伝統料理に新しい感性を三代目の腕が冴えわたる
三代目の元生光昭さんは、貴船の「鳥居茶屋」で料理人・小西清氏に師事した後、父である二代目の元で研鑽を積んだ。京料理の鬼才「まる多」の丸田明彦氏にも指導を受けた。三代目として教わってきた料理の伝統を守りつつ、新しい感性も取り入れた料理を日々考案。今も進化を続けている。
料理はもちろん四季の恵みを満喫できる懐石料理だ。その日、その時々の食材に合わせて献立を考えているので、基本的にはおまかせ料理。「雪」「月」「花」「鳥」「風」の各コースを選べる。
「決まったメニューやコース内容はございません。1月から2月にかけては節分にちなんだ八寸や、京の酒処『伏見』らしく酒粕を使った『淀大根』の焚き合わせなどが好評をいただいております」と元生さん。旬の魚や季節の京野菜、時には産地直送の珍しい食材を使って、その素材の味を余すことなく引き出す。おまかせだからこそ旬の味を賞味できる。次にどんな料理が出てくるかという点でも楽しんでもらいたいという。
最後に出される「御水物」にもオリジナルレシピのデザートを用意。季節の果物とアイデアの掛け合わせで、無数に展開する逸品をいただくことができる。
「味は心なり」師匠に教わった言葉を胸に、包丁を握る元生さん。三代目渾身の心のこもった味わいの京料理を堪能したい。
文/阿部文枝