422591952年から続く小さな蒸留所のウイスキー 「三郎丸蒸留所」

1952年から続く小さな蒸留所のウイスキー 「三郎丸蒸留所」

男の隠れ家編集部
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ウイスキーの蒸留所には見えない瓦屋根と白壁の建物。新しく生まれ変わった施設も昭和初期の雰囲気を伝える。そこで熟成される香り高き原酒に期待の声が挙がる。

■逆境をバネとして飛躍し貪欲なまでに進化を続ける

三郎丸蒸留所は幕末にさしかかった文久2年(1862)に創業した若鶴酒造の敷地内にある。この施設が誕生するきっかけは、米以外の原料からアルコールを造り出す必要に迫られたからだった。日中戦争から第二次世界大戦にかけ、日本国内では深刻な米不足が起こったからである。そうした状態は、終戦後も続いていた。満足に清酒が造れない局面を打開するため、蒸留酒部門への進出を決意したのだ。

そして、昭和22年(1947)には米以外のものからアルコールを造り出す研究をする若鶴醗酵研究所を設立。そこで得た技術によって、昭和24年(1949)にはアルコール製造免許を取得し、さらに昭和27年(1952)にウイスキーの製造免許を取得したのだ。その翌年には、早くも『サンシャインウイスキー』を発売。

ところがその年の5月11日、蒸留室から出火した火災により工場、研究室、原料倉庫など、約635坪を焼失してしまう。しかし連日地域の人たちが後片付けにやって来てくれたことで、半年もかからず再建。まさに逆境をバネに成長してきた。

昭和38年(1963)の試験室。よりよいウイスキーを作るための研究が続けられていた。
それまで約50年にわたり使用してきた自社製のマッシュタンを2018年4月、三宅製作所製の最新モデルに更新した。銅板には高岡銅器が使用されている。

三郎丸蒸留所で生産するモルトウイスキーは年々増加しており、令和2年(2020)は5万Lを仕込んだ。日本酒やリキュール造りが一段落する5月から8月にかけての蒸留である。こうして半世紀以上、三郎丸蒸留所は北陸唯一の蒸留所として納得のゆくウイスキーを世に送り出してきた。しかし施設の老朽化は否めなくなった。そこで平成28年(2016)に「三郎丸蒸留所改修プロジェクト」を立ち上げ、クラウドファンディングで資金を調達。翌年は見学できる蒸留所として生まれ変わった。

さらに昨年は、梵鐘メーカー老子(おいご)製作所の技術を活かし、世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」を開発。今後の味わいの進化が楽しみである。

長年の日本酒造りのノウハウが活かされた蒸留所。すべての工程がひとつの建物内で行なわれている。

■力強いフレーバーが楽しめるラインアップ

サンシャインウイスキープレミアム
ピーテッド麦芽を多く用いたヘビーな風味。スコットランド産のピーテッド麦芽を贅沢に使用。若さはあるものの飲みやすくスモーキーな風味。

容量:700ml
アルコール度数:40度
価格:2750円
【色】薄いレモン色
【香り】モルティでスモーキー。干し草の香りが漂う
【味わい】香ばしいなかにバニラ、モルト、それに塩辛さが同居
【余韻】ドライな余韻を感じると共に、丁寧な造りであることを体感できる仕上がり

三郎丸蒸留所 ニューポット45PPM アイラピーテッド
アイラ島のピートで焚かれた麦芽で仕込まれた原酒をポットスチル「ZEMON」で蒸留。

容量:200ml
アルコール度数:60度
価格:2530円

十年明 Seven
三郎丸蒸留所の7年以上熟成の原酒をキーモルトに優しく深みのある味に仕上げた逸品。

容量:700ml
アルコール度数:46度
価格:3960円

文/野田伊豆守

三郎丸蒸留所 (さぶろうまるじょうりゅうしょ)

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