親子3人それぞれに持ち味を生かす

備前焼の特徴であり最大の魅力は、ほかの焼き物とは違い釉薬を一切使わず、焼き締めただけの作品という点である。

作家は絵付けの代わりに、土と炎と灰による自然の力、炎の力で起こる窯変(ようへん)の偶然性をいかにして捉え、それを自らの技とするかに苦心しているという。完成した作品はひとつとして同じものがない、というのも惹かれる所以なのかも知れない。

備前焼は平成29年(2017)に日本遺産として登録された「六古窯(ろっこよう)」のひとつである。ほかに、越前焼、瀬戸焼、常滑焼、信楽焼、丹波焼があるが、中でも備前焼は千年を超える歴史の中で、一度も途切れず、ほかの産地の真似をすることもなく続く最古の焼き物だ。そのルーツは古墳時代に伝来した、須恵器(すえき)系の焼き物といわれている。

釉薬を使わずとも素晴らしい焼き物をつくるには、良質な陶土の存在抜きには語れない。備前焼で使用される鉄分が多く含まれた陶土は、酸化鉄による独特な発色があり、窯変に利用される。成形を終えたものは昔ながらの登り窯に収め、2週間ほどかけて焼き締める。

独特な姿の「窯変耳付き花入れ」。

岡山県備前市。備前焼の里である。名工と謳われた初代・原田陶月が礎を築いた窯で、現代は二代目の原田陶月さんと、二人の息子が窯の伝統を受け継いでいる。その作風は土味や焼け味が手に取る人に伝わるような柔らかい印象の仕上がり。

ここでは今もそんな初代の技と変わらず、土の良さを存分に感じられる作品が制作され続けている。しかも昔ながらの素朴な形にもこだわっているという。

窯から出したばかりのまだ熱を含む作品を磨く。

「私が大切にしているのは、見ただけで使ってみたいと思えてくる作品作り。発色の違う数種類の粘土を層ができるように混ぜるため、練り込みの技法を向上させようと日頃から精進しています。また、より素朴な味わいを出すために、鎌倉時代や室町時代に使われていた山の土を使っている作品もあります」と語るのは次男の圭二さん。

窯焚きは春秋の2回行われるのだが、先ほどの言葉の通り、窯から出されたばかりの作品は、灰を磨き落とすと、しっとりと落ち着いたなんとも言えない色合いを見せる。陶月窯では親子3人、それぞれの持ち味が生かされた器が制作されている。

ところ狭しと並ぶ、備前焼の数々。親子3人の作品だ。

店にはいかにも備前焼といった様子の作品がずらりと並ぶ。独特な姿の焼き物は、見る人を惹きつけ、ついつい手にとってしまいたくなる魅力にあふれているのだ。

文/野田伊豆守 写真/金盛正樹