ここ数年のアウトドアブームでキャンプを始めた人もいるだろう。キャンプ場でのキャンプに慣れてくると、より自然を楽しめる「野営地」でのキャンプに興味が湧いてくる。野営地を利用するには、一体どんなルールや心構えが必要なのだろうか。キャンプ場との違いや実際に利用する手順を日本単独野営協会の代表理事・小山仁さんに聞いた。
■キャンプ場との違いは何?「野営地」とは…
初めてのキャンプは、キャンプ場を利用した人がほとんどだろう。しかし、慣れてくると「野営地」と呼ばれる場所があることに気づく。野営地とは一体どんな場所を指すのだろうか?
「野営=キャンプなので、広い意味ではキャンプ場全般を指す言葉です。しかし、有料のキャンプ場とは別に、キャンプ場として整備・運営されていない河川敷や山のふもともありますよね。それらを区別するため、そうした場所は『野営地』と呼ばれています。
なぜ、区別する必要があるかというと、野営地は私有地もしくは国有地のため、勝手にキャンプをして良いわけではないからです。使用する際にはルールを守ってキャンプをしましょう」(小山さん、以下同)
いわれてみれば、河川敷でバーベキューをしたり、山でテントを張ったりするのは珍しいことではない。炊事場やトイレがなく、料金を支払っていないような場所が野営地なのだ。こうした野営地でのキャンプは、キャンプ場にはない魅力があるという。
「まず、キャンプ場として整備されていませんし、管理者もいないので、お金がかかりません。キャンプ場と違って、チェックイン・チェックアウト時間がないので、時間にとらわれずゆっくりできます。好きな時間に訪れて、好きな時間に帰ってもよし。人の手が入っていないところもたくさんあるので、より自然に近いかたちで楽しめます。一人で山に入った場合は、鳥のさえずりや川のせせらぎなどに癒されますね」
■野営地を利用するときのルールと心構え
野営地は、手つかずの自然を存分に味わえるのが魅力だが、好きなように使ってはいいわけではない。どのような方法で利用するべきなのだろうか?
「自分の土地ではない以上、すべて他人の土地です。山であれば、国有地もしくは私有地になっているはずなので、どちらかを確認します。国有地は、指定キャンプ場以外はキャンプ禁止ですし、私有地は地権者の方としっかりとした関係性づくりが必要です。そのうえで、どのようなことに使用するか、後片付けや火の始末などをどのように行うのかを説明して、許可を取ります。
一方、河川敷は自由使用が原則という場所がたくさんありますが、場所によっては管理地や私有地の場合もあります。そのため、管轄している河川事務所などに連絡して何をしていいのか、何をしては行けないかの確認を取ってから使うようにしましょう」
つまり、野営地を使用するためには前もって準備が必要となる。また、設備が整っているわけではなく、すべて自己責任。利用するための心構えも知っておきたい。
「野営地は、許可を取ったり、ローカルルールの確認がいるので、下見をするのが原則です。せっかく装備を整えて出かけても、許可が下りながったら使えませんよね。それだけでなく、野営地で起こることはすべて自己責任です。ケガなく帰ってくるためには、夜の様子や土地の状況を確認したほうが良いからです。
また、『許可を取った=片付けなくていい』ではありません。お借りした場所に感謝の気持ちを持つことが大切です。使い終わったあとは、最低限の原状回復としてきたときと同等の状態に戻します。可能であれば。ゴミの1つも拾って、来たときよりもきれいにして帰りましょう」
■野営地デビューするまでの手順とチェックポイント
野営地をキャンプ場として利用するためには、さまざまな準備やポイントがあることがわかった。ここでは実際に野営地デビューするまで、どのようなステップを踏んだら良いかを確認してみよう。
STEP 1:キャンプ場でのキャンプに慣れる
キャンプ初心者がいきなり野営地はN G。まずは、キャンプ場を利用して、自分でテントを立てたり、夜を過ごしたりして、テクニックと装備を整える。
STEP 2:慣れた人と野営地でキャンプするか見守ってもらう
野営地でキャンプしたことのある人に同行して、その人の指示に従いながら準備をしてみる。または、日本単独野営協会ではソロキャンプの見守りボランティアをしているので、相談して実践してみる。
STEP 3:キャンプ利用できる野営地を見つけ、許可を取ったり、河川事務所に連絡をとる
山の私有地の場合は地権者と関係性をつくり、許可を取る。開放された河川敷の場合は河川事務所に連絡を取ってローカルルールを確認する。
STEP 4:下見をして準備に入る
下見に行って、どんな場所かを実際に確認する。近くにトイレやコンビニ、温泉などがあるかどうか、電波状態はどうなっているか、地盤や傾斜をみてテントを張れるだけの場所がありそうか、夜の気温やほかの利用者の人数をチェック。新しく装備が必要な場合は買い足したり、自宅で使ってみたりして慣れておく。
野営地でのキャンプは、キャンプ場よりも準備が必要なことがわかった。しかし、それができればキャンプ場にはない楽しさが味わえる。キャンプ場に慣れたら、ハードルの低い野営地から挑戦してみよう。
【取材協力:日本単独野営協会】
「ソロキャンプの健全な普及」を目指し設立。入会金や会費を取らず、個の集合体としてソロキャンプの普及活動、各種キャンプイベント、清掃活動を中心とした野営地の保全活動などを行っている。野営地でのソロキャンプの見守り希望は、ホームページで受け付けている。
https://tandokuyaei.com/
取材・文:岡本のぞみ(verb)