49482世界2大大会で最高賞を受賞! 東京発魅惑のクラフトジンをテイスティング

世界2大大会で最高賞を受賞! 東京発魅惑のクラフトジンをテイスティング

男の隠れ家編集部
編集部
目次

東京にクラフトジンの蒸溜所がオープン⁉ そして驚くことにIWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティションInternational Wine and Spirit Competition)2021で最高金賞受賞という快挙を成し遂げたという。酒粕を原料に使うというユニークでエシカルな手法で造られた東京発のクラフトジンの真価とは。百聞は一飲にしかず、代表的銘柄をじっくりと味わってみた。

まずはジンの全ラインナップ、香りの体験もできる直営ショップへ

東京・蔵前は、“ものづくりの街”として発展してきた歴史がある。最近では、新世代の生産者やアーティストが集い、ものづくりを通して独自の文化を発信する拠点にもなっている。

7月6日にオープンした、「東京リバーサイド蒸溜所」もその1つ。ここは酒粕など、廃棄されるはずだった原料を使った世界初の再生型蒸溜所なのだ。新時代のジンやウイスキーが製造·販売され、バーとしても利用できるという。

一体、どんな酒造りが行われているのか? そしてその味わいは如何に? 東京リバーサイド蒸溜所を訪れ、運営するエシカル・スピリッツ株式会社のCEO山本祐也さんに案内してもらった。

左からLAST エピソード0-モデスト-、LAST エピソード0-エレガント-、REVIVE from BEER、REVIVE from NINJA、カカオ・エシーク

東京リバーサイド蒸溜所は、ビル1棟すべてがエシカルスピリッツの建物。1Fに直営ショップと蒸溜所があり、2Fがバーダイニング、3Fがオフィス、屋上がボタニカルガーデンとなっている。このうち、一般開放されているのは直営ショップとバーダイニング「Stage」。直営ショップでは、クラフトジンや限定グッズが購入できる。なかには、ここでしか買えない限定品も用意されているという。

直営ショップでは香水瓶にラインナップが入れられ、購入する前に香りを試すことができる

「ショップでは、ジンの香りづけに使用される、ボタニカルについての説明やジンの香りも楽しんでいただけます。現在はボトル販売が中心ですが、路面スペースを活かして、グラスに入れてジントニックでのテイクアウト販売も考えています。直営ショップでは、購入のみですが、蒸溜所が奥にあってガラス張りなので、ここから見学することもできます。蒸溜機が稼働している日は、香りも漂ってくるので、おもしろいと思います」(山本祐也さん、以下同)

酒粕を原料に唯一無二のベースリカーを

ジンなどを蒸溜するポットスチル

取材に訪れた日は正式オープン前だったこともあり、直営店の奥にある蒸溜所を特別に案内してもらった。中に入ると、真新しく光り輝く銅製のポットスチルがコンパクトに並べられている。

「以前は委託してスピリッツを製造していましたが、やはり自分たちの蒸溜所を持ちたいということで、ものづくりの匂いのする蔵前周辺で物件を探しました。ジンなどの蒸溜酒は、アルコールを含んだ蒸気に香りをつけるため、ポットスチルにはある程度の高さが必要です。この建物ももとは印刷所の持ち物だったので、うってつけの物件でした。ジンを製造するには、ボタニカルの手配などに時間を要しますが、蒸溜するだけなら、1日100本程度は造れます」

エシカル·スピリッツ株式会社のCEO山本祐也さん

それにしても、「酒粕などの廃棄原料を使った世界で初めての再生型蒸溜所」というコンセプトが気になる。どうして、そのような蒸溜所やスピリッツを造ろうと思ったのだろうか?

「元々、私自身が日本酒の小売を手がけていて、酒蔵さんとお付き合いする中で、たくさんの酒粕が廃棄されている現実を知りました。現代の日本酒は濾過の精度も高いことから、原料の3分の1は酒粕になってしまう。大手の酒蔵であれば、それを流通にのせて販売することもできますが、中小の蔵ではそんなことはできません。万一、できたとしても、日本酒を飲むペースで粕汁や甘酒は飲む習慣はありませんよね。酒粕は、日本酒と同じ原料だから品質も高い。これを利用して、価値のあるものを造ってみたいと思いました」

LAST エピソード0-エレガント- 375ml、200ml

こうして、酒粕をベースリカーにしたジンの開発が進められた。クラフトジンは現在、最も注目を集めるお酒。ウイスキーと違い、熟成期間も短く、伝統に縛られない表現が30代を中心に受けている。多くのジンは、ホワイトリカーのような無色透明で香りやクセがないスピリッツをベースに、ジュニパーベリーなどのボタニカルで香りづけされている。しかし、こちらではベースに酒粕を使った粕取り焼酎が使われる。それにより、どのような味わいになるのだろうか?

