大人にこそ訪ねてもらいたい
贅沢な時を実感できる宿

湯郷や湯原に並び、岡山県の美作三湯のひとつに数えられるのが地下150mから湧出する奥津温泉だ。この名湯をひとり旅で満喫できる宿が「米屋倶楽部」である。

奥津温泉は鏡野町の北部に位置しており、古くは江戸時代に戦国武将や津山城主が、湯治場として愛用していたと伝わるアルカリ性単純泉の湯。

古来、その効能の高さから美人の湯としても知られ、今も関西圏を中心にこの湯を目当てに数多くの観光客が訪れる。また冬には周辺の山でスキーなどのスノーアクティビティに興じる人も少なくない。

この地域の風物詩「足踏み洗濯」はその風習を絶やさぬよう、今も実演が行われている。足で衣服を洗濯する動作は「洗濯ダンス」と呼ばれ、奥津のシンボル的な光景となっているが、それはかつて熊谷狼を見張りながら洗濯をするための先人の知恵なのだという。

また、足踏み洗濯が行われている吉井川沿いの奥津渓は、文部省より名勝に指定された景勝地。秋の紅葉や冬の雪景など四季ごとに違った表情を見せてくれる。

そんな奥津温泉の町を見下ろす高台に建てられた「米屋倶楽部」は、中国山地の山並みが連なる景色が望める人気の宿だ。ロビーではベロタクシーと呼ばれる自転車タクシーが展示され、中庭にはガーデンプールも設置さている。客室は和室と和洋室から選ぶことができ、いずれも窓から奥津の山並みを眺望できる。

同宿では内湯の大浴場と露天風呂を備え、どちらも奥津の源泉をかけ流しで引いている。大浴場の壁に彫刻家の空充秋氏の作品が飾られているのも興味深い。また、露天風呂では雪景色を見ながら湯浴みが愉しめる。基本的に貸切を優先しているが、週末に男女入れ替えの時間があるので、事前に宿へ確認を取っておきたい。

ほかにも館内の1階に湯船にジャグジー機能が付いた貸切露天風呂がある。ここでは40℃前後のほど良い湯に体を沈め、岡山の名水で作られた地酒が味わえる。温泉と燗酒の絶妙な組み合わせが、体を外と内から温めてくれるのだ。温泉街を見下ろしながら、ゆっくりと味わいたい。

夕食はナギ牛など地元岡山の食材をふんだんに使った和の会席料理が並ぶ。料理のバリエーションにも幅を持たせ、和と洋のテイストも織り交ぜた献立は月替わり。そして食後のデザートは洋食出のシェフが手がける逸品だ。

自分の時間を大切にしたいからこそ、奥津の静かな大人の宿で癒されたい。