64977銀座の地下で歴史に埋もれたクラフトビールを作る秘密の醸造所があった

銀座の地下で歴史に埋もれたクラフトビールを作る秘密の醸造所があった

男の隠れ家編集部
編集部
目次

東京にある個性的な地ビールブルワリーを訪問。醸造所を見学しながら、ビール造りにかける思いをインタビュー。併設されたレストランや売店にも立ち寄り、そのブルワリーならではの地ビールの魅力を探る。

今回は、都心の真ん中でビールを造る「銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャー」を訪れた。

バーの最深部、レンガ壁の奥に醸造所がある

■銀座で最高のものづくりをするために

銀座8丁目の地下に広がるブルワリーバー

銀座といえば、今も昔も一流に触れられる場所として、特別な存在感がある。「銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャー」は、クラフトビールを醸造し、それを提供することで、銀座らしさとは何かが追求されていた。

銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーのオープンは2015年になるが、実は1985年に創業し30年もの間、愛された伝説のオーセンティックバー「モンドバー」の後継店にあたる。代表の児玉亮治さんはモンドバー出身のバーテンダー。モンドバーの閉店が決まった折、新しく銀座でやるべきことを考え、ブルワリー併設のバーを提案した。

代表の児玉亮治さん

「銀座はいいサービスをすれば評価される街です。でも、それだけじゃなくて銀座でものづくりを復活させたかった。私はウイスキーが専門でしたが、都心でもできる酒といえばクラフトビール。銀座でやるからには、トップのものづくりをして、よいサービスとともに提供したい。それをやるのが銀座らしさであり、次世代を見据えて業界を引っ張っていくことにつながると思いました」

3人のセッションは「時にビートルズのようになれるかも」と児玉さん

ビール造りをする上では、さまざまな意見を取り入れて最高のものを造り出したいとして、小規模ブルワリーながらスタッフは3人。児玉さんのほか、醸造長の小野寺洋一さん、新人の児嶋勇輝さんでセッションしながら醸造が行われる。

「小野寺さんは伝統的なドイツ系、私はIPAやサワー系、児嶋くんはジューシーで飲みやすいのが好み。お互いの得意分野を活かしながら、ものづくりをしています。そこに銀座のバーテンダーらしさも加えるのがうち流。バーテンダーは目の前のお客様に合わせて、ジントニックのレシピを変えなければ一流ではありません。ビール造りでも土壇場で最高のものを造るために変更する決断も。最後まで気を抜かない完成度を大切にしています。実際に、醸造長は仕込み終わったあと、店でお客様の反応を見ていることもありますし、もちろん私もサービスしながらしっかり反応を見ています」

そして、新しいものを取り入れて、積み重ねて店の力にしていくのも銀座らしさ。今年5月には店内をリニューアルし、キッチンとテーブル席を広くし、レストランとしても利用できるようにした。

醸造所の設備にも、煮沸槽、発酵槽、貯蔵槽が一つになった「ビアック」というカナダから輸入した画期的なタンクを導入。圧倒的に衛生管理がしやすく美味しさに集中できるようになったという。

これからも、銀座らしい良質な歴史を重ねながら、ビールが醸造されることが期待できそうだ。

■歴史に埋もれたビールと週替わりの限定ビールをラインアップ

「オリジン」はハンドホップで仕上げ、リアルエールスタイルで提供

銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーでは、常時9種類のオリジナルビールがタップにつながれ、提供されている。定番として必ず飲みたい目玉ビールが「オリジン」。イギリスのホップを使用した「リアルエール」スタイルのビール。無濾過・非加熱で仕上げられたあと、炭酸ガスを注入せず、ハンドホップで空気を含ませて泡を立たせて提供される。

炭酸ガスで泡立てるのではなく、ハンドホップで自然に空気と混ざることでボリュームのある泡が立ち、香り豊かなビールとなる。同時に炭酸ガス特有の飲みにくさはなくなる。そのため、しっかりホップが効いて苦味がありながら風味豊か。ビール本来の極上の味わいが体験できる。

