64441クラシックな「ベスパ」がおしゃれな電動バイクとして蘇る! ラポ・エルカンのガレージ・イタリアが予約受付を開始

クラシックな「ベスパ」がおしゃれな電動バイクとして蘇る! ラポ・エルカンのガレージ・イタリアが予約受付を開始

男の隠れ家編集部
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6月にイタリア北部の都市ミラノで開催されたデザインの祭典「ミラノ・デザイン・ウィーク 2022」で、1台のクラシックなスクーターが発表された。

この美しく仕上げられた「ベスパ50スペシャル」は、Garage Italia(ガレージ・イタリア)という会社がレストアとカスタマイズを施した上で、完全な電気駆動に改造したもの。

しかも、これはショーに向けて特別に製作された一品物ではない。同社はこの電動スクーターを注文に応じて製作し、一般に販売する予定だという。

50ccエンジンを大幅に上回る電動パワー

ベスパ50スペシャルとは、イタリアの二輪車メーカーであるピアッジオが、1969年から82年まで生産していた小型スクーター。名前の通り排気量50ccの2ストロークエンジンを搭載している、いわゆる「原付(原動機付自転車)」だが、かつてイタリアでは14歳になれば免許不要・ナンバープレート不要で乗ることができた。

丸みを帯びたスタイルは、コラディーノ・ダスカニオがデザインした初期のベスパの流麗なラインを受け継ぐが、この時代の「スペシャル」はハンドルバーに備わる角型のヘッドランプが特徴だ。

ちなみにダスカニオは、世界で初めてヘリコプターの実用化に成功した航空エンジニアだった。ベスパの生みの親はヘリコプターの父でもあるのだ。

フランチェスコ・アックルシオ広場にある本社で発表されたガレージ・イタリアの電動ベスパは、「50 Special-e」という名称が、控えめにオリジナルからの変更点を主張する。

このモデルのために専用に開発された電動化キットは、内燃エンジンに代わってベスパの特徴的なサイドコンパートメントに収められており、電動モーターは最高出力7kW(約9.5ps)を発揮。実にオリジナルの50ccエンジンを3倍以上も上回るハイパワーだ。一度の満充電で走行可能な距離は100kmと発表されている。

バッテリーはシートの下に

なお、ベスパには現在、メーカー自ら開発・販売する「エレットリカ」という電動モデルも存在するが、こちらのモーターは最高出力4kWに留まることもあり、ガレージ・イタリアは50 Special-eについて「現在市場にある最新技術を凌ぐ性能を記録する」と謳っている。

こちらは現行モデルのベスパ エレットリカ

2人乗り用シートも選択可能

外観はオリジナルを維持しつつ、ガレージ・イタリアらしいセンスを加味した仕上がりになっている。前後にオプションでラゲッジキャリアが装着できるほか、ヘッドランプに合わせて角型のショートステムミラーを装備。

船舶用の新素材で張り替えられたシートは、オリジナルに準じた「ハンプバック(猫背)」と呼ばれる1人乗り以外に、「ドルチェ・ヴィータ(甘い生活)」と名付けられた2人乗り用も選択できる。

50ccエンジンより大幅に出力もアップしているから、アン王女と一緒に乗ってローマの街を駆け巡ることも容易いはずだ。

「ラッテメンタ(ミント風味のミルクキャンディを意味する)」と名付けられた淡いグリーンのペイントは、イタリアの塗料メーカーであるR-Mと共同で開発されたもの。ガレージ・イタリアの車両は1台ずつ注文製作されるため、他にもアイボリーやブラック、水色、赤、オレンジ、ピンクなど、様々な色から選ぶことができる。同色で仕上げられたヘルメットも用意されている。

ラポ・エルカンのベスパに対する想い

2018年よりガレージ・イタリアは、イタリアのデザイン・アイコンを現代に蘇らせるというミッションの下、「フィアット 500ジョリー」や「フィアット ムルティプラ」など、数々の歴史的なイタリア車を電動化してきたが、二輪車は今回のベスパが初めて。これについて、同社の創業者であるラポ・エルカンは、次のように語っている。

「私にとってベスパは、スタイルとデザインのアイコンというだけではありません。実際、私は1990年代にピアッジオの社長だった私のいとこ、ジョバンニ・アルベルト・アニェッリに対する深い愛情によって、同社と結びついているのです。この作品は彼に捧げます」

「また、私は若い頃の思い出によってもこの会社とつながっています。17歳の時、私はポンテデーラ(ピアッジオの本拠地)で働く労働者でした」

今年45歳になるラポ・エルカン(ちなみに独身)は、イタリアの経済・社会に絶大な影響力を持っていたフィアット・グループの元会長、故ジャンニ・アニェッリの孫であり、かつてはフェラーリの次期社長候補とも噂されていた人物。現在はファッション・ブランド「Italia Independent(イタリア・インディペンデント)」の会長も務める。

名門一族のセレブリティとして若い頃から注目を浴び、ファッショニスタとしても知られる同氏にも、一族の所有する会社でいち労働者として働いていた修行時代があったらしい。

ピアッジオは1964年にアニェッリ家が買収。同社の社長を務めたジョバンニ・アルベルトは、ジャンニ・アニェッリ氏の後継者として指名され、一族と企業グループを率いる将来を期待されていたが、癌のため1997年に33歳で亡くなっている。

現在予約受付中

ガレージ・イタリアは現在、[email protected]というアドレスから、ベスパ50 Special-eの予約を受け付けている。価格は明示されていないものの、公式サイトにはコンフィギュレーターが用意されており、カラーやオプションをCG画面で試してみることができる。

コンフィギュレーターの画面

ちなみに「ベスパ」という名称は、イタリア語で「蜂」という意味。第二次世界大戦後、当時のピアッジオ社長だったEnrico Piaggio(エンリコ・ピアッジオ)が、このスクーターの試作品を見て、その丸みを帯びたお尻と、ブンブン唸る2ストロークエンジンの音から「まるで蜂みたいだ!」と叫んだことから名付けられたといわれている。

羽音のような燃焼音に代わりに、微かな電磁音を発してなめらかに加速するガレージ・イタリアのベスパ50 Special-eを見たら、エンリコは何て言うだろうか。

「男の隠れ家デジタル」では、今後も編集部の視点からピックアップした電気自動車/電動バイクや、それにまつわる物語を紹介していく予定だ。ぜひ今後の情報にも期待してほしい。

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