高速道路を西へと向かうと雲の中から霊峰がお出迎え

勢い良く雲は流れ、空にはみるみる青色が広がっていく。白く分厚い雲の彼方に完全に隠れていた富士山も、裾野部分が姿を現してくれた。しばらく眺めていると、時おり山頂付近も顔を出す。富士五湖のひとつ、西湖の畔でひと休みしていると、訪問を歓迎してくれているかのような天気となった。

雨の心配がない予報を耳にしたある朝、愛車のジムニーにキャンプ道具を積み込んで家を後にした。どこに行くかは気分次第。とりあえず高速道路に乗り、車を西へと走らせる。その途中、富士山方面を目指そうと思いついたのだ。

途中、富士五湖のひとつ・西湖畔で休んでいると、にわかに空が晴れ、富士山の裾野が見えてきた。これで気を良くし朝霧高原まで走ることにした。

中央高速の河口湖ICを出たのは、朝の8時を少し回った頃。ここで小腹がすいたので、富士吉田名物「吉田のうどん」で、まずは腹ごしらえ。おあつらえ向きに、インターの近くに8時15分営業開始の「栄屋」を発見。まずは朝イチうどんを味わった。

早朝から営業している「栄屋」は、今では珍しい自家製の手打ち麺を使っている。
肉玉力うどんは450円。

うどんに舌鼓を打った後は、9時にオープンする「道の駅なるさわ」へと足を運ぶ。ここには地元の食材を豊富に揃えている物産館があるので、新鮮な地元産の朝採れ野菜や珍しい地場産品などを買うことができる。これで夕餉の食卓が華やかになるだろう。

買い物を済ませた後、せっかくなので近くの西湖を訪れると、冒頭のような好天に遭遇した。ここですっかり気を良くした私は、さらに先までドライブを楽しむことを即決。西湖にもキャンプ場はあるが、より富士山の勇壮な姿を愛でることができる、静岡県の朝霧高原まで足を延ばすことにした。

地元の野菜だけでなく、様々な地場産品を取り扱う物産館がある「道の駅なるさわ」
「ここでしか買えない」という文字に吸い寄せられ、鹿肉ソーセージをゲット。

富士山西麓の標高700〜1000mの広大な地域に広がる朝霧高原は、ほぼ全域で富士山の姿を望むことができる。そんな最高のロケーションでキャンプができれば、他には何も望まない。こうして気ままなソロキャンプの目的地は、気まぐれに決定したのである。

広大な草原のキャンプ場で富士山を望むサイトを構築

若い頃に山歩きやシーカヤックで島から島へと漕ぎ渡っていた時、宿泊手段は当然のようにキャンプだった。その後、子どもが小学生になると、夏には決まってファミリーキャンプを楽しみに全国各地へ出かけたものだ。しかし、子どもが成長し、あまり親と一緒に行動しなくなると、すっかりキャンプから遠ざかっていた……。

そんなある日、週末にポッカリと時間ができた。その時、即座に頭に浮かんだのが「ひとりで気ままにソロキャンプでもしてみようか」ということだった。ソロキャンプなら目的地や出発時間など、全て自分ひとりで決められる。以来、車に道具を適当に放り込み、行く場所も決めずにひとりでキャンプを楽しむようになったのだ。そして今回は、日本有数の面積を誇るフリーサイトが自慢の「朝霧ジャンボリー オートキャンプ場」(静岡県富士宮市)に一泊することに決めたのであった。

受付は併設するゴルフ場のクラブハウス内にある。キャンプとゴルフが楽しめるパックもあり。
広大なフリーサイトを誇る「朝霧ジャンボリーオートキャンプ場」の入場門をくぐる

このキャンプ場の魅力は何といっても富士山の眺望と、光害に邪魔されない満天の星、さらには全面芝生の広大なサイトだ。区画にすれば350サイトはありそうなのに、一日の利用者を200サイトに絞っているのもいい。

実際、この日は空いていたため、どこにサイトを作るか迷ってしまったほど。と言うのも、残念なことに朝霧高原は午後になっても霧のような雲が晴れなかった。この分だと今夜、楽しみにしていた星空を望むのも怪しいかも……。

それでも夕方になれば富士山が顔を出すかもしれない。そう考え、数日前からキャンプをしていると思われるカップルに「富士山はどの方向に見えますか?」と尋ねた。「あっちですね」という彼の言葉が決め手になり、サイト作りに取りかかった。テントはソロキャンプにもぴったりのノルディスクのユドゥンミニ、さらにタープはカーリ。そして1時間ほどで、晴れれば富士山が借景になる(はず?)の極上サイトが完成した。

