、漢方としても使用されている。体に気を使っている方にも是非試してもらいたい。
4.カラフルロック
密かに人気を伸ばしつつあるカラフルロック。バリエーションの多さ、見た目のおしゃれさから幅広い層におすすめできる飲み方だ。
作り方は簡単。製氷機で凍らせたお好みのフルーツジュースをグラスに入れ、その上から焼酎を注ぐ。事前準備は必要だが、貯蔵しておけばすぐに作れるのは嬉しいポイントだろう。
美しい見た目と徐々に溶けだしたフルーツジュースによる味の変化を楽しめる。
カラフルロックは焼酎を選ばない。また、使用するフルーツジュースも一種類とは限らず、複数使用することも可能だ。飽きがこないのがカラフルロックの魅力だと言える。
5.蜂蜜割り
あまり知られてはいないが、隠れたファンが多い蜂蜜割り。
その名の通り、焼酎に蜂蜜を混ぜる、非常にシンプルな作りだ。
蜂蜜は健康食とも言われるほど、多くのミネラル類やビタミン類、酵素やアミノ酸、豊富な栄養素が含まれている。そのため、一週間の疲れを癒す一杯として飲むのも良いだろう。
健康食ではあるが、蜂蜜は果糖とブドウ糖を多く含む。摂りすぎには注意だ。
蜂蜜が持つ甘味はどの焼酎とも相性が良く、さまざまな組み合わせを楽しんでもらえる。
特にお湯割りに混ぜて飲むのがおすすめだ。焼酎の豊かな香りと蜂蜜の甘い香り、至福のひと時となるだろう。
まとめ
いかがだっただろうか。焼酎は古くから日本人に愛されてきた国民的なお酒だ。銘柄数も年々増えていき、それに合わせて飲み方も増えてきた。
その多種多様な飲み方から、場所と人を選ばない万能さが焼酎の魅力の一つとも言える。一見敷居が高く見えるが、どんな人でも優しく迎え入れてくれるお酒、それが焼酎だ。
まだ焼酎を飲んだことがない初心者や長年の愛飲者の方。是非今回紹介したおすすめの飲み方を試してほしい。必ず一つは気に入った飲み方が見つかるに違いない。
本記事で紹介しきれなかった、飲み方もまだ数多くある。自分でいろいろ試しながら、自分だけの飲み方を見つけてほしい。