「日本酒には吟醸香に代表されるようなメロンやバナナの香りがするものもあれば、もう少し熟成感のある香ばしいものもあります。日本酒によって特徴はさまざまですが、ともかくベースを酒粕にするということは、そういう特徴がジンに加わることになります。通常のジンが真っ白のキャンバスに絵を描くとしたら、当社のジンはマーブル状のものに色をのせて行くようなもの。日本酒の特徴によって、唯一無二の味わいになります」

世界を驚かせたクラフトジン「銘柄」「銘柄」をテイスティング

左/カカオ・エシーク 右/LAST エピソード0-エレガント-

世界で唯一無二の味と聞くと、飲んでみずにはいられない。さっそく、2Fにあるバー&ダイニング「Stage」でジンをいただくことにした。おすすめは、酒粕をベースにした「LAST エピソード0-エレガント-」、カカオジン「カカオ・シーク」の2種類だ。それぞれ、どのようなジンなのだろうか?

バー&ダイニング「Stage」ではすべてのラインナップを楽しむことができる

「『LAST エピソード0-エレガント-』は、鳥取県の酒蔵千代むすび酒造の酒粕を使っています。日本でジンを造るというと、山椒や桜を使って和ものに仕上げようとしがちですよね。そうではなくて世界を代表するジンメーカーになるというのが私たちの目的です。エレガントは、小アジアのボタニカルガーデンのイメージ。東洋と西洋がミックスされているような神秘的なイメージのジンになっています。

もう1つの「カカオ・エシーク」は、廃棄されるはずだったカカオの皮・ハスクを使っています。チョコレートの香りがするので、チョコレートと一緒に味わったり、オレンジジュースを加えて飲むのがおすすめです」

LAST エピソード0-エレガント-

『LAST エピソード0-エレガント-』375ml  ¥2,475(税込)

千代むすび酒造の粕取り焼酎をベースに、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、ハイビスカス、ピンクペッパー、ラベンダー、カルダモン、ジンジャー、シナモン、ライムリーフ、花椒の10種のボタニカルで香りづけしたクラフトジン。

華やかさと爽やかさが混じる、複雑でエキゾチックな雰囲気のジン。ラベンダーやハイビスカスの香り袋をかいだときのような花の香りにショウガやコリアンダーのような爽快で辛みのあるスパイシーさが加わる。トップもアフターも強い、インパクトのある味わいで余韻もふくよか。ジンに酒粕由来の厚みがあるため、さっぱりした炭酸水で割るよりは、トニックウォーターで割るのがおすすめ。

カカオ・エシーク

「カカオ・エシーク」375ml  ¥4,950

秋田県の飛良泉の吟醸粕取り焼酎を原酒に、ジュニパーベリーと高品質カカオの香気成分を蒸溜したクラフトジン。

パイナップルやハーブの香り。口に含むと、コーヒーリキュールやチョコレートのような甘みを感じるが、後味はハーバルでビターな苦味が残る。トニックウォーターでは苦味が増すため、炭酸水がベター。オレンジを加えてカクテルにするのも○。甘苦い雰囲気がお好みの方におすすめ。

廃棄される原料をポジティブに生まれ変わらせていきたい

エシカル·スピリッツのラインナップ

2つのジンをテイスティングしてみたが、いずれもインパクトのある風味を持ち、ジントニックで軽快に飲むというよりは、じっくりと味わいたいものだった。実際にも、早くも世界2大コンクールといわれる大会で高い評価を獲得。

「LASTエピソード0-エレガント-」がイギリスの「IWSC2021」が最高賞である「ゴールドアウトスタンディング」を受賞。ウイスキー業界の権威あるコンクール「WWA」のジン部門「ワールドジンアワード2021」で国別の最高賞を受賞するなど、快挙をもたらしている。こうした評価を受け、山本さんはどのような境地を目指しているのだろうか?

「私たちが目指しているのは、エシカルやサスティナブルとおいしさの両立です。コカ·コーラのような定番になるくらい、一番おいしい飲み物になりたいと思っています。そうすると、廃棄予定だったさまざまな原料が再生されようになり、ポジティブに生まれ変わります。現在は酒粕が中心ですが、廃棄予定のビールやワインなど可能性は無限大です。おいしくて社会的にもポジティブといわれる循環を広げていきたいですね」

東京リバーサイド蒸溜所のクラフトジンは、新しい発見とおいしさをもたらしてくれた。2Fにあるバーアンドダイニングでは、オリジナルの料理やカクテルも用意されている。出かけてみると、「エシカル」「サステナブル」という言葉に気負うことなく、未知なるジンとの出会いが待っているだろう。

取材·文=岡本のぞみ(verb)

エシカルブルーのテントが目印の東京リバーサイド蒸溜所。直営ショップは、タバコ屋のようにふらりと立ち寄って購入することができる

取材協力:東京リバーサイド蒸溜所
台東区蔵前3-9-3
直営ショップ 13:00〜19:00  月曜定休
バーアンドダイニングStage  18:00~23:00 月曜定休
03-6427-0009
*時節柄、営業時間が変更になっている場合があります。お出かけの前にお電話でご確認ください。

編集部
編集部

いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

Back number

バックナンバー
More
もっと見る