登山家にとって、安心して登山ができることはとても重要なことだ。そして、それに次いで大切なのは、登山中の食事をどうするかということ。より登山を快適に楽しむために、登山やトレッキング、ハイキングのスケジュールに合わせた食料計画や、必要な栄養素について解説する。初心者の登山の食料計画の参考にしてほしい。

登山前|状況に応じて食料計画を立てる

まず登山やトレッキング、ハイキングなどをする上でもっとも重要なことのひとつといっても過言ではないのが食料計画である。どんなに完璧な装備で登山に挑んだとしても、食料計画が万全でなければ登山が失敗に終わってしまうリスクは高くなる。

場合によっては、命の危機にすら陥ってしまう可能性もあるのだ。では、具体的にはどのような食料計画が必要になってくるのか。基本的な山の食料選びの条件としては、5つがあげられる。

山の食料選びの条件

・軽量かつかさばらないコンパクトな形状
・傷むリスクが低く、保存がきくもの
・厳しい登山に対応可能な高い栄養価があるもの
・誰でも調理が簡単にできるもの
・美味しいもの

食料計画は、極力条件を満たすものを揃えるようにすることが基本だ。登山の荷物は山行期間にもよるが、多くて数十キロもの荷物を背負うことになる。食料で荷物の重量を増やさないよう、軽量でかさばらないものを選ぶのが大切なポイントとなってくる。

また、特に暑い季節は食料が傷みやすいので、保存がきく食料を選択するということも忘れてはいけない。その上、登山は本人が思っている以上に体力を消耗するものだ。栄養価の高さも意識して食料を用意する必要がある。天候が変わりやすい登山中の調理においては、時間がかからず誰でも簡単に作れることも重要だ。

山行期間や人数、季節などで食料計画を変更する

食料計画は登山の山行期間や人数、季節、炊事道具を持参するかなど山行のスタイルによって内容の変更が必要だ。それぞれのパターンに適切な最低限の食料計画を紹介する。

・山行期間による違い
<一泊二日の場合>
一泊二日の山行の場合、装備の総重量は少なく荷揚げをするのは山小屋泊の場合は山小屋まで、テント泊の場合はテントサイトまででよい。そのため、それほど重さを気にする必要がなく、食料を多く持参することが可能だ。また山行期間も短いので、保存性や栄養価よりも食事の美味しさや楽しみを優先させることができる。

<三泊四日の場合>
山行期間が若干長くなるので、保存性や重量、コンパクトさを最優先する必要がある。栄養価に関しても意識して食料選びをしよう。山登りに持参した食料の中でも、保存があまりきかないものや重量が重いものから順次消費するように工夫をすれば、のちの工程も楽になるだろう。

・季節による違い
<春>
春はまだ残雪や雪解け水がある季節のため、それを水として利用することができる。また残雪は冷蔵庫のかわりにすることも可能だ。春の夜間は冷え込むことが多く、さらに生鮮食品の保存をする上で有利となる。そして、登山中に山菜や野草を入手することができるのもこの季節の強みだ。とれたての山の幸を満喫できるのは、登山の醍醐味のひとつだろう。

<夏>
夏は登山の山行期間を長くする傾向がある上、食材が傷みやすい季節でもある。その分食料計画は慎重に立てる必要がある。生鮮食品は極力避ける方が賢明だ。また、保存対策もしっかり練って登山に挑もう。

<秋>
一年の中でも断トツで水の確保が困難になるのが秋だ。その分持参する水の量が多くなる傾向にある。気温自体は低めなので、生鮮食品の保存性はそれほど気にしなくてもいいだろう。またこの季節ならではの木の実やキノコ類を現地で入手するできることも、秋登山の楽しみのひとつだ。しかし、キノコ類は毒性があるものも少なくないので、安易に口にしないよう心掛けたい。

<冬>
気温が低く食材の水分が凍結してしまうため、水分を多く含まないインスタント食品を中心とした食料を持参することになる。登山中に食べることを考えて、油で調理した行動食を用意しておくのもいいだろう。飲み水は雪を溶かして確保できるので、荷物の軽量化ができるのがうれしい。

登山時|食事のタイミング、食べるものを考える

登山は運動している時間が長い分、消費エネルギーも他のスポーツに比べて多いのが特徴である。その消費したエネルギーを効率よく補給するためにも、食事のタイミングや内容は重要になってくる。

朝食

登山においての朝食は、かなり重要なものになる。前日の登山疲れがまだ身体に残った状態で、いつもよりも早く起床し、すぐに食事をするといったパターンがほとんどだろう。食欲がなくとも、無理をしてでも食べなければ、命にかかわることになりかねないので、登山での朝食を甘く見てはいけない。

また、食欲がないからといって、糖類を多く含んだチョコレートなどといったお菓子のみを朝食代わりにすることは避けなければいけない。血糖値が急激に高くなり、それを平常値に戻そうとインスリンが分泌され低血糖になるリスクがあるからだ。そのため、糖質は米・パン・そば・うどん・いも類など穏やかな速度でエネルギーに変わる複合炭水化物の形状で摂取するのがいい。また食後すぐに歩行を再開することも多いので、胃に負担が少ない食事というのも忘れてはいけない条件だ。

昼食

登山は長時間歩き続けることで常にエネルギーが消費されている状態が続く。それ故に継続してエネルギー補給が必要になる。短い休憩をとりながら、その都度少しずつ食事をすることがおすすめだ。

炭水化物は、1、2時間でエネルギーを消費してしまうといわれているので、その間隔で食事をするのがちょうどいいタイミングだ。適宜に休憩をとることで疲れも出にくくなる。食事の内容は、朝食と同様の米・パン・そば・うどん・いも類などと、即効性のある糖類のあめやチョコレートなどを組み合わせる。こうすることでスタミナを維持できるだろう。

夕食・夜食

夕食は朝食・昼食とは異なり時間をたっぷり掛けることができるので一日の食事のメインになる。ここでは食後の睡眠に備えて、極力ゆっくり吸収されるパスタ・オートミール・そばなどの炭水化物をメインとして、野菜などの食物繊維も一緒にとることができればベストだ。エネルギーをたっぷりとることはいいことだが、ここで脂質が多い食事をすると、胃に負担がかかってしまうので注意が必要だ。

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登山後|疲労を回復する食事をメインにする

登山はフルマラソンにも匹敵するほど、エネルギーを消費する。そのため、下山後は疲労回復に努める必要がある。登山などの運動後、すぐに糖質を含んだ食事をすることで筋グリコーゲンの回復が早まり、疲労した筋肉を修復する効果があるといわれている。

登山によってビタミン・ミネラル・たんぱく質も大量に失われた状態になる。失われた栄養素を補うことができるような栄養バランスがとれた食事をするように心掛けることが必要である。登山によって蓄積した疲れが、日常の仕事に影響しないよう、登山後は疲れを残さないアフターケアが大事だ。

登山は、山行期間や季節によって食料計画が大きく変わってくる。初心者であれば、登山での食事は楽しめる内容にすることがおすすめだ。手軽で美味しいコンビニのおにぎりやパンもいいが、せっかくなので美味しく食べられる季節の山の幸などを現地で入手して楽しんでもらいたい。

さらに慣れてきたならば、山行期間が長い本格的な登山に挑戦してほしい。その際の食料計画は、食材の重量・コンパクトさ・栄養素をしっかりと意識して計画する必要がある。安全に登山を楽しんだ後は、翌日以降の仕事に影響が出ないように、栄養バランスのとれた食事をするなどのアフターケアをしっかりと行えば、また次回も充実した登山を満喫することができるだろう。