56812アウトドアフィールドでこそeバイクの真価が発揮される。ハイパフォーマンスに驚くeMTB(電動マウンテンバイク)試乗レポート

アウトドアフィールドでこそeバイクの真価が発揮される。ハイパフォーマンスに驚くeMTB(電動マウンテンバイク)試乗レポート

男の隠れ家編集部
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立ち漕ぎは不要。座ったままで山道をすいすい登れるeMTB

週末のレジャーとして、ロードバイクによる自転車ツーリングは根強い人気を誇る。また、コロナ禍になり通勤電車を避けて、自転車での通勤を選択する人も増えている。その背景にはスポーツバイクに電動アシストが付いた、いわゆるeバイクの存在が見逃せない。以前は電動アシストといえば、子ども乗せ自転車の独壇場だった。しかし、近年スポーツバイクやシティサイクルへの採用が進み、メンズライクなeバイクが多数登場。バッテリーとフレームと一体化したデザイン性の高いモデルも多く、男心をそそられるだろう。eバイクが自転車への回帰を牽引している一面があるのだ。

一方で、都会の舗装されたオンロードでは、eバイクが持つポテンシャルを存分に発揮しているとは言い難い。そこでeバイクの真の性能を体感するため、ドライブユニットやバッテリーなどの開発を手がけるボッシュが主催する試乗会に参加した。eバイクでアウトドアフィールドを駆け、実感した圧倒的なパワーと、大人の遊び道具としての可能性をレポートする。

思わず乗り回したくなるeバイクは大人の遊び道具

バッテリーがフレームと一体化しており、洗練されたデザインに(TREK Powerfly 5)

訪れたのは、富士山を望む山梨県の紅葉台。中央道の河口湖ICから本栖湖方面に車を走らせること、およそ15分の位置にある。西湖の南側の足和田山には、東京の「明治の森高尾国定公園」から大阪の「明治の森箕面国定公園」までを結ぶ、東海自然歩道が通っている。その一区間である、紅葉台レストハウスから五湖台に至るコースは、尾根を歩くため、景観がよい。またゆるやかに登るため、ハイカーに人気がある。このハイキングコースをeバイクで走行するというのだ。

用意されたeバイクは、TREK、cannondale、SCOTT、corratecの4ブランド、計6台。勾配がゆるい区間とはいえ、傾斜がキツい難所もある。トレッキングポールを手にしたハイカーが行き交う山道に準備されたeバイクは場違いな光景で、「自転車で登るなんて信じられない」といった表情で一様に足を止めていた。もちろん、ハイカーたちへの安全配慮を最優先に譲り合っての走行の中である。

最初にまたがったのは、アメリカの自転車ブランド「TREK」が誇る本格eMTBのRail 5だ。フルサスペンションで、フレームにはアルミニウムを採用している。そしてドライブユニットはボッシュの最新型だ。サドルを調整し、操作をレクチャーしてもらうが、記者たちはスタートを待ち切れずに周囲を一周して、勝手に乗り心地を試しはじめる。まさに遊び道具を買い与えてもらった子どものよう。案内役のトレイルアドベンチャーフジの岩間一成氏の先導で山道に入った。

オフロードでこそ違いが分かるeバイクの性能

通常の電動アシスト自転車と比べ、パワーロスが少ないのがeMTB

eバイクは、通常の電動アシスト自転車と異なり、スポーツ自転車と同様にリアセンター(クランクの軸からリアホイールまでの距離)が短く設計されている。そのため、パワーのロスが少なく、クイックでスポーティな走行が可能なのだ。しかもボッシュではeバイク用にドライブユニットを設計しており、よりリアセンターが詰まるような形状になっている。

それでも記者のような素人には、電源をオフにした状態では、オフロードの路面は不安定で、少しの傾斜でもペダルが重く感じてしまう。ただ、ひとたびアシストをオンにすれば、強烈な推進力で、するすると進んでいく。日頃の癖で傾斜に差し掛かると、ハンドルを握る手に力を入れてしまったが、拍子抜けするほどペダルが軽い。続けざまに明らかにキツそうな坂道が見えてきた。素人にはとてもじゃないが登れそうにない。eバイクに乗っていることを忘れて、思わず怖気付いた。

グリップを握ったまま親指で簡単に操作が可能だ

ライダーが加える力によってアシストの強弱を自動で調整、人の筋肉と一体化するアシストを実現するというeMTBモードにし、意を決して坂に突入する。最大駆動トルク85Nmというボッシュが誇るドライブユニット「Performance Line CX」が本領を発揮し、ペダルが軽いまま、どんどん進んでいく。またコントローラーが、手元で簡単に操作できるデザインになっているため、モードの切り替えもスムーズなのだ。傾斜の中腹に来ても、負荷をまったく感じない。もちろん漕ぎ続けなければ前に進まないため、息は切れる。しかし、坂を平地と同じ足取りで登っていくのだ。あっという間にひとつめの難所をクリアしていた。

