8755「まんだらけ」でイチ押しのお宝を紹介してもらった|オークション初値700万円「手塚治虫初期B6単行本、36冊一括セット」〈まんだらけのお宝大公開 〉

「まんだらけ」でイチ押しのお宝を紹介してもらった|オークション初値700万円「手塚治虫初期B6単行本、36冊一括セット」〈まんだらけのお宝大公開 〉

男の隠れ家編集部
編集部
「まんだらけ」2020年1月の大オークションに出展されている最強のお宝を公開。 手塚治虫トップコレクターの秘蔵コレクション大放出。手塚治虫初期B6単行本36冊一括セット、スタート価格700万円から。
目次

「まんだらけ」には店頭販売のレア物販売以外に、「毎日オークション」と「大オークション」があり、そこで高価格の古物群が次々と取引されている。「大オークション」は隔月に1回開催され、いずれも「毎日オークション」以上の驚愕のお宝が出展されるということで、コレクターの間では目が離せない日本最大のオークションだ。

今回のお宝は、手塚治虫の超レアな単行本36冊セット

今回紹介する、手塚治虫の初期作品の単行本セットは、かつて見たことのない、状態の良い初版を多く含んだ逸品のコレクション。

手塚治虫といえば世界的に日本で一番有名な漫画家である。漫画家としての活動開始から1989年(平成元年)に没するまで、ストーリー漫画のパイオニアにして第一人者として、常にコミック、アニメ業界の最先端で活躍をし続けた天才だ。漫画の神様の異名を持つ。

手塚治虫の漫画家歴を振り返ってみると、幼少期よりの手製の図鑑の製作や数々の実験作・習作による研鑽を礎として、昭和21年、児童向け新聞「少国民新聞 大阪版」に発表・連載された4コマ作品「マアチャンの日記帳」を経て、その1年後の初単行本「新寶島」(しんたからじま)に始まる。

新寶島は部数が多い割には紙質が粗悪で時代も古いため、現存しているもので背表紙が読める程度の良品は希少。

「新寶島」は、「関西マンガクラブ」の中心人物として活躍していた、関西漫画界の先人にして重鎮・酒井七馬の協力と後押しを得て、当時、大阪を中心に隆盛の兆しを見せていた「赤本漫画」として出版されたコミックス単行本だ。

この作品は手塚と酒井、大阪という土壌、そして時代。これらが稀有な巡り合わせによって生み出された奇跡的な作品、つまり後世に残る歴史的名作と現代では評価が高い。

「赤本漫画」は紙質が悪く長期保存に適していないため、状態の良いものが現存することは極めて珍しい。

俗に呼ばれる「赤本漫画」とは、赤い紙に印刷された漫画というわけではない。戦後紙が貴重品とされGHQの統制下にあった時代に、統制外の「仏和紙」を使い作られた本を指す。当時、歓楽街での統制外の区域を「赤線」と呼んでいたのと同じ隠語でこう呼ばれたのだ。

「赤本漫画」(以下「赤本」)は戦中・戦後にかけて流通した、描き下しの漫画単行本(絵物語的な内容を扱ったものもあった)を指す名称で、多くは印刷所の片手間や素人の内職的に作られたものだ。

内容的にも決して上等な物が多いとは言えない。しかし戦後、物のない時代に新しい娯楽に飢えていた庶民は、比較的安価に手に入る手軽さと、「赤本」の自由な世界感を支持し、日本中で広く親しまれていった。

「ファウスト」は手塚が生涯挑んだテーマで、何度も作品化を試みるほど魅了された。「罪と罰」は貸本版のみの作品。

ただ「赤本」への大人社会からの風当たりは強く、その俗悪と評される内容を糾弾する声は強かった。朝日新聞社「週刊朝日」(昭和24年4月24日号)の特集記事「こどもの赤本 俗悪漫画を衝く」では、「赤本」の出版の内情を、流通の背景・成り立ちからさらし上げ、その売らんかな主義を批判し、規制の必要が書かれている。

しかし、そんな混沌とした出版時代の中から新しい息吹が芽生えていったのだ。手塚治虫が「赤本」という表現手段で子供の心を掴み、令和まで続く漫画文化の基礎を創り上げていったのだ。

「漫画大学」などミッキーマウスのようなサブキャラが登場しているが、当時いろいろな漫画家の作品に黒鼠キャラは登場した。

すさまじい手塚人気が与えた衝撃

「新寶島」は公称40万部超を売り上げたと言われる。昭和30年頃の貸本マンガが4000部程度しか印刷されていなかったことを考えたら、驚異的な部数だ。その後に発行された手塚の作品も、多くの版が重ねられていく。

手塚治虫の人気はすさまじく、長者番付の上位に手塚の名が紹介される事もあった。「週刊朝日」(昭和29年4月11日号)の記事には「知られざる二百万長者」と手塚治虫を取り上げている。

その年の長者番付に「画家」の部筆頭として、洋画家・和田三造1883年(当時71歳)、小磯良平(当時51歳)日本画家・堂本印象(当時63歳)等、そうそうたる面子に、約2倍ほどの差をつけて(額面年収217万、現代の紙幣価値に照らすと2000万円超となるだろうか)名を連ねた手塚(当時26歳)がいた。

そんな手塚が「赤本」の業界に与えた衝撃は大きく、多くの模倣者を生み出していった。そして、「赤本」の作品世界を一新させ、次世代の憧憬の的として後進に多大な影響を及ぼした。手塚の初期作品を紐解くことは、戦後漫画の歴史を俯瞰することになる。

今回出展された手塚初期作品の品々は、手塚赤本漫画のほぼ全てを初出装で網羅した奇跡の一群だ。50年来のトップコレクターよりの出物で、状態も高レベルで揃えられてる。まさに博物館級の奇跡的な逸品といえる。

まんだらけ中野店 本店
https://www.mandarake.co.jp/shop/
東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ 3F 
TEL 03-3228-0007
12:00~20:00 無休
まんだらけオークション
https://ekizo.mandarake.co.jp/auction/item/indexJa.html
オークション情報
手塚治虫初期B6単行本36冊一括セット(内34冊初版)
スタート価格700万円から。落札日:1/5 

オークション初値700万円という、このとんでもないお宝に手を挙げたい方は、ぜひ「まんだらけオークションサイト」へ。次回のお宝もお楽しみに。

文/宮川総一郎
エッセイスト、漫画家、小説家。代表作:漫画『マネーウォーズ』(集英社ビジネスジャンプ)。小説:「七福神食堂」「東京謎解き下町巡り」(マイナビFan文庫)。総監修:「漫画から学ぶ生きる力」、他。


編集部
編集部

いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

Back number

バックナンバー
More
もっと見る