ブランデーというと、どこか敷居の高さを感じてしまう…。歴史あるブランデーに対して、あなたが抱いたその感覚は間違いではない。しかし、敷居が高いことを理由に敬遠するのは「もったいない」の一言に尽きる。

これからブランデーを本格的に楽しんでいきたいという初心者の方のために、ブランデーについて丁寧に解説しよう。

抑えておきたい「ブランデー」の基本

ブランデーにも有名ブランドが存在する。ヘネシー・レミーマルタン・カミュ…。その中でも最大手となるのがヘネシーだ。

ヘネシーは1987年にルイ・ヴィトンと合併しており、ブランデーの中でも名高いコニャックにおいて圧倒的なシェアを占めている。にもかかわらず、ヘネシーを提供している場所が高級クラブなどしか思い浮かばないのは、ブランデーの敷居の高さを物語っている。

一方で、レミーマルタンは俳優や著名人を起用したメディア戦略で、露出を高めている。また、国産ブランデーの雄であるサントリーは、人気の女性ブロガーが作ったレシピを集めた特設ページを公開し、一般家庭のキッチンでも楽しめるブランデーのイメージづくりに貢献している。

たしかに、ブランデーは高級志向の中で育まれてきた歴史を誇る。だが、ブランデーのことを詳しく知れば、きっと敷居の高さは解消するに違いないのだ。

「ブランデー」とはどんなリキュール?

ブランデーとは、現在では英語で“brandy”と表記する。語源はノルウェー語で「焼いたワイン」を意味する“brandevein”で、これがオランダに入ると“brandewijn”に変化し、英語圏に伝わったときには“brandy-wine”となった。ここからワインを意味する部分が消えて“brandy”が残り、ブランデーと呼ばれるようになったわけだ。

ブランデーの祖先が誕生したのは7~8世紀。このころ、スペインではワインを蒸留することででき上がるブランデーの前身が親しまれていた。15世紀にはフランスで本格的にブランデーの生産が始まり、現在まで続く歴史が始まる。

フランスのコニャック地方を中心に、アルマニャック地方でもブランデーの生産が盛んになり、現在でも生産地を冠にしたブランデーは格別のブランドとしての地位を確立している。

1713年、ときの皇帝であったルイ14世がブランデーを保護する法律を敷いた。ブランデーといえばレミーマルタンが醸造している「ルイ13世」が有名だが、ブランデーが「王侯の酒」としての品格を得たのは、実のところルイ14世の功績が大きいのだ。

ブランデーの主な原料はワインと同じ「ブドウ」

a glass of cognac and a bunch of grapes on a wooden table.

ブランデーの主原料は白ブドウだ。ブドウを主原料とする酒類といえば、まず思い浮かべるのはワインだろう。

白ブドウを圧搾機にかけて果汁を絞りとり発酵させることで、白ワインができ上がる。この時点ででき上がった白ワインは8%程度のアルコール度数が低いものだ。

ブランデーはここでさらに「蒸留」を加える。わずか8%程度だった白ワインは蒸留によって70%というアルコール度数が高い液体に精製されていく。この液体を樽に入れて長期熟成させることで、アルコール度数40~50%ほどのまろやかで、琥珀色の美しいブランデーが完成する。

ブランデーの元祖はブドウを原料として誕生したが、現在では果実を発酵・蒸留した酒類を総称してブランデーと呼ぶ。さくらんぼを原料としたものは「チェリーオードヴィー」、リンゴなら「アップルオードヴィー」と呼ばれ、フルーツブランデーとしての地位を確立している。

初心者でも楽しめるブランデーの飲み方

ブランデーを嗜む所作といえば、大きめのグラスにゆらりと波を打つブランデーのシルエットが一般的なイメージかもしれない。実は多くの人が思い浮かべるこの描写には、いくつかの間違いがある。ブランデー愛好家であれば「それではブランデーの本当の美味さは堪能できない」と抗議したくなるくらいだろう。

ここでは、ブランデーの持つ深い味わいと豊潤な香りを余すことなく楽しむための飲み方を紹介しよう。こんなふうにいってしまうと、初心者の方は少し肩を張ってしまうかもしれないが、気にする必要はない。なぜなら、ブランデーを十二分に堪能する飲み方は、実にシンプルで簡単であるからだ。

