ビル街の中で時間が止まった老舗酒場

天王寺に平成23年(2011)にできたショッピングモール「ヴィアあべのウォーク」に店を構える「明治屋」。

“酒”の文字を染め抜いた暖簾の前に立つと、時が止まったかのような錯覚を覚える。周辺の雰囲気とは明らかに一線を画す不思議な空気感。

ひとり昼呑みがよく似合うカウンター席。

木の引き戸をそっと開けて中に入るとさらに時代がさかのぼった。使い込まれた木のカウンターとテーブル席。

銅で造られた酒燗器の銅庫。熱め温めの温度調節は、季節や気温などで加減する。ガラス徳利の底を手で触って適温がわかるという。

黒い板に白文字の品書き、神棚、そして銅製酒燗器の銅庫が美しい存在感を放っている。客も静かに杯を傾けている人が多い。

猪口とガラス徳利には明治屋の文字が記されているが、店主の代によって字体が変わっている。

明治屋は明治末期に梅田で酒の小売業として創業。

この瞬間がたまらない。

その後、昭和13年(1938)に阿倍野に移り酒場を開店した。以前は現在の場所から100mほど南の道沿いにあったが、開発によって今の場所に移転。

いかの煮付け(350円)。
薄焼き卵で巻いたシューマイ(360円)。

四代目の松本芳隆さんが店を継いでいる。内装、銅庫や酒器をはじめ丁寧に手作りされる料理など、昭和の面影は今も変わらない。

明治屋の文字が浮かぶレトロなガラス徳利とお猪口で味わう日本酒(川亀・1合420円)はひと味違う。昔ながらの銅庫で絶妙な加減で温めてくれるぬる燗が美味! もちろん、熱め温めとお好みをオーダーできる。出汁が上品にきいた鯛のあんかけ(350円)と共に味わう幸せを単能。
初代の松本常吉さんが開店した当時からの雰囲気を伝える店内。使い込んで味わいを深めた木のカウンター。以前の店はうなぎの寝床のように細長くカウンターももう少し長かった。今は短くカットして利用。右上の神棚には能勢の妙見さんを祭っている。
ショッピングセンター「ヴィアあべのウォーク」内にある店。明治屋の看板も情緒たっぷり。

文/岩谷雪美 写真/秋 武生