合理的な江戸の食と雅な思考の京文化

しばしば関東と関西では文化の違いが話題になる。例えばエスカレーターに乗るとき、どちら側に立つか。関西以外では左に立つことが一般的。関西では大阪万博開催の折、阪急電鉄のアナウンスをきっかけに右に立つことが浸透したという。

このように地域によって考え方や生活・文化に違いが出てくるが、「食」について調べてみると、面白いように東西の違いを知ることになる。ここで紹介するのはほんの一部だが、知っておいて損はないだろう。

【7番勝負】同じ名前だけど違うもの

①巻くか、包むか? 「桜餅」

東:小麦粉生地を焼いて巻く!
西:道明寺粉を蒸して餡を包む!

桜餅は関東甲信越と一部の東北で「長命寺」と呼ばれ、小麦粉の生地を薄くのばして焼き、餡を包むクレープタイプが食されている。関西を中心にそれ以外の地域では「道明寺」と呼ばれ、道明寺粉で作られた餅のように粘りがある丸い形をしているのだ。

②ネタvs仕込み! 「寿司(鮨)」

東:その場で握る握り鮨
西:仕込みにこだわる箱鮨

寿司は発酵食の「熟(な)れ鮨」が起源である。17世紀頃、関西で発酵の手間を省き酢で酸味をつけた「早すし」が流行した。これが関西の箱鮨の原型となった。一方、江戸の握り寿司はさらに手間を省いた、いわばファストフードとして進化していったのである。

③酸っぱい? 甘い? 「ところてん」

東:三杯酢をかけてお酒のお供に
西:黒蜜たっぷり3時のおやつ!

ところてんは関東では青海苔と三杯酢をかけ辛子で食す大人の酒肴。一方、関西では黒蜜をかけて食べるため、子供や女性に人気の甘味だ。この違いは江戸時代に砂糖を取り扱う問屋が関西に多かったことに起因し、甘味文化が西で発展したという説がある。

④東西でのこんなに違う「ぜんざい」と「おしるこ」

<ぜんざい>
東:粒あんで汁気ナシ
西:粒あんで汁気アリ

<おしるこ>
東:粒あん・こしあんで汁気アリ
西:こしあんで汁気アリ

「ぜんざい」と「おしるこ」の違いは何か? と質問したら、関東と関西では全く違う答えが返ってくる。詳しくは上の通りなのだが、関東の汁気がないぜんざいは、関西ではあんころ餅に近いものだと理解されている。同じ呼び名で違うものを思い浮かべる代表格かも知れない。ちなみに、ぜんざいの語源は「善哉(ぜんざい・よきかな)」に由来する仏教用語。一休宗純が初めて食べた人だと伝わっている。

⑤込められた願いが違う? 「いなり寿司」

東:五穀豊穣の俵形
西:キツネの耳の三角形

関東のいなりは濃口醤油と砂糖で味付けされ、甘味と塩味が強いしっかり味。関西のいなりは薄口醤油と出汁で味付けされるさっぱりとした味。形も関東ではお稲荷様にお供えする米俵の形で、関西では神使のキツネの耳を象った三角形なのである。

⑥さばき・串打ち・焼き「うなぎの蒲焼き」

東:背開き
西:腹開き

頭を落として背開きにする関東と、腹開きで焼きあがってから頭を落とす関西。焼きの途中で一度「蒸す」関東と、そのまま焼く関西の違いがある。一説によると切腹を連想してしまうため、江戸では腹開きが疎まれたともいわれている。ちなみにもっと昔は、開かずに丸焼きだった!

⑦公家と武家で好みがわかれた「豆腐」

東:木綿豆腐
西:絹ごし豆腐

かたいものを好む江戸の武家社会では「男豆腐」と称された堅い木綿が愛された。やわらかく雅なものを好む関西の公家社会では「女豆腐」と呼ばれる絹ごし豆腐が広く根付いたといわれている。現代では料理に合わせて使い分けているが、当時は豆腐にも東西の好みの違いがあったのだ。

食文化の違いは楽しむものだ!

歴史をたどれば徳川家康が江戸を開拓したことで、東西に食文化の違いが生まれた。江戸は箱根以北が食料や物資の流通経路。必然的に寒い地域の食べ物は味付けが濃くなる。反対に北日本に比べて気候が温暖な関西では、京の雅な文化や思考から、健康に気遣う薄い味付けが定着した。

それぞれの歴史や風土、気候で変わる食文化の違いを楽しみたい。