有明海の穏やかな海原と 雲仙普賢岳を車窓に仰ぐ

山と海のなかをガタゴトと往く列車。シンボルカラーである車両の黄色が、ひときわ目に映える。

海に突き出した島原半島。その有明海側の海岸に沿って延びているのが「島原鉄道」だ。JR「諫早駅」と駅舎を同じくするがホームは0番線。隅っこに黄色の列車が1両ちょこんと停車している姿は何とも愛らしく、早くも期待が高まっていく。昼間は 30分から40分に一本の割合で急行と普通がほぼ交互に走る。 多くの駅が無人であり、列車は基本的にワンマン運転となる。

海と山の変化に富んだ景色のなかをひた走る

しばらくは住宅の間を縫うように進むため路面電車のような雰囲気だが、「干拓の里駅」を過ぎた辺りから景色は広々とした田園地帯に変わってくる。一帯は森山干拓地と呼ばれる長崎では数少ない平野の一つ。初夏には青々とした田んぼが目を楽しませてくれるはずだ。 

「愛野駅」付近で線路は大きく左へカーブ。そして右手車窓には雲仙の山塊が近づいてくる。さらに「吾妻駅」の先からは、待望の海が左手に見えはじめ、いよいよ島鉄のハイライトゾーンへと入る。次の「古部駅」は、有明海と対岸に裾野を広げる多良岳の景色が絵になる駅だ。

さざ波が寄せてくるホームに立ち尽くしていた

「多比良駅」を過ぎて到着するのが大三東駅。同じ島鉄の「古部駅」とともに海が一望できるビュースポットとして特に人気がある駅である。海のすぐ際にホームがあり、有明海はちょうど満ち潮時を迎えていた。列車はさらに「三会駅」から「島原駅」へと向かって走る。

噴火によって生まれた平成新山の荒々しい岩肌に、うっすらとかかる白い雪。自然の美しさと畏怖を併せ持つ島原半島のもう一つの光景。しかし、この山々のおかげで豊富な温泉や島原の町を潤す清らかな湧水があるのも事実だと思うと、なにか感慨深い気持ちになった。
(写真/秋 武生)