まずはストレートで味わう

ブランデー本来の味わいと香りを楽しむ最高の飲み方はストレートだ。日本酒や焼酎でいうところの「生(き)」と同じで、水や氷といった混じり気を一切省き、ブランデーをありのまま口にすることで、ブランデーが持つスペックのすべてを感じ取ることができる。

ブランデー初心者で、アルコール度数が高い酒には少し抵抗があるという方なら、水や炭酸水などを別のグラスに注いでチェイサーとして用意することをおすすめする。

ストレートは、ブランデーが持つ深い味わいと豊かな果樹園の香りをイメージさせるのに、もっとも適した飲み方だ。「もっとも簡単な方法」が「もっとも適した方法」であることは意外にも思えるが、これなら初心者でも簡単にチャレンジできるのではないだろうか。

しかしブランデーをストレートで楽しむうえで、いくつか抑えておきたいポイントがある。

適温は18〜20度が基本

ブランデーは常温で楽しむものだ。ワインのように氷を入れたペールを用意する必要がないので、手軽に保存もできる。ここでさらにブランデーの味わい・香りを引き立たせるには「18~20℃が適温である」ことを意識したい。

ブランデーの中でも主流となるコニャックは、室温が13~17℃、湿度は70~90%に保たれた貯蔵庫で熟成される。最低でも3年、長いものでは70年もこの環境で熟成されるのだから、品質の基本は貯蔵庫の環境がベースとなって当然である。

ブランデーはまるで生き物のように温度変化に敏感だ。冷えすぎると香りが発せられず、温まりすぎると揮発したアルコールの臭いが強くなってしまう。温度がどちらの方向に進んでしまっても、ブランデーが持つ本来の豊潤な香りは楽しめない。

18~20℃を意識してブランデーを保管するのはなかなか難しいが、初心者であれば温度計を確認しつつブランデーを楽しむというスタイルからチャレンジすることをおすすめしたい。常温で室内に置いておき、適温の日こそが「ブランデー日和」という嗜み方もまた気まぐれな感じがして楽しいものだろう。

なお、ブランデー通の間では「グラスに注いで手で温めることで適温になる」といわれていたが、いわゆる人肌の温度は、ブランデーにはやや温かすぎる。

昔ブランデーの品質があまりよくなかった時代はその方法が推奨されていたが、製造技術が格段に向上した現在では、むしろブランデー本来の香りを損なってしまうのだ。ブランデーを楽しむ際には、自分の体温で温まらないように気をつけたい。

「ブランデーグラス」にもこだわる

ブランデーグラスといえば、故石原裕次郎の名曲を思い浮かべる方も多いだろう。そのため、石原裕次郎を物真似する際には、片手に器部分が丸くて大きい形状をした脚の短いグラスを持っていることが多い。

これが一般的なブランデーグラスのイメージだろう。ところが、このブランデーグラスだと、指で脚を挟み込んで固定し、手のひらで器の丸みを包み込む形でグラスを持つことになるため、ブランデーを温めることになってしまう。

実は、ブランデーグラス=丸みを帯びて脚が短いものを使っているのは日本だけだ。ブランデーの本場であるヨーロッパでは、ブランデーグラスといえば脚が長く、先端の器部分はチューリップの花のような形状のものが好まれている。ブランデーの本場では「手で温めないように気をつける」ことが基本として根づいていたのだ。

ブランデーグラスは「くびれ」も重要だ。器部分にくびれがあると、顔をやや上向きにしながら飲むことになる。顔を上向きにしながら飲むと、口に入ったブランデーがムダに口中に広がらず、舌の真ん中を突き抜けるように喉を通る。雑味を感じずにブランデーを味わいたいのであれば、しっかりとくびれた形状のものを選びたい。

また、先に述べたように日本では器部分が大きく丸いものがブランデーグラスとして好まれているが、容量が大きなものは好ましくない。ブランデーグラスの容量は80ml程度が適量とされているため、一般的にイメージするブランデーグラスでは容量が大きすぎる。

ブランデーグラスを買い求める際には「少々物足りないのでは」と感じるくらいの容量のものを選ぶべきだろう。

20〜30分で飲める量で注ぐ

ブランデーをグラスに注ぐ際には、注ぎ込む量にも気をつけたい。一度に注ぐブランデーの量は、20~30分で飲める量が適切だ。

ブランデーは空気に触れることで徐々に風味が衰えていく。アルコール度数が高く揮発性も高いため、空気に触れる時間や面積はできるだけ少ないほうがより風味を豊かに楽しむことができる。そのため、20~30分で飲み終える量にすることで、最後までブランデー本来の味・香りが維持されるのだ。

