5238二人で阿蘇のカルデラを望む温泉宿 大分県・九重 瀬の本温泉 星野リゾート 界 阿蘇

二人で阿蘇のカルデラを望む温泉宿 大分県・九重 瀬の本温泉 星野リゾート 界 阿蘇

男の隠れ家編集部
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阿蘇のカルデラを一望できる宿「界 阿蘇」。普段の旅行とは少し違った「ふたりの時間」を過ごせる演出がここにはある。自然に触れ、五感を刺激する特別なときをこの場所で味わおう。
目次

広やかな阿蘇の絶景を美しい離れで楽しむ

広大なカルデラの大地が、目の前に広がっている。正面には根子(ねこ)岳、高岳、中岳、杵島(きしま)岳、烏帽子(えぼし)岳の阿蘇五岳が一望にできる。

「こんなに阿蘇の山とカルデラが一望できる宿なんて、めったにないんじゃないかなぁ」

そう妻が言うように、確かにこれほどの絶景を誇る温泉宿は阿蘇近辺でも多くはない。ここは、阿蘇のカルデラをぐるりと囲む外輪山の北側、くじゅう連山を背後に佇む「星野リゾート 界 阿蘇」。

玄関から館内へ入った瞬間、正面の窓から先の絶景に迎えられたのだった。この風景こそがもてなし、ということだろう。8000坪という敷地を有しつつも、パブリックスペースは玄関ロビーに併設した暖炉のあるライブラリー空間とその先の(いま私たちがいる)テラス、床から天井まで取られたガラス窓から阿蘇の絶景が堪能できるダイニングのみだという。

「もうひとつ、カルデラバーっていうのがこの下の1階にあるらしいよ。食事の前にそこで面白い体験プログラムがあるそうだから、後で行ってみようよ」

テラスで大きく深呼吸した我々は、スタッフの案内に続いてそこから階段を下り、雑木林の中に続く小道を下ってゆく。テラスからはほとんど建物が見えなかったが、12棟の露天風呂付き離れが点在しているそうだ。鹿も狐も穴熊も猿もいるんですよと、スタッフが脅かすように笑う。

私たちの棟は和洋室タイプ。足を踏み入れた途端、思わずふたりして歓声を上げた。石と木の温もりあふれるシンプルな空間美はも ちろん、森に張り出したテラスから見る木々の美しさ。そこに透き通った温泉が満ちる露天風呂と、ローテーブルが置かれた湯上がり用のスペースが用意されていた。

着いて早々、露天風呂に浸かる。無色透明の湯に身を浸し森を渡る風の音を聞きながら、目を閉じる。自然の中で感じる開放感が、旅の疲れを解き放ってくれるようだ。

宿に散りばめられたもう一つの阿蘇を体感

星野リゾートには「界」の名を持つ温泉リゾートが全国に15 カ所ある。それぞれにその土地の文化や風土を盛り込んだ「ご当地部屋」があるそうで、阿蘇の場合は地元の草木染工房が手がけた優しい風合いの草木染のクッションや、阿蘇の溶岩を含む土で焼いた茶器、小国杉のテーブルや阿蘇名産のい草のマット、日田の杉下駄といった具合である。

「このレモンイエローのクッションカバー、ススキで染められたものだって。素敵だね」

そんな土地の美にあふれた居室で、我々はそれぞれの時間を過ごした。晩秋の森の色に体まで染まりそうな湯浴みを愉しみ、ライブラリーから借りてきた写真集に見入り……。気づけば、夕方近く。例のカルデラバーに赴くと、阿蘇のことはなんでも聞いてください、とニコニコ笑うスタッフが「マイカルデラ作り」を指南してくれるという。マイカルデラ作り?と首をかしげていると「カルデラがどうやってできたのかを、これから小麦粉とこの風船を使って疑似体験していただきます」という。

オリジナルカクテルの焼酎モヒートをいただきつつ、まずは膨らませた赤い風船を箱に入った小麦粉に埋めて〝阿蘇山〟を作る。風船はマグマ溜(だまり)の代わりだという。噴火するとこのマグマがあった箇所が沈み込み、カルデラとなるそうだ。竹串でゆっくりと風船を刺して「噴火」させると……風船が弾け、小麦粉がカルデラと同じ形に沈んでいく!  すごい、なるほど、とふたりで興奮しているうちに、もう夕食の時間。階上のダイニングで、これからさらなる土地の幸に迎えられるのだ。

森に溶け込む露天風呂とオリジナルな美食を

 「楽しいね。知らないことや素敵なものとたくさん出会えて! 」そうだねと頷き合いながら、運ばれてくる料理を待つ。

この日予約しておいたのは、特別会席のコース。まず供されたのは、熊本の郷土料理である豆腐の味噌漬け「山うに豆腐」をムースにし、熊本名産のトマトと出汁のジュレを合わせた先付け。そして甘鯛と松茸の椀に続き、ほぅっとため息がもれるほど美しい八寸「宝楽盛り」には、ブドウの白和え、白玉胡麻味噌、鮭の幽庵焼きに甘エビの紹興酒漬けなどの酒肴がとりどりに並ぶ。華やかで趣向を凝らした料理は、まるで玉手箱からあふれ出てきた宝物のよう。

そしてふたり同時に歓声を上げたのが「ねたくり鍋」。阿蘇をイメージして焼かれたという大きな土鍋には、阿蘇の大地に育まれたジャージー乳と味噌をベースにした滋味スープがはられ、ここに九州産の和牛や野菜、珍しい大黒しめじなどのキノコを入れる。さらに 阿蘇産のチーズ、カチョカヴァロのスライスを入れ、とろけた餅のようなチーズの食感を愉しむ、という趣向だった。

驚くような食材の取り合わせや美味を楽しんでいるうちに、窓の外に広がる山々の上には漆しっこく 黒の夜がやってきていた。

「どうしよう、もう十分幸せなの に、これからあの部屋でまた露天風呂に入れるなんて」

そう言い合って雑木林の小道を離れに戻ると、露天風呂の脇に今度は篝火(かがりび)が焚かれ、夜の森を照らし出していた。その夢のような美しい炎に見とれながら、今度は雪の頃にまた来ようと、またふたり同時に呟いていた。

星野リゾート 界 阿蘇
大分県玖珠郡九重町湯坪瀬の本628-6
☎0570-073-011(界予約センター、受付時間9:00~20:00)
宿泊料/平日1泊2食付き4万000円~(2名1室の場合の1人分・入湯税別)カード/使用可 客室/12部屋 チェックイン・アウト/15:00・12:00 風呂/それぞれの客室に内湯1、露天風呂1 泉質/単純温泉 駐車場/15台 アクセス/(電車)JR「肥後大津駅」より車で約1時間15分、JR「豊後中村駅」より車で約40分、(車)大分自動車道「九重IC」より約1時間15分


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いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

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