映画『男はつらいよ』の寅さんでおなじみ「バナナの叩き売り」は、明治時代から続く文化だ。発祥の地は福岡県北九州市、門司港。客の心をつかむ巧みな口上のルーツと、ノスタルジックな門司港の魅力を紹介する。

昭和の名シーン「バナナの叩き売り」のルーツ

バナナの叩き売りとは、啖呵売(たんかうり・たんかばい)と呼ばれる商いの手法のひとつだ。

ありふれた商品でも巧みな話術や歌を駆使して売りさばく。かつては縁日や露天商などで行われていた。叩き売りの口上が聞こえてくると、通行人は思わず足を止め聞き入ってしまう。独特の節回しで値が下げられ、商品はひとつ、またひとつと売れていく。昭和を代表する映画『男はつらいよ』で叩き売りをする寅さんを見たことがある人もいるだろう。

バナナが日本に輸入されたのは明治36年(1903)頃。産地である台湾から地理的に近い関係上、門司港で大量のバナナが荷揚げされた。

通常は熟す前の青いバナナを入荷し、地下室で黄色く熟してから市場に出す。しかし、台湾から日本への輸送中に食べ頃になるバナナも出てくる。現代なら新たな商品へと加工できるが当時は難しかった。傷む前に手早く売る方法として登場したのが「バナナの叩き売り」である。

人々の心を掴むその技術はひとつの文化だ。バナナの叩き売りは「門司港バナナの叩き売り連合会」によって継承され、平成29年(2017)には「関門”ノスタルジック”海峡」の構成文化財のひとつとして日本遺産に認定された。

バナナの叩き売りの発祥の地「門司港」を歩く

福岡県北九州市にある門司港は明治以降、国際貿易港として発展した。JR門司港駅前にはバナナの叩き売り発祥の地を記念する石碑がひっそりと建っている。

現在の門司港は、週末やイベントシーズンに威勢のいいバナナの叩き売りの声が響き、それを楽しもうと観光客が訪れる。バナナの叩き売りのルーツをさらに学ぶなら「門司港バナナ資料室」がおすすめだ。ポスターやレコードなど当時の資料から最新情報までが揃う。フォトスポットもあるので気に入った写真はSNSで公開して楽しめる。

バナナの叩き売りのみならず、門司港には魅力ある観光スポットが多い。大正3年(1914)に建築されたJR門司港駅をはじめ、国の重要文化財である旧門司三井倶楽部など、過去にタイムスリップしたかのようなレトロな建造物群が見られる。日本遺産「関門”ノスタルジック”海峡」に認定された街並みは、昼も夜も映画のワンシーンのよう。友人や家族との旅行だけでなく恋人と過ごすにも最適だ。

福岡でひと味違う名物を楽しむなら門司港を候補にしてみよう。古き良き日本の技、バナナの叩き売りを肌で感じられ、伝統文化への学びを深められる。

門司港バナナ資料室(関門海峡ミュージアム内)

【基本情報】
住所:北九州市門司区西海岸1-3-3
最寄り駅:JR鹿児島本線「門司港駅」徒歩5分
営業時間:10:00〜18:00(シーズンにより変動あり)
定休日:年5日不定休