続いてスイスに本社を構えるSCOTTのSCALE eRideに乗り換える。こちらもフロントにサスペンションがあり、ボッシュの最新型ドライブユニットを搭載している。小さな岩が転がる悪路に差し掛かっても、力強い推進力で足元を支えてくれる。上り坂で試しにアシストをオフにしてみた。すると、ペダルがピクリとも動かない。自転車で山道を登る無謀さを痛感した。再び、電源を入れると、命が吹き込まれたように、ペダルから胎動を感じる。早く漕ぎ出せと急かされているみたいだ。軽く足に力を込めると、強烈なサポートでSCALE eRideが前進しはじめた。

その後、TREK Rail 5の上位モデルRail 9.7や、ドイツのスポーツバイクブランド「corratec」のX-VERT CX、自転車業界のイノベーターとして知られる「cannondale」のTopstone Neo carbon Lefty 3などに乗り継ぎながら、五湖台までを走破した。

サスペンションとディスクブレーキでダウンヒルでの走行も安定

サスペンションのおかげでダウンヒルも軽快に走れる

存分にeバイクのパワーとポテンシャルを感じたライドになったが、楽しみは終わりではない。標高1355mの五湖台から折り返し、ゴールの紅葉台レストハウスまでは爽快なダウンヒルになる。サスペンションが効いているため、悪路も軽やかに越えていくのだ。また、キャリパーブレーキではなく、オートバイなどに採用されているディスクブレーキのため、ダウンヒルでの制御も容易だ。慎重に車体をコントールしながら、坂を駆け降りる。そして、あっという間に戻ってきた。

ボッシュのモーターは金属プレートでフレームとしっかり固定されている。そのためコストが上がるというデメリットがあるが、フレーム設計の自由度が高いという利点を持つ。より自転車乗りに配慮した構造となっているのだ。

自分の力で乗りこなす楽しみを追求するために進化したeバイクシステム

eMTB向けに最適化されたボッシュのドライブユニットが「Performance Line CX」だ

その後、場所を移し、ボッシュのドライブユニットの特徴についてレクチャーを受ける機会を得た。

ボッシュでは、ドライブユニットをオンロードツーリング向けの「Active Line Plus」と、フラッグシップモデルであるオフロードも楽しめるeMTBモードを備えた「Performance Line CX」の2モデルを開発しているのが特徴だ。オンロードの電動アシスト自転車に搭載されるドライブユニットでは、走り出しや低速時のパワーが重視される。一方で、eバイクでは高速時でもアシストがかかる高回転型のモーターが採用されるなど、スポーティな走りに合わせて最適化されているという。どうりで非力な記者にも乗り心地が実感できたわけだ。

そこには、単に自転車にEVによるアシストを搭載するのではなく、自分の力で乗りこなす楽しみを追求するためにEVを利用するという文化が根付いている。eバイクはどれも一緒。だからデザインで選ぶというユーザーも多いだろう。しかし、ドライブユニットでeバイクを選ぶという選択肢もある。ボッシュのフィロソフィーを理解し、痛感させられた。

カーボンフレーム、超軽量なKingPinサスペンション、そして30mmのグラベル専用のサスペンションフォークを搭載したcannondaleの「TopstoneNeo CarbonLefty」 今回のトレイルを十分楽しめたグラベルモデルだ

また、中継での取材に応じてくれたcannondaleの開発担当者のコメントが印象的だった。

「eMTBは、これまでごく一部の鍛え抜かれたアスリートしか到達できなかった地点まで、私たちを連れて行ってくれます」 MTBのトップアスリートは鍛えた身体能力で山を駆ける。頂や難所からの景色は、彼らだけのものでもある。しかし、ドライブユニットの力を借りれば、一般人にも同じ景色を見るチャンスを与えてくれるかもしれないのだ。電動アシスト自転車から、eバイクへ。新たなアクティビティとして、アウトドアでこそ、そのポテンシャルは解放されるのだ。

※登山道は登山愛好家、トレイランナーなど、多くの方が利用する場所です。マナーを守って安全な走行を心がけましょう。また、走行が危険な場所、立ち入りや自転車走行が禁止されている場所もあります。eMTBを楽しむにあたり、eBikeのレンタル、乗り方やマナーについて教えてもらえるガイドツアーを利用するのがおすすめです。

トレイルアドベンチャーフジ トレイルツアー TEL:080-2165-9693

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いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

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