地面が軟らかいのでペグは楽に打ち込める。

時と焚き火の炎が許す限り気ままな食事を堪能する

ソロキャンプの楽しみは何と言っても食事に尽きる。誰にも遠慮せず、好きなだけ時間をかけてとっておきの献立を用意したい。そしてお気に入りの酒と共に、夜が更けるまでのんびりと味わう。これこそ誰にも遠慮しない、ひとりだけの贅沢である。

しかも車を使ったキャンプなので、ダッチオーブンや焚き火台、さらにはトライポッドのような、大物道具も持ち込める。それだけで料理の幅も広がる。というわけで、今回のメイン料理はユニフレームのダッチオーブンで作る、超手抜きの和風ビーフシチューに決めていた。それに途中の道の駅で購入した新鮮野菜のサラダ、さらにジビエ感いっぱいの鹿肉ソーセージを加えることに。

今はほとんどのキャンプ場が直火は禁止のため、焚き火台を用意する必要がある。しかし焚き火に慣れていない人には、かえって火を付けやすく調理にも使えて便利だ。
焚き火台の上にグリルを載せれば同時に焼き物もできる。

ビーフシチューはダッチオーブンの特性が最大限に活かせるメニューだ。牛すね肉の塊を適当な大きさに切って塩コショウを振って小麦粉をまぶす。それを焼いたら一度鍋から出し、ニンニクとタマネギ、セロリのみじん切りを炒め、再び牛肉を戻し、そこに赤ワイン、水、ドミグラスソース、隠し味のしょうゆを加えて煮込む。しばらく煮込んだらジャガイモとニンジンを加え、さらに煮込めば完成。

牛すじ肉の塊を適当にカットし、塩、コショウ、小麦粉をまぶして焼く。
後は炒めた野菜と共に赤ワインで煮込むだけという簡単な手順。
鍋を吊るしておけるトライポッドも用意すれば、ビーフシチューのような煮込み料理もじっくりと調理できる。ダッチオーブンがあれば短時間で煮込めるが、時間をかければ味に深みが出るのだ。
それなりに豪華なディナーが出来上がった。ソロキャンプでも、盛り付けにはこだわって食欲をそそられるようにしたい。

シチューの煮込みが完了するまでの間、飲むために用意しておいた赤ワインを抜く。ここで満天の星と富士山のシルエットにひとりで乾杯、となるはずであったが、この夜、あいにく空一面を覆う雲が晴れることはなかった。

持参した双眼鏡で空を眺めてみたものの、星どころか月も顔を出していない。それでも雨が落ちてくることはなく、焚き火の炎をゆっくりと愛でつつ、ワインのグラスを傾けた。そして時間を気にせずに作った料理は、思いのほか旨かった。やはり自然のスパイスが効いたのか。焚き火の炎が小さくなるまで、ひとり時間を存分に楽しんだ。

夜の暗さと静けさ、さらには冷たく澄んだ空気が自然との一体感を感じさせてくれた。いつになくゆっくりと、そして何度もワインを口に運んでいた。

翌朝、明るくなってきたのと同時に目覚めると、キャンプサイトはその名にふさわしい朝霧に包まれていた。体が引き締まるような冷んやりとした空気が心地良く、早々と行動を開始。普段は食べないことが多い朝食も、キャンプでは欠かせない要素だ。

お酒を飲んだ翌朝の体に優しい、野菜を中心にしたメニューをチョイス。それはスペインやポルトガルの冷製スープ、ガスパチョ風の野菜スープだ。男のソロキャンプの朝食であってもきちんと食事するのが私の決まり。簡単ではあるが美味しい朝食になった。

朝は野菜中心のメニューでヘルシーに。

片付けを済ませ、双眼鏡片手にサイト周辺を散策する。すると様々な野鳥の姿を見ることができた。今回のキャンプでは、お目当ての富士山と星空を目にすることは叶わなかった。でもそれは次回へ持ち越すお楽しみにしよう。

食事の後は用意した双眼鏡を手に野鳥観察。
今回の旅の相棒はアピオのジムニー・シエラ。フロントグリル、アルミホイールなど、お洒落で機能的なオリジナルパーツを装備。(問/ジムニープロショップアピオ)

広大な敷地に目的別サイトが点在
朝霧ジャンボリー オートキャンプ場

広大なフリーサイトの他、電源付きサイト、リビングに電源や炊事場まで付いたプレミアムサイトも用意。炊事に使用する水は富士山の天然水。本格派からレンタル派まで満足できる設備。

※シーズンによって料金が異なりますのでお問い合わせください。

Text/Izunokami Noda Photo/Atsushi Sekino

Thanks/キャプテンスタッグ、コールマンジャパン、新越ワークス、新富士バーナー、スノーピーク、ノルディスクジャパン、ロゴスコーポレーション

※2019年取材