ビル街の中で時間が止まった老舗酒場
天王寺に平成23年(2011)にできたショッピングモール「ヴィアあべのウォーク」に店を構える「明治屋」。
“酒”の文字を染め抜いた暖簾の前に立つと、時が止まったかのような錯覚を覚える。周辺の雰囲気とは明らかに一線を画す不思議な空気感。
木の引き戸をそっと開けて中に入るとさらに時代がさかのぼった。使い込まれた木のカウンターとテーブル席。
黒い板に白文字の品書き、神棚、そして銅製酒燗器の銅庫が美しい存在感を放っている。客も静かに杯を傾けている人が多い。
明治屋は明治末期に梅田で酒の小売業として創業。
その後、昭和13年(1938)に阿倍野に移り酒場を開店した。以前は現在の場所から100mほど南の道沿いにあったが、開発によって今の場所に移転。
四代目の松本芳隆さんが店を継いでいる。内装、銅庫や酒器をはじめ丁寧に手作りされる料理など、昭和の面影は今も変わらない。
文/岩谷雪美 写真/秋 武生