最近よく耳にするようになったクラフトビール。実際はどんなビールなのか、知っているようで知らない人が多いクラフトビールの定義や誕生の歴史を紹介。似ているようで異なる地ビールとの違いについても触れていく。ビール好きなら押さえておきたいクラフトビールの代表3種類もぜひチェックしてほしい。

ビール党には堪らない。「クラフトビール」の定義とは

クラフトビールの定義は諸説あるが、一般的には規模が小さい醸造所がそれぞれの個性を出してつくるビールのことをいう。クラフトとは英語で《craft》と表記し、「技術」や「職人技」という意味である。その名の通り、醸造所の職人たちが自身のこだわりと技術を集約したビールがクラフトビールだ。

日本でクラフトビールのルーツとなる地ビールが誕生したのは1994年である。この年、酒税法改正により規制緩和されたことで、日本全国に小規模なビール醸造所ができたことがきっかけだ。後にその地ビールの一部が、クラフトビールとも呼ばれるようになる。

クラフトビールと地ビール、市販のビールとの違い

クラフトビールと似ているようで異なる存在の地ビール。また、クラフトビールとは、対極にあるイメージが強い市販のビール。ビール好きであれば、クラフトビールとそれぞれとの違いについても気になるところだ。

地ビールとの違い

クラフトビールの歴史について説明した際にも触れたが、地ビールはクラフトビールのルーツだ。見方によっては地ビールとクラフトビールは同じものともいえるだろう。酒税法改正により規制緩和された当時、地域おこしの一環として日本全国に小規模なビール醸造所ができた。その数は300を超えたという。(参照元:よなよなの里

地ビールとは、各醸造所がつくったその土地に根差したビールのことだ。当時は、市販のビールとは異なる地ビールが話題となり地ビールブームが起こった。そして地ビールは、観光客を呼び込む格好の名物商品となっていった。名物商品として、現地で飲まれることはもちろん、土産物として瓶ビールや缶ビールで販売されると、たちまち人気の土産物となった。

そんな地ビールブームの最中、アメリカで流行っていたクラフトビールブームが日本にも上陸したのだ。アメリカのクラフトビールは、クラフトマンと呼ばれる職人がビールの魅力をとことん追求し、スタイルに固執せず職人がつくりたいものを自由につくった、多様性のあるビールのことだ。

それはこれまでの日本でつくられていた観光地の土産物レベルの地ビールとは一線を画したものだった。小規模なビール醸造所がつくるビールという点では、クラフトビールと地ビールは同じものということになる。しかし、ブームが起こった当時の地ビールは、ドイツスタイルのいくつかのビールを製造している醸造所がほとんどで、これまでにない多様性や個性的な味わいがあるとは到底いえるようなものではなかった。

それでも、クラフトビールブームの影響を受けた現代の地ビールは、クラフトビールと変わらないレベルの技術やこだわりを持ってつくられることが多くなり、現在ではクラフトビールと地ビールの違いはより曖昧なものとなっている。

大手メーカービールとの違い

大手メーカーのビールは、複数個所の工場でビールを大量につくり、どこにいても当たり前のように一定の品質をキープした味わいを楽しめる、ということを重要視している。一方でクラフトビールは、醸造所が小規模で大量生産していない、その場に行かないと楽しめないほか、ものによっては製造時期が限られているという希少性に特徴がある。

また、大手メーカーとの大きな違いは、醸造家と顧客との距離感が近く、コミュニケーションを取ることも可能ということだ。ビールが産まれるまでのストーリーやこだわりなど、醸造家から直接聞ける様々な話を肴にしながら、クラフトビールを堪能できる醸造所も多い。ただ単純にのどを潤すためにビールを飲むというよりも、ビールを飲みながらその他の要素も満喫できる、それがクラフトビールの醍醐味である。

しかし、近年では大手ビールメーカーが今までと趣向が違うビールをクラフトビールと謳って大量生産し販売しているのだ。その影響で、クラフトビールの間違った認識が広まってしまっている。本来のクラフトビールの希少性や醸造家とのコミュニケーションを楽しめるといった良さが消えてしまっているのだ。本当のクラフトビール好きにとっては悲しい事態である。

ビアバーで頼みたくなる代表的クラフトビールの種類

多くのビールを楽しむことができるビアバー。どのビールを頼むか迷ってしまうところだが、まず代表的なクラフトビールは味わってほしい。クラフトビールは醸造家のこだわりなどが反映し、それぞれに持ち味があるため、100種類以上はあるといわれている。

そんなクラフトビールの種類は、発酵方法の違いから「ラガー」・「エール」・「自然発酵ビール」の3種類に大きく分けることができる。それぞれのビールの製造方法や味わいの特徴を知っていれば、どのビールにどんな料理が合うかなどもわかってくるはずだ。今まで以上にビールの味わい方の幅が広がり、よりクラフトビールを楽しむことができるだろう。

ラガー系ビール

日本で流通しているビールの大半を占めているのがラガー系ビールである。その歴史は意外にも浅く、19世紀に誕生したラガー系ビールは、古くからの歴史があるビールの中では新しい系統なのだ。

ラガー系ビールとは「下面発酵酵母」という発酵の最後に下面に沈む酵母を使い、10度ほどの低温で発酵・貯蔵させたビールのこと。見た目はキレイな黄金色でビールといえばこの見た目を連想する日本人が大半だろう。味はすっきりとした印象で、何といっても爽快なのど越しがくせになるビールだ。

日本のクラフトビールでは、ピルスナー(湘南ビール)・多摩の恵ピルスナー(石川酒造)・瑠璃-Ruri-(コエドブルワリー)などがラガー系ビールとして挙げられる。のどの渇きを癒すにはもってこいのビールで、仕事帰りの1杯におすすめのクラフトビールだ。

エール系ビール

クラフトビールでも歴史が古く、ラガー系ビールが誕生するまで、メジャーなポジションにあったのがこのエール系ビールだ。「上面発酵酵母」という発酵の最後に上面に浮かんでくる酵母を使い、20度ほどの温度で発酵させてつくる。フルーティな香りが特徴的で、味わいはとても豊かだ。

イギリス発祥のペールエールや南ドイツのヴァイツェンが代表的である。日本の醸造所のビールとしては、ペールエール(箕面ビール)・インドの青鬼(ヤッホーブルーイング)・ヴァイツェン(富士桜高原麦酒)・ホワイトエール(常陸野ネストビール)などがある。香りを楽しむといった側面を持つビールなので、ひとりでビールを楽しみたいときにうってつけだ。

自然発酵系ビール

自然界の野生酵母を使用し、常温で発酵させたビールを自然発酵系ビールという。ベルギーのブリュッセルでつくられる伝統あるビール、ランビックが有名だ。思わずむせてしまいそうになるほど酸味が強く、独特の香りが特徴のビールで、「漬物のような発酵臭」と形容されるほど。いつもと一味違うビールを楽しみたいというときにおすすめである。

熟成したランビックとできたばかりの若いランビックを混ぜて二次発酵させたグーズや、16世紀~19世紀ごろのロシアの家庭でつくられていたビールのクヴァスも自然発酵系ビールだ。

クラフトビールの歴史、地ビールや大手メーカーのビールとの違いなどについて紹介した。近年では、街中に醸造所にバーが併設されている施設も増え、できたてのクラフトビールが楽しめる環境が整ってきている。

醸造家と距離が近い環境でクラフトビールを飲む機会があれば、コミュニケーションも楽しんでみてはいかかだろうか。本物のビール好きであれば、大手メーカーがつくっている名ばかりのクラフトビールではなく、本物のクラフトビールの良さを理解し楽しんでほしい。