5215お忍びで二人で過ごしたい温泉宿 宮城県・蔵王 遠刈田温泉 だいこんの花

お忍びで二人で過ごしたい温泉宿 宮城県・蔵王 遠刈田温泉 だいこんの花

男の隠れ家編集部
編集部
「過ぎ行く日常を振り切って、たまには誰にも気兼ねせず、ゆっくりとふたりの時間を過ごしたい」。そんな望みを叶える宿、宮城蔵王の「だいこんの花」。この場所なら、きっといつも言えない感謝の気持ちも素直に伝えることができるのかもしれない。
目次

広大な森に点在する離れで大人の里山逗留を愉しむ

森の木漏れ日が部屋の中まで長く差し込んでくる晩秋の午後。テラスの上に映る葉陰が風に大きく揺れたかと思うと、黄色や赤に色づいた葉がはらはらと乾いた音を立てて舞い降りてくる。

葉は湯船の中にも浮かび、湯口から滔々(とうとう)と流れ出る湯と戯れている。温泉は無色透明で滑らか。浮かぶ葉をそっと摘んで陽の光に透かしてみると、きらきらと宝石のよう輝いた。部屋のウッドテラスに設えられている木の香ゆかしい露天風呂。雑木林の森が目の前に広がり、木々の間からは、蔵王の山並みが見え隠れしている。

山向かいの部屋には刈田岳、びょうぶ岳、えぼし岳など蔵王連峰の山々にちなんだ名前を命名。滞在したのはそのなかでも露天風呂付きメゾネットスイートの部屋だった。

誰にも気兼ねすることなく、ふたりだけでゆっくりたっぷり温泉三昧。その思いを満たす贅沢で広々とした空間。久しぶりにそんな旅がしたくて、夫がこっそり宿をとっておいてくれた、宮城蔵王(ざおう)の山麓、遠刈田(とおがった)温泉にある「温泉山荘 だいこんの花」。

 共同浴場や土産店などが並ぶ温泉街の中心部から車で10 分も走ると、あたりの景色はすっかり静かな山あいへ。宿はその森に溶け込むように佇んでいる。

1万坪もの広大な敷地に、自然林や小川をそのまま生かして造られた18 棟の離れと4つの貸切露天風呂などがゆったりと点在。

季節の野菜が実る自家農園や星を眺める縁台などもあり、野鳥はもちろん、時にはリスやカモシカなどの動物たちが姿を見せることもあるという。まさに日常の喧噪から離れ、のどかな里山にいるような風情。駐車場から玄関ヘと誘うアプローチにも森の小径が続き、色付いた木々の出迎えに早くも気持ちがときめくのを覚える。

宿が掲げるその極上のおもてなしは、小径を 歩いてたどり着いた母屋から始まる。隠れ家のような控えめな玄関の引き戸が開くと、そこには思わず目を見張る明るく洗練されたフロントがあった。

モダンな造りとはいえ、吹き抜けの天井に組まれた樹齢180年の金山杉の太い梁が存在感を放ち、囲炉裏のあるロビーは、農家風の温かな趣を醸し出している。さらに、食後酒やモーニングコーヒーをサービスするカウンター、ライブラリー、食事のダイニングも建物内にあるなど、母屋が宿の中心棟になっている。

まずはここでチェックインをしながら館内の説明を受ける。それによると、15 時半から、母屋の隣の「どんぐりコテージ」で秋限定の芋煮と生ビールのサービスがあるという。季節によって内容は変わり、夏はかき氷、冬は甘酒などが振る舞われるそうだ。

さらに、ほかにも様々な無料サービスがあり、湯上がり処「小とりサロン」に用意されている飲み物やお菓子、囲炉裏端での夜食、バータイムのワインやウイスキーなどの提供、朝の森のコーヒータイム……などなど、まさに至れり尽くせり。ふたりっきりでずっと部屋にこもって過ごすのもいいけれど、この宿ならではの細やかなもてなしを滞在中たっぷり堪能するのも楽しいだろう。

