32299東北一豪華列車と謳われた車両が走った「十和田観光電鉄線」(青森県/三沢~十和田市)|失われたローカル線

東北一豪華列車と謳われた車両が走った「十和田観光電鉄線」(青森県/三沢~十和田市)|失われたローカル線

男の隠れ家編集部
編集部
現在もバス事業などを運営している十和田観光電鉄が有した鉄道路線。その前身は大正11年(1922)9月4日、762mmという狭軌を採用した蒸気軽便鉄道として開業した十和田鉄道だ。

軽便鉄道から発展し地域の足として愛された

戦後の昭和26年(1951)6月、全線を1,067mmに改軌。それと共に電化も行われた。そして同年12月20日、車名を十和田観光電鉄と改称。駅名が変わったりもしたが、最終的に三沢駅と十和田市駅間、14.7kmを結んだ。

昭和60年(1985)に撮影された、十和田市駅の構内。右の貨物用ホームも現役だった。

一時は鉄道業だけでなく、旅館業や遊覧船事業などを行い事業を拡大していた。ところが昭和43年(1968)に起こった十勝沖地震で路盤の沈下、き裂・決壊などが19カ所、三本木駅舎を含む待合所などの損壊が15カ所、電柱の半数以上が倒壊・傾斜するという、甚大な被害を受けた。この復旧のための資金調達に苦慮し、翌年には東北地方に本格的な進出を図っていた、国際興業の傘下に入ることとなった。

そんな在りし日の“とうてつ”は、古豪の電車群が運行されていた上に、起点の三沢駅が醸し出す妖しい魅力の虜となったマニアも多い。何しろ隣接していたJR三沢駅は立派な橋上駅なのに対し、とうてつの駅舎は土産物屋やそば屋などが同居し、鉄道の時刻表よりバスの時刻表や運行表が幅を利かせていて、雑然とした雰囲気に包まれていたのだ。

味わい深かった三沢駅。
車掌が車内で切符販売を行っていた。
昭和60年当時はまだ賑わっていた十和田市駅の様子。

使用されていた車両は、平成14年(2002)に一般営業運転が終了するまで、貴重な釣り掛け駆動方式のモハ3400形、モハ3600形が稼働し、人気を博していた。床下から唸り声のような独特なモーター音を響かせて走る車両はファンも多く、一般営業運転終了後もイベント用車両として長く活躍していた。

昭和56年(1981)に東急から譲渡されたデハ3800形。1形式2両という稀少車輛であった。

その一方、平成14年には東急からステンレス車を譲り受け、近代化を図ったが、特に平成23年(2011)の東日本大震災などの影響もあり、開業90周年目前に廃止となった。

1面1線のホームに簡単な造りの待合室が設置されていた柳沢駅。

貴重な全金属車だったモハ3400形

モハ3400形は、十和田観光電鉄が帝国車輛に自社発注した車両で、昭和30年(1955)に登場。それは東北地方の鉄道会社としては、初めて導入された全金属車であった。

当時は東北で最もデラックスな電車と呼ばれ、さらに均整のとれたスタイルや、バス窓と呼ばれた側面窓が採用されていることなどから、多くの鉄道ファンの間で人気を博していた。1960年代に赤いラインとクリーム色のカラーリングが施され、以来変更されることはなかった。上の写真は十和田市駅の車庫に収まる3401号。

写真/遠藤 純 文/野田伊豆守

十和田観光電鉄線

編集部
編集部

いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

Back number

バックナンバー
More
もっと見る