美味しいウイスキーが誕生する瞬間、そこには何かしらのエピソードがある。ウイスキーの銘柄によって物語は異なり、中には感動できるものまで存在する。
それらエピソードを1つひとつ理解することで、いままで飲んでいたウイスキーがさらに美味しくなるはずだ。ウイスキー好きの人は、ぜひ本記事で紹介する3つのエピソードを確認してみてほしい。
■エピソード1.ロイヤルロッホナガー
ロイヤルロッホナガーは、スコットランドのある「ロッホナガー蒸留所」でつくられるモルトウイスキーだ。この蒸留所は、1845年に地元の資産家ジョン・ペグが建設した。
蒸留所を設立した3年後、偶然にもヴィクトリア女王が隣のバルモラル城を購入し、夏期に利用する離宮として住むようになった。
創業者であるペグはチャンスだと思い、「一度うちの蒸留所の見学に来ませんか?」という手紙を送った。すると翌日の夕方、ヴィクトリア英国女王一家が蒸留所を訪問。
ペグが蒸留所を案内した数日後、王室御用達を許可する「勅許状」が届いた。それ以来、ロッホナガーは頭に「ロイヤル」を付けて呼ばれるようになり、このことがきっかけで「ロイヤルロッホナガー」に改名したとされている。
ヴィクトリア女王との運命的な出会いが、ロイヤルロッホナガーという名称の由来となっているのだ。
■エピソード2.オーヘントッシャン
伝統製法の3回蒸留によってつくられるオーヘントッシャン。このシングルモルトウイスキーは、スコットランドに位置する「オーヘントッシャン蒸留所」で生産されている。
この蒸留所は、1820年頃にアイルランド移民が建設したとされているが、実際の真意は不明である。ローランド伝統の3回蒸留はアイルランド譲りの可能性もあり、3回蒸留の伝統は創業当初から守られ続けてきた。
そして1845年頃、この蒸留所がたくさんの人を救うエピソードが起こる。隣の国アイルランドで「ジャガイモ飢饉」が社会問題となり、多くの人が食糧難を抱えることになった。
この社会問題により、多くの人たちがアメリカやイングランド、さらには地理的に近いスコットランドに亡命した。その際、オーヘントッシャン蒸留所は多くのアイルランド人を雇用し、難民たちに職を与えて命を救ったとされている。
■エピソード3.グレンファークラス
グレンファークラスは、スコットランドのバリンダロックに位置する「グレンファークラス蒸留所」でつくられている。シェリー樽熟成のモルトウイスキーにこだわっており、蒸留所は「グラント家」によって運営されている。
いまでこそ家族経営をする蒸留所として有名なのだが、実は一度だけ親族以外の人と経営を共にした時期がある。1890年代、ブレンダーのパッチソン・エルダーと共同経営を行うが、ウイスキー不況の影響もあり、1898年に倒産してしまった。
この出来事を境に「もう2度と親族以外の人と共同経営をしない」と決心し、そこから家族経営に力を入れるようになる。
しかし、1969年にグレンファークラスは、大手ブレンデッド会社のモルトから外されてしまった。このピンチを逆手にとり、シングルモルト用のストックを増やし、自社のみで勝負できるウイスキーへのこだわりを強く固めた。
これらの出来事があったからこそ、現在のグレンファークラスがあるとも言える。
■まとめ
本記事では、ウイスキーに関する3つのエピソードを紹介した。
普段何気なく飲んでいるウイスキーには、数々のエピソードが隠されている。中には、これまでの苦難を乗り越えてきた逸話や、感動の誕生秘話があるなど、銘柄によってさまざまだ。
今後ウイスキーを飲む際には、誕生秘話やエピソードを意識した上で味わってみてほしい。ウイスキーをさらに楽しむことができるはずだ。
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