「ここは大人が里山逗留を愉しむひとつの村のような宿でもあるんです」と笑顔を見せるスタッフ。ゆえに12 歳以下の利用はお断りしているという。

水の音に耳を傾けながら森の中の露天風呂に浸る

梢を行き交う小鳥や木々のささやきを耳にしながら通路を歩き、スタッフに案内されて客室へ。先述したようにわずか18室の離れはそれぞれ異なった間取りになっており、無垢の木肌を生かした清々しいコテージ風の造り。平均50㎡以上の客室には吹き抜けの天井と梁が施され、開放感にあふれている。露天風呂付きは14棟。そのうちメゾネットスイートは2棟ある。

滞在した部屋の間取りは、1階にリビングルームとウッドテラスに設えられた露天風呂。2階は寝室と展望バルコニーがあり、景色を眺めながらベッドに横たわることができる。

部屋の露天風呂は源泉かけ流しだが、さらに敷地内には24 時間入浴できる男女別の野天風呂「ぎんやんま」をはじめ4つの貸切露天風呂があり、こちらも全てが源泉かけ流しだ。予約は不要で空いていれば自由に入浴でき、なかでも奥まった木立の中に造られた「雪待ち」と「通り雨」は特に野趣にあふれている。

ふたりで入るのにちょうどいい大きさの湯船と、少し茶色を帯びたお湯。脱衣場で浴衣を解いてそっと体を湯に滑り込ませると、ざぁーと音を立てて湯が湯船の縁(ふち)を越えて流れ出ていった。耳に届く濁川の渓流音と、鼻をくすぐる森の香り。湯面にゆらゆらと揺れる木漏れ日が白い湯気を際立たせ、神々しいような湯浴みの時間を演出してくれていた。

地元野菜たっぷりの夕食の後は二人きりでバータイム

温泉を愉しんだ後は、お待ちかねの夕食である。ダイニングの入口には手描きの看板があり、そこに記されていたのは、〝本日の特選野菜〟、あけび、新ごぼう、秋人参などの文字。「嬉し、里山料理」と銘打った月替わりの料理は、自家農園と地元で採れた野菜を〝主役〟に、肉や魚は〝名脇役〟としてアレンジした創作コースだ。

料理長自らが旬の野菜を吟味して仕入れ、それらの持ち味を生かした組み合わせや調理法に腐心。朝食に出される種類豊富なサラダや、手作りジュースなども宿の自慢だ。

この日の夕食メニューは彩り豊かな季節の前菜盛り合わせから始まり、新ごぼうのポタージュスープ、三陸産穴子と蕪(かぶ)の焚き合せ、甘鯛ポテトサラダ包み焼きなどが登場。メインは仙台牛サーロインステーキで、秋人参と玉葱のローストが添えられていた。全てに野菜を使った逸品揃い。そして料理に合うようチョイスされたロゼ、白、赤のグラスワイン3種「ワインマリアージュ」をオーダーする。それぞれの一皿を絶妙に引き立てるワインの味わい。

「こうやってふたりでグラスを傾けるのは、ずいぶん久しぶりじゃないかしら」と私が言うと、夫は頬を緩めた。

夕食後は母屋のロビーでデザートをいただき、さらにそのままバータイムへ。夫はグラスに注いだスコッチウイスキーを見つめながら、「明日は蔵王の山頂付近まで足を延ばしてみようか……」とひと言。こみ上げる幸せの想いに改めてありがとうの言葉を添え、もう一度ふたりで乾杯した。

温泉山荘 だいこんの花
宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉北山21-7
☎0570-04-1155(受付時間10:00~17:00) 
宿泊料/1泊2食付き3万9960円~(2名1室の場合の1人分・入湯税別)
カード/使用可 客室/18棟 チェックイン・アウト/15:00・11:00 風呂/男女別大浴場各1、貸切露天風呂4、14棟が露天風呂付き 泉質/ナトリウム塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉(低張性中性高温泉) 施設/エステルーム、熔岩浴 駐車場/18台 アクセス/(電車)東北新幹線「白石蔵王駅」より乗り合いタクシーで約30分。(車)東北自動車道「白石IC」または「村田IC」より約30分。山形自動車道「川崎IC」より約15分


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いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

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