ハンドホップで泡をたっぷり含ませた「オリジン」

もう一つ味わってほしい定番が「ビエール・ド・ギャルド」。こちらはフランス北部で冬から春にかけて造られる貯蔵ビールがルーツ。現在ではあまり造られなくなった歴史に埋もれたビールでもあり、それを復活させようと提供されている。

ビエール・ド・ギャルドは伝統的に家庭によってスタイルはさまざまだが、銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーではフランボワーズの香りがするサワー系の味わいが特徴。貴重な味わいを試してほしい。

定番以外の限定ビールは1週間ごとに変わるほど、バラエティ豊か。醸造に使われている新タンクのビアックは、75Lと小規模なので、次々に新しい味が生み出されている。実際に、1か月に10回も仕込みが行われ、そのなかには夏みかんや柚子など、柑橘の副原料を使ったものも。ときには、常連の庭で採れた無農薬の夏みかんが使用されることもあるという。

銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーは、ビールの古きよきスタイルにも、新しいスタイルにも出会える店。常に発見がもたらされるラインナップとなっている。

■無濾過・無殺菌のクラフトビールとナチュラルワインを提供

2022年5月にリニューアルされた店内

実際に店を訪れたら、どんな体験ができるかをご案内しよう。銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーは、地下を降りて入ってすぐにバーとレストランフロアになっており、実は醸造所があるのは奥側になる。必然的に、ビール体験がこの店を楽しむ第一歩。今年5月のリニューアルで、壁は鮮やかなブルーからシックなブルーに変わり、店内のキッチンやレストランスペースが充実した。

少人数でビールタップを前にビールを堪能したい人はカウンター、3人以上でゆっくりと食事をしたい人はテーブル席がおすすめだ。ビール好きな人は、通っているうちに醸造所へ案内されるので、ぜひ常連になりたい。

左から「オリジン」1,500円、「ニューイングランドIPA」800円、ナチュラルワイン1,000円〜

銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーで造られるのは、無濾過・無殺菌の酵母が生きたビール、かつ小規模醸造となっている。香り高いビールは、ワイングラスでの提供も選べる。

そんなクラフトビールと親和性が高い飲み物として、ナチュラルワインも充実。常時6種類のグラスワインが用意されている。そのため、ビールを3、4杯飲んだあとにナチュラルワインをいただくという楽しみ方もできる。

「黒毛ウルグアイ牛のサーロインステーキ」300g 6,000円(キャンペーン中につき4,800円で提供中)

クラフトビールとナチュラルワインの両方に合う料理というのが、銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーの食事メニューのコンセプト。ソーセージ盛り合わせやフライドポテトなどの定番料理のほか、フレンチ出身のシェフによるパテ・ド・カンパーニュやキッシュ・ロレーヌなどのフランス料理もある。

なかでも最もおすすめなのが「黒毛ウルグアイ牛のサーロインステーキ」。一人当たりの牛肉の消費量がNo.1の南米ウルグアイから仕入れた肉を丁寧にロースト。やわらかく火が入るよう、火を入れて休ませてを繰り返し、30分かけて仕上げられている。苦味のある「オリジン」や旨味のあるナチュラルワインとの相性は抜群で、300gあるのに一人でぺろりと食べる紳士淑女がたくさんいるほど、自慢のペアリングだ。

銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャーは、銀座の正統派バーの系譜を受け継ぎ、クラフトビールでその世界観をつくり出していた。一流にふさわしい銀座らしいクラフトビールを飲みたくなったら、ぜひ訪れてみてほしい。

【銀座醸造所ブリューインバー&ネイチャー】
住所:東京都中央区銀座8-11-12 B1F
TEL:03-3574-7004
営業時間:月〜金16:00〜23:00、土14:00〜22:00
定休日:日曜・祝日
https://brewinbar.com

取材・文:岡本のぞみ(verb)、撮影:山田大輔

編集部
編集部

いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

Back number

バックナンバー
More
もっと見る