文/こもだきよし
1950年11月9日生まれ。神奈川県出身。一般誌&自動車専門誌、WEBに数多く執筆しながら、輸入車メーカー主催・安全運転講習会の「チーフインストラクター」などで活躍。現在は日本自動車ジャーナリスト(AJAJ)協会会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、CDRアナリスト、日本自動車連盟交通安全委員会委員も務める、この業界の大御所だ。
撮影/中島仁菜
日本のメーカーが創った世界に誇れるスポーツカー
1989年、崩されたベルリンの壁を見たあと発売前の初代NSXでドイツのサーキット、ニュルブルクリンクを走った。私はまだコースを完全にマスターしていなかったため、コーナーに飛び込んでから急ブレーキを踏んだり、意図せずに縁石に乗り上げたりと今思えばひどい運転だった。それでも初代NSXは、一生懸命にドライバーの指示に従い、頑張って走ってくれた。それはニュルのすぐそばのミューレンバッハという村にNSXの開発拠点を置き、連日走り込んで過酷なテストを繰り返していたからである。
ドイツの高速道路アウトバーンでも現地のスポーツカーと同等以上のスピードでNSXは走ることができた。130km/hは推奨スピードで、事故を起こさない範囲ならリミットを設けないのがドイツ流。直線を250km/h近くで走ると、緩いカーブでなくてもタイトに感じる。ミッドシップでホンダらしく高回転まで回るエンジンはそのサウンドも楽しめた。カチカチと決まるシフトのトランスミッションを介して、そのパワーをしっかりと後輪に伝えた。
大きなウインドシールドによって目の前の路面が見える様子はレーシングカーに近い感触。当時のNSXにはパワーステアリングがなく、直進のニュートラル付近は軽いものの、少し切り込んだところからはグッと重さを増す操舵力だった。これは乗り心地を確保するためにゴムブッシュを使ったサスペンションによるもの。この操舵力の変化は馴染めなかったが、同じモデルでも改良が進んでから違和感はなくなった。
当時、こんなスーパーカーを日本のメーカーが創ったことが嬉しかったことを思い出す。
そして時が過ぎ二代目のNSXが誕生した。その時代の最先端をいくスポーツカーとして、ハイブリッドシステムを纏っている。このクルマもニュルブルクリンクでのテスト走行がスクープされている。やはりスポーツカーはスポーツカーの聖地で開発するのだ。
2ペダルになり、シフトセレクターはプッシュボタン式。さらにパーキングブレーキはEPB(電子パーキングブレーキ)になりスイッチ1つで効くようになった。ハンドルの径は小さくなり、リムも太くなって現代のスポーツカーの様相だ。時代の最先端を行くだけでなく、スポーツカーであり究極のドライビングマシンとしての味付けも忘れてはいない。あくまでもドライバーが主役のスポーツカーはいつの時代でも輝いている。
<History>
1990年~1997年 初代 NSX Ⅰ型(E-NA1)
1997年~2001年 NSX Ⅱ型(GH-NA2/GH-NA1)
2001年~2006年 NSX Ⅲ型(LA-NA2/LA-NA1 ABA-NA2 ABA-NA1)
2016年~ 2代目 NSX(NC1型)
【PICK UP】 HONDA NSX ハイブリッド・スーパースポーツ
ホンダ認定のスペシャリストが在籍する「NSX PERFORMANCE DEALER」や整備と保証に関する専用のサービスプログラムが用意され、つねにベストパフォーマンスを楽しむことができる。NSXオーナーだけの満足感が得られるハズだ。
【Specifications】
サイズ:全長4490mm×全幅1940mm×全高1215mm
ホイールベース:2630mm
トレッド:前1655mm/後1615mm
車両重量:1800kg
総排気量:3492cc
エンジン:縦置きV型6気筒DOHC24Vツインターボ+ハイブリッド
トランスミッション:9速DCT
最高出力:373kW(507ps)/6500〜7500rpm
最大トルク:550Nm(56.1kgm)/2000〜6000rpm
駆動方式:4WD
サスペンション前/後:ダブルウイッシュボーン
ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク
タイヤ:前245/35ZR19 93Y/後305/30ZR20 103Y
乗車定員:2人
車両本体価格:¥23,700,000(税込)
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