扉を開けると、目の前には古井戸の底のようなエントランスが現れる。ここが日常世界とバーという非日常の空間を分ける関所のような存在なのだろう。見上げると壁に使われている瓦がライトに照らされていて、まるで魚鱗のようにキラキラと輝いているのが印象的だ。

古い木の看板も粋だ。
エントランスから見上げると、井戸の底に立 っているような錯覚に陥る。

さらに店内へと足を踏み入れると、天井の高さに驚かされる。20席ほどのバーであるが、天井までは4m近くもある。さらに店内の壁にも、瓦が埋め込まれている。その前には武骨な松の木でできたイングリッシュスタイルのバックバーがあり、500種類を超えるウイスキーがずらりと並べられている。「アガミ」のオープンは平成23年(2011)6月だが、前身の「バー潤」は今から約30年前に開店。それを引き継いだ。醸し出される重厚さは、そんな歴史が裏付けているのだ。

バックバーには500種類ほどの酒が並ぶ。

「地域で一番古いバーなので、伝統の良さは守り続けます。同時に、若い人にも親しんでもらいたいです」と語る総支配人の関口輝睦氏。そのためウイスキーの銘柄を揃えるだけでなく、季節の果物をふんだんに使ったオリジナルのフレッシュフルーツカクテルを、常時10種類以上は用意するなどの工夫をしている。

銅賞を獲得した「グロリアスデイズ」(1320円)。
「苺とクリームチーズのフレッシュ フルーツカクテル」(1980円)。

若手バーテンダーの育成・起用もその一環と関口氏。28歳の時、縁あってこの店にやってきた柴田護氏も、関口氏に育てられたひとりだ。

「アガミに来てまだ日が浅い頃でしたが、初めて『横濱インターナショナルカクテルコンペティション2018』に挑戦しました」。そこで銀賞をもらい、その時に考案したカクテルは、今もメニューに加わっている。昨年も別のコンペティションで銅賞に輝いた。まだまだ駆け出しです、と謙遜する柴田氏だが、彼の作るカクテルも味わってみたい。

関口氏(右)と柴田氏。
その人に最適な一杯を常に思い描いている。

【Selected cocktail】Fantastic Voyage~素晴らしき航海

Fantastic Voyage~素晴らしき航海

柴田氏が横濱インターナショナルカクテルコンペティションで銀賞を獲得したカクテル。横浜という土地と自らの処女航海を意識した。ベースは洋梨のウオツカ。爽やかな口当たりが特徴。1320円。

【BAR DATA】
Bar Agami(ばー あがみ)
葛飾区東新小岩1-1-1 トラストビル1F
03-3691-7788
営業時間/18時~翌3時
定休/無休
席数/カウンター8席、テーブル12席
チャージ/500円
アクセス/JR「新小岩駅」より徒歩

文/野田伊豆守 撮影/米屋こうじ