アイスワインは凍ったワイン?

まず、アイスワインという名前からか、「凍ったワイン」を想像している人も少なくないが、それは誤解だ。アイスワインは「凍ったぶどう」を使用してできる甘口タイプのワインを指す。

樹上で凍ったぶどうを収穫し、凍ったままの状態ですぐに圧搾することで糖度の高い凝縮された果汁を得られる。糖度の高い果汁は余剰分の水分を含まないため、搾汁の量は通常の1割以下。さらに収穫を遅らせることによって冷害、害獣の被害に遭うリスクも高くなる。そのため、アイスワインの希少価値は自然と高くなる。

その昔、本来は氷結してしまったぶどうは廃棄する他なかったが、当時ドイツの農民が試しに作ってみたところ、果実味由来の凝縮された甘みのある素晴らしいワインができたことがきっかけだ。偶然の産物として生まれたこと、そして醸造プロセス上非常に生産量が限られることから、アイスワインは「奇跡のワイン」と言われている。

アイスワインが作れる産地は3つだけ!

では、決まった醸造法であればアイスワインをどこでも造れるのかと言えば、否である。アイスワインは国際登録商標なので、限られた地域でしか造ることができない。正確にはドイツ、オーストリア、カナダの3ヶ国のみがアイスワインという名称をつけて醸造できる。アイスワインと同じ製法でつくる甘口ワインはその他多くの国でも醸造されているが、アイスワインの名称は名乗れない。

もともとは18世紀末にドイツのバイエルン北部のフランコニア地方で偶然生まれたアイスワインは、隣国であるオーストリアに伝わった。そして安定した生産を求めてカナダのオンタリオ州に移住したことがきっかけで、現在でも3ヶ国のみがアイスワインを名乗ることができる。
使われるぶどう品種は多々あるが、リースリングやカベルネ・フラン、またはカナダの固有品種であるヴィダルが多い。耐寒性があり、アロマティックで香りが強い品種が好まれる。さっぱりとした芳醇な甘さが特徴で、近年では発泡性のあるスパークリングアイスワインも造られている。

主要生産国はカナダ

現在アイスワイン市場の大半を占めているのはカナダ。そしてカナダ全体のワイナリーの約2割がアイスワインを醸造するワイナリーだ。
カナダのアイスワインに関する規定は非常に厳しく、樹上で凍ったぶどうを外気温-8度以下で収穫することや、人工的に冷凍したり、タンクを-4度以下に冷却することも禁止されている。つまり−8度の状況下で、深夜から夜明けを迎えるまでにぶどうを収穫する必要があるので非常に過酷な作業になる。

その後、さらに官能評価を含む検査を受けて、合格したものだけが市場に出せるので、希少性が高い。

アイスワインに合わせたい食材は?

アイスワインは糖度が高いので、濃厚な甘みで余韻が長く、酸味とのバランスも良い。後を引くような甘ったるい味わいではなく、自然な甘みが感じられるのが特徴だ。そしてなにより、特筆すべきは上品で甘やかなアロマ。スワリング(ワイングラスをまわすこと)すると甘美な香りが立ち上ってくる。

アイスワインは食後に楽しむシーンが多く、シャインマスカットや洋梨といったフルーツとのペアリングや、チーズケーキ、フルーツタルトといったデザートとも合わせられる。濃厚なバニラアイスやドライフルーツもいいだろう。
なかでも一番のおすすめはチーズだ。白カビのブリーや熟成されたウォッシュチーズ、またはスティルトン、ロックフォール、ゴルゴンゾーラのようなブルーチーズもいい。チーズ本来の塩気とアイスワインの爽やかな甘みのバランスは素晴らしいペアリングだ。

アイスワインを食後にゆっくり楽しもう

近年では地球温暖化の影響でアイスワインの生産が困難な状況にあり、生産量も減少傾向にある。今後はより一層希少性の高いワインになることだろう。

ウィスキーやブランデーでしめる夜ももちろん良いが、これからの季節、しっかり冷やしたアイスワインを傾けてゆっくり過ごしてみてはいかがだろうか。

文:吉川大智(ヨシカワダイチ)
世界40ヶ国200都市の酒場とワイナリーを訪問したJ.S.A認定ソムリエ。ワインバーのマネージャーを経て、現在多数のメディアにてコラムやエッセイを執筆するライターとして活動中。
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