ブランデーは、ゆっくりと時間をかけながら熟成された時間を楽しむもの。のど越しを楽しむビールやハイボールなどとは趣向が異なる。深い味わいを楽しむためには、じっくりと時間をかけて口にしながらも、飲み干すまでに時間がかかりすぎない量にしたい。

ストレート以外の飲み方・割り方

Whiskey Highball with Ginger Ale and Lemons

ブランデーの飲み方はなんといってもストレートがおすすめだが、始めから「ストレート以外は邪道」と取りあわないのはもったいない。お酒の楽しみ方は人それぞれだ。邪道だとされながらも、自分がもっとも美味しいと感じられる飲み方を探求するのも、ブランデーの楽しみ方のひとつだろう。

ストレートではアルコール度数が強すぎて抵抗があるという方は、まずは飲みやすい方法を探求してみてはいかがだろう。

水割り&ソーダ割り

アルコール度数の高さが苦手という方には、まずは水割りにチャレンジすることをおすすめしたい。

ブランデーと水の割合は好みによるが、基本はブランデー1:水1の割合で注ぐ「トゥワイスアップ」だ。もっとブランデーの味わいを感じたいと思えばブランデーを多めに、まだアルコールの強さが勝ってしまう場合は水を多めに調整するとよい。

注意したいのが水の温度だ。ミネラルウォーター類はつい冷蔵庫で冷やしてしまうが、ブランデーと割る場合は常温のものを用意したい。常温が基本のブランデーは、よく冷えたミネラルウォーターと混ぜ合わせるとお互いが馴染むのに時間がかかってしまう。

もっと飲みやすさを優先させたい方にはソーダ割りもおすすめだ。炭酸水で割ることで、さわやかな炭酸の気泡が飲みやすさをサポートしてくれる。

一部ではウイスキーを炭酸水で割ったハイボールさえ邪道だとする愛好家もいるが、炭酸水が豊富なヨーロッパ地方では、王侯貴族もブランデーをソーダ割りで楽しんでいたという。決して邪道な嗜み方ではないので、バーなどでも遠慮なくソーダ割りをオーダーするとよいだろう。

カフェ・ロワイヤル

少し変わったブランデーの楽しみ方としておすすめしたいのが、カフェ・ロワイヤル。

スプーンの上に角砂糖をのせ、ブランデーをしみ込ませて火をつける。アルコール度数が高いブランデーに着火することで、幻想的な青白い炎がブランデーの豊かな香りとともに燃え立つ。角砂糖が溶けたらコーヒーに入れてよくかき混ぜると、かのナポレオンが愛好したという王室のコーヒーのでき上がりだ。

ニコラシカ

ブランデー初心者でも簡単に作れるカクテルがニコラシカだ。グラスにブランデーを注ぎ、輪切りのレモンでフタをする。レモンの上に砂糖を盛るだけでニコラシカの完成だ。

嗜む際は、レモンを砂糖と一緒にかじりながらブランデーを口に注ぐ。酸味・甘味・ブランデーの豊潤な味わいと香りが一体となり、口の中で完成する。シンプルながらも贅沢なカクテルだといえる。

サイドカー

ブランデーカクテルといえばサイドカーも人気が高い。ブランデー2・ホワイトキュラソー1・レモンジュース1の割合でグラスに注いでステアするだけのカクテルだ。自宅でも簡単にチャレンジできるだろう。カットフルーツなどを添えると雰囲気も増す。

ホットブランデー

ブランデーの香りを強く楽しみたい場合はホットブランデーを嗜みたい。温めたグラスにブランデーを注ぎ、2~3倍量のお湯を注ぐだけ。好みにあわせてはちみつなどを加えるほか、アルコール臭が気になる場合は、コリアンダーなどのスパイスを振りかけるのもおすすめだ。

敷居の高さを感じる方が多いブランデーも、実はいろいろな楽しみ方がある。仕事を終えたナイトタイムにグラスを傾けるのもよいが、デスクでカフェ・ロワイヤルを嗜むのもよいだろう。ぜひ自分なりのブランデーの嗜み方を探求し、熟成された時間が与えたまろやかな味わいと豊な香りを楽しんでいただきたい。