シンプルなカクテルが見せる、老舗を引き継ぐ技

平成27年(2015)4月、大阪の「サンボア」や銀座の「ロックフィッシュ」で研鑽を積んだ長谷川森人氏が、不忍通りから少し入った静かな根津の地に、なんとも居心地の良いバーをオープンさせた。

その経歴ゆえに、氷なしのハイボール(850円)は文句なしの名物だが、お薦めの一杯として紹介されたのはジントニック(950円)であった。

「シンプルなカクテルほど、バーテンダーの技量の違いがはっきり出ます。なかでもジントニックは、ちょうど100m走のようなもの。ごまかしが利かない一杯ということです」。

ジンと氷、それにトニックウォーターとライム、炭酸を加えて混ぜただけのカクテルなのに、長谷川氏が作った一杯は、喉を抜ける際の清冽さが際立っている。グラスの口径とほぼ同じに削った四角の氷を使うことで、味も一定になるのだという。

「自分が美味しいと思ったものでなければ、お出しできません」と言う、長谷川氏の言葉が全てなのだ。

文/野田 伊豆守