記事一覧 | 男の隠れ家デジタル https://otokonokakurega.com/ いくつになっても、 男は心に 隠れ家を持っている。 Fri, 05 Apr 2024 07:24:12 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 https://otokonokakurega.com/wp-content/uploads/2019/09/d02a42d9cb3dec9320e5f550278911c7.png 記事一覧 | 男の隠れ家デジタル https://otokonokakurega.com/ 32 32 195504444 ビルの11Fで味わう開放感「BAR S」(銀座)|カクテルを愉しむBAR https://otokonokakurega.com/meet/secret-base/97095/ Mon, 08 Apr 2024 09:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97095 ■黄昏時、ビルの11階でシーズンカクテルを

BARTENDER
阪川 徳さん(バーテンダー歴8年)

銀座通りの顔ともいえる資生堂パーラー。名物のパフェやオムライスなどを目当てに、たくさんの人が出入りしているが、今日これから目指すのはビル最上階(11階)の「バー エス」である。

時間は午後3時。バーに入るには、まだどこか後ろめたくなるような頃合いだ。しかしエレベーターから下りると、そこに広がる上質な空間に目を奪われ、時間などたちまちにして忘れる。

広々として、ゆとりのある空間自体にサービスの心を感じさせる。天井は開閉可能でダイレクトに夜空が見られる日もある。

カウンター席に腰を下ろし、バーテンダーの阪川徳さんがお勧めしてくれたカラカラの冬バージョンを頼んだ。阪川さんのオリジナルで四季折々の色合いや味が愉しめる新シリーズだ。

「父が下北沢で小さなバーをやっていまして、カクテルを作る姿をよく見ていました。最初はただ作ること自体が楽しいだけでしたが、伝統的なカクテルには、それぞれに奥の深い歴史があることを知りました。カクテルは時に人を喜ばせ、目の前の人に寄り添うものなのだとわかり、バーテンダーにハマっていきました」と阪川さん。

ほのかに漂う柚子の風味。優しげな味が喉をそっと刺激してくれて安堵の息が洩れる。

シックな雰囲気のラウンジスペース。
紫色の表紙がおしゃれなメニュー表。
グラスやウイスキーの並びも見ていて美しい。女性客の姿も多い。

「同じビルに資生堂パーラーのレストランなどもあり、食前食後に立ち寄れる入りやすさも、当店の特徴かと思います。男性も女性も『初めてバーに来ました』という方もいらっしゃいますが、お話のなかでお客さまがどんな飲み物をお望みなのかを察して喜んでいただけるものを出せたときが嬉しさを感じる瞬間です」

二杯目はオープン当初から提供しているという名物カクテル「S」。

この店のイメージカラーである紫色が美しく、これも美味しい。表面に浮かぶ金粉は星空を表しているそうだ。高い天井を見上げながら杯を干す。空がとても近くに感じられる。

オリジナルカクテル「S」(1700円)。ウォッカにパッソア、ボルスブルー、クランベリージュース、レモンで整え、金箔で彩る。

席の配置、カクテルの色合い、ウイスキーのセレクトなど、すべてが洗練された空間だ。3階・4階のカフェやレストランを過ぎ、ビルの11階まで上がる、ほんの少しのハードルを越えるだけでこんなにも素敵な空間と出合えるとは……。

グラスを持ち、銀座の空を眺めると、スマホ片手に下ばかりではなく上を向いて歩こうという気持ちになってくる。刻一刻と表情を変えゆく銀座の街の黄昏時に極上の一杯。今宵はいい夢が見られそうだ。

■冬の一杯

カラカラ〈冬〉 (2500円)

氷がグラスに当たる音を表現したネーミングの新カクテルは2023年12月から登場。山椒風味のカフェジンをベースにドランブイ、柚子、カルピスなどを加える。

BAR S
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル11F
TEL:03-3572-3922
営業時間:15:00~23:00
チャージ:1000円 席数:53席
定休日:日・月曜、祝日
アクセス:JR「新橋駅」より徒歩約5分

文/上永哲矢 撮影/菊田香太郎

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2024 F1日本グランプリ開幕!日本人アーティストが手がけたカラーリングは“○○文字”がモチーフ!? https://otokonokakurega.com/meet/secret-base/97230/ Sat, 06 Apr 2024 00:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97230 2024年4月3日(水)、F1日本グランプリに出場するマクラーレンのマシン「MCL38」の特別カラーリングが発表された。

