4027北アルプス涸沢カール 山燃える鮮やかな紅葉を目指して

北アルプス涸沢カール 山燃える鮮やかな紅葉を目指して

男の隠れ家編集部
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そそり立つ穂高連峰の岩峰と、絨緞のように織り込まれた目も覚めるような錦秋の色調。そこは、日本屈指の紅葉の名所として知られる北アルプスの涸沢カール。上高地からアプローチするとっておきの秋のトレッキングルートをたっぷりと満喫しよう。
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一度は見てみたい 北アルプス随一の美しい紅葉

「涸沢(からさわ)の紅葉見ずして、穂高を語ることなかれ」とも喩えられるように、涸沢の紅葉は北アルプス随一の美しさを誇る。奥穂高岳や北穂高岳など標高3000m級の穂高連峰に囲まれ、荒々しい岩峰と色鮮やかな紅葉の調和はまさに圧巻。目も覚める大パノラマは、奇跡的ともいえる見事な自然美を描き出している。

なぜ涸沢の紅葉が美しいのか。それはまず、氷河が生み出した“カール(圏谷)”地形と、そこに植生する多彩な低木の落葉樹に起因する。真っ赤に色づくナナカマドや黄金色のダケカンバなどの木々が多く、それも絶妙なバランスで混在しているため、一帯は錦の絨緞に覆いつくされたようになるからだ。

涸沢には涸沢ヒュッテと涸沢小屋の2つの山小屋があり、それぞれのテラスは景色を楽しむ特等席になっている。そんな絶景を求めて、涸沢に向かった。

上高地から梓川のせせらぎを聞きながら横尾へと向かう

カラマツやカツラの木々が少しずつ秋色を帯びてくる上高地の初秋、目指す標高2300m地点の涸沢は早くも色鮮やかな錦秋に彩られる。9月下旬から10月中旬にかけて、そこはまさに紅葉の楽園にイメージチェンジ。見事な涸沢の紅葉。穂高の魅力を語るなら、一度は目にしておきたい光景だろう。

上高地から涸沢まではおよそ16km、約6時間余の行程だ。まずは11km地点の横尾まで梓川の起伏の少ない森林帯を歩いて行く。約1時間ごとに明神、徳沢と山小屋が現れるので、タイミングよく休憩がとれるのもこのルートの特徴。

徳沢は黄葉するハルニレやカツラの木々が多く、10月中旬には“一斉落葉”する樹木が見られることも。秋の朝、霜が下りて太陽が当たると葉が一気に落ちてしまうという。運がよければ秋の一瞬のエンディングショーに出合えるかもしれない。

横尾から始まる本格登山ルート 色づきが増すごとに涸沢が近づく

上高地から約3時間の横尾は、槍ヶ岳、蝶ヶ岳、そして涸沢への分岐点。ここからそれぞれの本格的な登りが始まり、涸沢へは横尾橋を渡るルートに道をとる。ここから涸沢までは3時間余のコースタイム。中間地点の本谷橋までは比較的アップダウンが少ない道で、木々は針葉樹のシタビソやブナなどの木々が目立つようになってくる。見上げると左手に屏風岩(びょうぶいわ)の岩壁が迫力ある姿を見せている。

本谷橋のたもとで渓流を目の前にひと休みしたら、いよいよここからが急な上りの始まりだ。屏風岩の裾を回り込むように高度を上げていくが、危険箇所はほとんどなく道は整備されているので歩きやすい。やがて、木々はダケカンバ、ナナカマド、イタヤカエデなどの灌木帯になり、標高が上がってきたことを実感する。この木々こそが涸沢の紅葉の主役で、登山道をトンネルのように覆っている。登るにつれて鮮やかさを増していく木々。そして、目の前にはカール状の涸沢が見えてくる。

名峰4座が一堂に見渡せる 錦秋の美しきロケーション

3000m級の穂高連峰にぐるりと囲まれた通称“涸沢カール”と呼ばれる絶景スポット。カールとは氷河の浸食によって生まれた椀状の谷のことで、山の斜面をスプーンでえぐったような形状が特徴だ。

見上げた山並みは、右から北穂高岳(標高3106m)、涸沢岳(標高3110m)、奥穂高岳(標高3190m)、前穂高岳(標高3090m)。3000m級の名峰4座が一堂に見渡せる抜群のロケーションはまさに感動的! 

そしてカールの底となる標高約2300mの涸沢には「涸沢ヒュッテ」と「涸沢小屋」の2軒の山小屋が建ち、その間に開放感あふれるテント場が広がっている。紅葉時の週末は山小屋もテント場も多くの登山客で大賑わいだが(なるべく平日がおすすめ)、それを覚悟しても涸沢の紅葉の美しさは圧倒的だ。青空に鮮やかに映えるナナカマドの赤、黄金色に輝くダケカンバ……。終わっていくものの美しさと儚さ。涸沢の秋は訪れる人を魅了してやまない。

(山歩人/高地 梓)

《紅葉情報》
・紅葉の見頃~9月下旬から10月上旬
・アクセス~上高地から徒歩約6時間
・問い合わせ~
 涸沢ヒュッテ☎︎090-9002ー2534
 涸沢小屋☎︎090-2204-1300
※紅葉時期の山小屋は布団1枚で2~3人で寝るほど混雑する

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