特殊な街というイメージが先行し色眼鏡で見られがちな新宿二丁目

昼間の新宿二丁目の目抜き通り。どこにでもある街といった顔を見せる。

「二丁目について書いてよ」

「いいけど、ガチで書くと主張が入っちゃうし。大丈夫?」

「それでもいいけど『隠れ家』としての二丁目と人の話」

「じゃ、今までの二丁目のイメージとは違う切り口でできるかな?」

 ちょっと遠くの街へ行くと必ず聞かれる「どちらから?」

「新宿です」

「新宿のどの辺?」

「二丁目です」

すると、「へえ~」という言葉とともに、大概の人が表情を変える。

メディアでも度々取り上げられる新宿二丁目。この街のイメージは、LGBTへの好奇によるものが、多くを占めているだろう。

ところがこの街、全く異なる二つの顔を持つ。あまり描かれないことだが、街を見渡せばオフィスや店舗が建ち並び、ごく普通の住宅も多い。朝になると、近くに住む子供たちが「行ってきま〜す」と登校する。そして通勤の会社員(クリエイティブ系が多い)が行き交い、昼のコンビニには行列ができる。夕方になると、仕事帰りの会社員たちで(二丁目の)居酒屋は一杯に。住宅からは夕飯の匂いが漂ってくる。

そんなどこにでもある普通の風景が、この街にもある。その一方で、いわゆるLGBTの人たちが集う場所でもある。バーや専門店が街の中に集中しているエリアがある。多くの人が抱く「二丁目」のイメージは、この辺りのことだろう。それも主として日没後から深夜の風景だ。

時代とともに変化を続け、世界も注目するエリアへと成長

もともとこの街は、二面性を持っていたようだ。明治期、この地域は牧場があった(芥川龍之介の実父もここで牧場をしていた)が、一角は遊郭としての顔を持っていた。時代とともに市街地化が進み、住宅地でもあったが、風俗的には赤線・青線地帯も共存していた。

そして昭和三十三年の赤線廃止後、徐々に今のような街へと変貌していった。この街が注目されるのは、その類の店の集中度の高さであろう。エリア面積に占める店の数は、世界一だという。

LGBTと一口に言っても、すべてが一緒に集うのではない。「ゲイ(G)」は「ゲイの店」「レズビアン(L)」は「レズビアンの店」に集まる。「トランスジェンダー(T)」も然りだ。

余談だが、言葉の上では一緒に括られるが、意外とお互いのことは知らない。特にTのついてはその傾向が強い(TとLGBはその性質が全く異なるからだ)。

街に夜の帳が下りると、さまざまな人たちが通りを行き交い、昼以上の賑わいを見せる。

初めての二丁目体験では、お店選びが楽しめるか否かを握る

それだけに各店個性があるが、大きく三つに分けることができる。ひとつは「観光バー」といわれる誰でも入れるお店。「二丁目に行ってみたい」とすると、まずこれらの店の扉を開けることが多いだろう。「誰でも」とは言ってもそこは二丁目、言動はわきまえて。また、店の質、客の質は様々なので吟味したい。あと料金確認はしっかりと。

次に「条件つきでOK」の店。それぞれの店にプライバシーがある。つまりはどんな店でどんなお客さんが集うのか、それをわかった上で来てほしいということだ。だからこそだが紹介が必要なところもある。これらの店は数人から十数人の小さいところが多い。それぞれの店には常連さんがいてその店の雰囲気を楽しんでいる、お祭り気分で訪ねたり、いきなり大勢で……なんてことはNGだ。

最後に「同好の士オンリー」の店、こちらは「一般人」は入店できないと思っていい。

二丁目に行ってみたいと思ったら、店の傾向(LGBTもしくはそのミックス)と営業のスタイルを踏まえておくことをお薦めする。

ところで、この街に来るのは何のためだろう。メディアでよく取り上げられるいわゆる「オネェ」系の楽しさもあるだろう。それはそれでいいと思う。しかしこの街は『それだけ』ではない。ここで店を営む人も、ここに集う人々も奇でもなければ異でもない。普段、普通に社会生活をおくっているが、さらに自分らしく生きようとする人たちが集い、そして語らう場なのだ。

二丁目は性的志向の当事者でなくても、理解と意識があるあなたが心地いいと感じられる場であるかも知れないし、そのような楽しみがあっても悪くない。

そんな二丁目は、今夜も鼓動を続けている。

藤崎由貴 ふじさきゆき
年齢性別出身地など一切不詳。新宿二丁目に隣接する、とあるバーのママさんを務めている。そこに集う人たちは、昼の間は決して他人には見せない姿で夜を楽しんでいる。そして由貴さんの手作りの料理に舌鼓を打ち、お酒に関する豊富な知識に舌を巻く。はたしてそこはどんな店なのか?興味を抱いた方はぜひ探し当てて下さい。