温泉には3つの効果があることをご存知だろうか。その3つとは、物理効果・心理効果・薬理効果のことをいう。この記事では、これら3つの効果について詳しく解説していく。温泉の効果について興味のある方は、ぜひ参考にしてみてほしい。

温泉の物理的な効果とは?

温泉の物理効果とは、湯の温かさや水圧、浮力によって生まれる。ここでは、それぞれどのような効果が期待できるのか、根拠とともに解説していこう。

温熱効果

温かいお湯に浸かると、体内の血行や自律神経の調子がよくなる。血行がよくなると、血管が広がって新陳代謝が高まるため、体内の老廃物の排出が促進される。たとえば、疲労物質が排出されれば疲労回復に効果が見込めるというように、老廃物の排出にはさまざまな嬉しい効果が見込めるのだ。また血管が広がることによって、筋肉痛や神経痛、慢性的な関節痛を和らげる効果も期待できる。

加えて、温泉の温度によって2つの自律神経が活性化されることも押さえておきたい。一般的には42℃以上の熱い温泉に浸かると交感神経が働き、スッキリと目が覚め、リフレッシュ効果が期待できるといわれている。37~40℃の温かい温泉では副交感神経が働き、リラックスして落ち着いた気持ちになれるのだ。

水圧効果

お湯の中に体を沈めると、体表面には水圧がかかる。この水圧によって内臓が刺激され、内臓をマッサージしている状態と同じになる。また、普段は重力によって血液の巡りが悪くなりがちな脚の血行も、水圧によってポンプアップされるため、巡りがよくなる。とくに、普段から足先の冷えやむくみなどの症状に悩んでいる方には嬉しい効果といえるだろう。

浮力効果

温泉やお風呂、プールなど水の中に入ると浮力が働き、体が軽くなったように感じる。これにより筋肉が緩み、脳波がα波になりやすいといわれている。α波は「安静時脳波」とも呼ばれ、リラックス状態や安静閉眼状態にてあらわれる脳波のことを指す。つまり、浮力効果によってリラックスした状態になりやすいのだ。

温泉の心理効果(転地効果)

続いて、温泉の2つ目の効果、心理効果について紹介しよう。

心理効果は別名「転地効果」ともいわれている。その名のとおり、日常生活を送っている土地から、普段は行くことのない温泉地に足を運ぶ、すなわち「転地」をすることによる効果を指す。転地には五感を刺激し、自律神経を活性化するなどの効果があり、これによりストレス解消や精神的疲労の回復が期待できる。これはもちろん温泉地に限った話ではなく、単純な旅行でも発揮される。

よく温泉に行く人は、前回は山中の温泉に行ったなら、次は海沿いの温泉に行くなど、意識的に環境を変えるようにすると、より心理効果が働くことだろう。

温泉の泉質と効能について

最後に紹介するのが、温泉の薬理効果だ。これは、いわゆる温泉の「効能」にあたるもので、温泉に含まれる成分を皮膚から吸収することによって得られる。ただし薬事法の観点からいうと、温泉は薬ではないため、本来であれば効能という言葉を使うべきではなく、厳密には「適応症」と呼ぶのが正しい。また温泉は、含まれる成分の種類や量によって10種類に分けられていて、これを「泉質」と呼ぶ。ここでは、それぞれの泉質の適応症(効能)を一覧にして紹介しよう。

単純温泉

「単純温泉」は無色透明の温泉で、10種類の中でもっとも含まれる成分が少ない一方、刺激が少なくお湯が柔らかいという特徴がある。中でもpH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼び、肌がすべすべするような感触がある。主に自律神経不安定症・不眠症・うつ状態などの改善が見込めるとされている。代表的な温泉地としては、岐阜県の下呂温泉や長野県の鹿教湯温泉が挙げられる。

二酸化炭素温泉

湯の中に二酸化炭素が多く溶け込んでいる温泉。入浴すると小さな気泡が付着し、それが皮膚から吸収されることによって、保温や循環などの効果が生まれる。適応症には冷え性・末梢循環障害・自律神経不安定症などがある。有名どころでは、兵庫県の有馬温泉や大分県の別府温泉がこれに該当する。

炭酸水素塩泉

炭酸水素イオンが多く含まれる温泉。湯がとろとろとしており、皮膚の角質を柔らかくする効果があるため、一般的に美肌効果のある「美人の湯」だとよくいわれている。きりきず・末梢循環障害・冷え性などの改善に効果が期待できる。和歌山県の龍神温泉や岩手県の国見温泉が代表的だ。

塩化物泉

塩化物イオンが多く含まれる温泉。飲むと塩辛く、入浴すると皮膚に塩分が付着するため、保湿効果が高いという特徴がある。適応症としては、きりきず・冷え性・皮膚乾燥症などが挙げられる。静岡県の熱海温泉、兵庫県の城崎温泉などが代表的な温泉地として知られる。

硫酸塩泉

硫酸イオンが多く含まれる温泉。湯に苦みがあり、これを飲むと胆のうを収縮させて、腸の動きを促進させる効果がある。きりきず・冷え性・うつ状態などの改善に適している。代表的な温泉地としては、群馬県の伊香保温泉や山梨県の河口湖温泉などがこれにあたる。

含鉄泉

鉄イオンを多く含んだ温泉。鉄が酸化するため、湯は赤褐色や茶褐色をしている。鉄欠乏性貧血に対して効果が期待できる。含鉄泉といえば、岐阜県の長良川温泉や北海道の登別温泉が有名だ。

硫黄泉

総硫黄を多く含んだ温泉。日本に多く見られる温泉で、硫化水素による腐卵臭が特徴だ。殺菌力が高く、アトピーの原因となる物質を取り除く効果が期待できる。適応症にはアトピー性皮膚炎・慢性湿疹・表皮化膿症などがある。群馬県の草津温泉や長野県の別所温泉などが、この硫黄泉にあたる。

酸性泉

水素イオンが多く含まれる温泉。飲むと酸味があり、殺菌にも効果がある。入浴すると肌にぴりぴりとした刺激を感じるのが特徴。適応症としては、アトピー性皮膚炎・表皮化膿症・糖尿病などが挙げられる。秋田県の玉川温泉や岩手県の須川温泉が代表的だ。

ラジウム泉

別名「放射能泉」ともいい、湯にラドンを含んでいるのが特徴。湯に含まれる微量の放射線は、炎症に効果があるといわれている。主に痛風・関節リウマチ・強直性脊髄炎などの改善に適している。鳥取県の三朝温泉や山梨県の増富温泉などが有名だ。

含よう素泉

よう化物イオンを多く含んだ温泉。非火山性のものが多く、湯の色は時間が経つと黄色になるのが特徴だ。飲泉が高コレステロール血症の改善に適している。代表的な温泉地には、千葉県の青堀温泉や東京都の前野原温泉などが挙げられる。

先述のとおり、温泉の効果は3つに分かれる。これらの効果が互いに影響し合うことで、さまざまな効果を発揮するのだ。これを複雑系、英語では「シナジー効果」と呼ぶ。このシナジー効果こそが、普段の入浴では得られない、温泉の本当の効能なのである。

次に温泉に足を運ぶ際には、ぜひ今回紹介した知識を活用してみてほしい。