中央線の大衆酒場文化を牽引する
酒呑みにとって吉祥寺といえば、パルコでも東急百貨店でもなく、南口の「いせや」だろう。開業は戦前の昭和3年(1928)。当時は精肉店だったが、昭和29年(1954)からすき焼き、焼き鳥店も営み、今日に至る。
「今も裏手に精肉所があって、そこから肉を運んでますよ」と、本店を切り盛りする主任の斉藤茂規さん。斉藤さんの父親もここで働いていたという、いかにも老舗らしいエピソードだが、70〜80代の常連客が多いのも、また老舗ならではだろう。実に50年以上通っている客もいるそうだ。
当時の建物は老朽化のため平成20年(2008)に改装、新装オープンしたが、道路に面した焼き場正面の立ち呑みスペースが一番の特等席なのは今も変わりない。
「ここのシューマイは絶品だよ」と常連さん。もうもうと上がる煙に包まれ、ビールの大瓶をコップでやるのが、正しいのである。