“表現するもの”を凝縮した空間

カフェやレストランが点在する京都の御所南エリア。一見カフェ? と思える洒落た雰囲気な店の扉を開けると、魅力的な本の空間が現れる。主人の小西徹さんはレコード店や大型書店の店長などを経て、2012年に自宅を改装して自分の店を開いた。

「大型書店は本を売ってしまったらおしまいという商売。一冊の本を前の持ち主から、次に読む人への中継地点としてバトンタッチしていく場所にしたかったんです」

本の間には骨董品が置かれている。

店の左奥から、戦後の日本文学、児童文学、外国文学、美術、映画、ジャズ&ロックと古書が並び、手前にはジャズの中古CDが並ぶ。左手の壁面と棚は貸しギャラリーだ。絵画、陶芸、ガラスなど、作家持ち込みの作品が2週間ごとに入れ替わるという。

客とにこやかに話す店主の小西さん。

店内のディスプレイは視覚的にも楽しげになるよう心がけ、骨董品などがさりげなく置かれているのも空間に馴染む。また、小西さん曰く「こういう人間にはなかなかなれないけどかくあるべし(笑)」と敬愛する菅原文太の本も揃っている。

菅原文太の本が並ぶ。

「本も音楽も美術もみな“表現”するものでしょう? 何かを表現するもので、僕がええなあと思えたら“来るもの拒まず”ですよ」

個人や少人数で発行する小冊子・リトルプレスの一群にも目を瞠る。全国各地から持ち込まれた50種以上の本が、所狭しとぎっしり並ぶ。京都、いや日本でもこれだけの種類を揃えている店は希少だ。主人の眼鏡にかなう条件はただひとつ。“暮らしの視点が感じられる本”。

地方発信の面白さが詰まるリトルプレス。
小西さんの好きなジャズ&ロックのCDやLP。

「リトルプレスは、わが町で暮らし、わが町を愛でる人が作るものが特に面白い。地方発の楽しさも満載」という小西さんの言葉通り、この一角で小さな旅を満喫できる。

アコースティックライブやネイチャーガイドのトーク会、リトルプレスつながりの物産展など、不定期だが多彩なイベントも開催している。「お客さんと店が一緒になって育っていく、そんな店でありたいですね」。本を介して主人と店がつながる空間は、いつもこの上なく心地良いものだ。

文/郡 麻江 写真/松浦光洋