ビールは大きく2種類に分けられる。ひとつは日本人のおよそ9割が口にしているのはラガービールだが、他にエールビールという種類がある。ここではエールビールとラガービールの違いや、エールビールの魅力を解説していく。
異なる発酵方法が味わいのバラエティを生み出す
ビールにはラガービールとエールビールがあるが、その原料は同じで、麦芽・ホップ・水の3つだ。製造の行程もほぼ変わらないが、この2つのビールの味わいには決定的な違いがある。この差を生み出しているのが発酵方法の違いだ。
ドイツが発祥と言われているラガービールは、ラガー酵母(下面発酵酵母)を使用している。このラガー酵母はすっきりとした味わいとのどごし、苦みが特徴だ。ちなみに下面発酵とは、発酵が終わったビール酵母が沈殿していくことを指している。
これに対して、エールビールはイギリスから製造が始まったとされている。エール酵母(上面発酵酵母)を使用し、15度から25度の常温で一気に発酵させる。上面発酵の製法を使うと、上面へ浮かびあがった酵母が層を作り、エステルという香りの成分が生まれる。そのため、ワインのような香りと味わいを楽しむことができる。味わいや風味が全く異なるのは、これら発酵方法の違いによることがわかる。
ラガービール大国の日本が気づいていない、エールビールの魅力
現在、日本で発売されているビールのうち、9割がラガービールだ。ラガービールが15世紀ごろから普及し始めたのに対して、エールビールの歴史は紀元前6,000年頃からととても古く、ビールの起源とも称される伝統的な製法だ。イギリスがエールビール製造の始まりとなった理由の一つとして、夏は涼しく冬は温暖な気候条件が挙げられる。この気象条件がエールビールの発酵に適しており、エールビールの製造法がイギリス各地に浸透していくようになる。
中世以前のイギリスでは、ビールの原料となるホップの代わりにハーブを使った「エール」が主流だった。しかし、15世紀に入り、ホップが入ったビールが輸入されるようになると、ホップの使用の有無によってビールとエールを呼び分けた。しかし、その区別は次第に曖昧になり、ビール麦芽への課税が始まると麦芽を減らしてホップを多く使う「ペールエール」が主流となったのである。
1722年には、ホップを3倍以上使用しアルコール度数が高い「ポーター」が登場し、エールビールの人気はますます高まっていった。現在でも、イギリスでエールビールが支持を受けているのは、このような時代背景が影響しているのだ。ちなみに、日本でもサントリー、ヤッホーブルーイング、サンクトガーレンなどがエールビールを製造しており、日本のエールビールを味わうことができる。
日本はラガービールが多いが、エールビールがないわけではない。一度探して飲み比べてみてはいかがだろうか。