これは、紙巻きタバコや加熱式タバコなどの輸入・販売を行なっているBATジャパンの旗艦ベイプブランド「Vuse」と、「マクラーレンF1チーム」が立ち上げた共同プロジェクト“Driven by Change”によるものだ。

これまでにない斬新なデザインは、どのようにして誕生したのだろうか。

■「Driven by Change」とは

世界中の優秀な若手クリエイターを支援するプロジェクトが「Driven by Change」だ。2021 年からスタートし、国内外から注目を集めるモータースポーツをプラットフォームにクリエイターたちの作品を紹介する機会を提供している。

4回目の開催となる今年は日本人アーティストのMILTZ氏が起用され、特別カラーリングを施されたMCL38がF1日本グランプリで走行する。

■江戸文字から着想を得た特注カラーリング

マクラーレン「MCL38」のカラーリングを手がけたMILTZ氏。これまでに開催されたDriven by Changeの作品も参考に、ストーリー性のあるアート作品に仕上げた。

日本の伝統的な書体の一つ江戸文字をモチーフに、連綿と続く日本の伝統へのリスペクトと現代的な意匠が凝らされている。車体には雲の間を駆け抜ける龍が描かれ、まるで颯爽と走るF1レースカーのよう。また、雲はタイヤとコースの摩擦やマシンの疾走感を表現していると言う。

このほか、MCL38のボディに描かれるドライバー名とゼッケン番号に、MILTZ氏ならではのタッチが加えられているのも注目のポイントだ。

■F1日本グランプリ(第4戦)はどこで見られる?

F1日本グランプリは2024年4月5日(金)〜7日(日)の3日間にわたって、三重県の鈴鹿サーキットで開催される。

マクラーレンF1チームのドライバーは、オーストラリア出身のオスカー・ピアストリと、イギリス出身のランド・ノリス。前戦のオーストラリアグランプリでは、ランド・ノリスが3位、オスカー・ピアストリが4位を勝ち取とったことから、鈴鹿サーキットでの活躍も期待できそうだ。

■まとめ

独特なマシンの形状だけでなく、300km近いスピードで駆け抜けるモータースポーツ、F1。スタート時の緊張感やドライブテクニックといった見どころは尽きないが、鈴鹿サーキットで開催されるF1日本グランプリは、いつもと違った視点も楽しめる。

新進気鋭の日本人クリエイターがMCL38に施した特別カラーリングは、観客たちの注目を集め、会場をより湧かせることだろう。

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静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR https://otokonokakurega.com/meet/secret-base/97087/ Thu, 04 Apr 2024 08:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97087 ■上品すぎず下品すぎず“最高の酒場”の在り方

BARTENDER
田中 利明さん(バーテンダー歴34年)

小さな看板を目印に「カエサリオン」のドアをくぐると、深い闇に包まれた。店内は黒一色。わずかな灯りに浮かび上がるバックバーを背に、オーナーバーテンダーの田中利明さんが迎えてくれる。

日本を代表する名バーテンダー上田和男氏のもと資生堂パーラーの「バー ロオジエ」で修業を積んだ田中さんは、平成5年(1993)に独立。まだ飲食店の少なかった代々木上原に店を構えた。

以来30年、田中さんの作る酒は、イラストレーターの故・安西水丸氏をはじめ、多くのバーファンに愛されてきた。

さりげないグラスさばきに、卓越した技が光る。

BGMは流さず、冷蔵庫もない店内は静謐そのもの。酒以外を削ぎ落とした店づくりは、一見、スタイリッシュだが、「決して〝格好良い〟店にしたいわけではない」と田中さん。

黒一色の内装も居抜きで借りた喫茶店の劣化を隠すため、自身で塗ったものだという。

バックバーのボトルの並べ方には、その店の個性が出るという。

「書道でも画数の少ない方が難しいといわれますが、カクテルも似ています。組み合わせが少なくて、それでいて完成度が高いものが良い」と話す田中さんが、「寒くなると琥珀色のカクテルが増えるかなあ」と勧めてくれたのはハンター。

ライウイスキーとチェリーブランデーのシンプルなスタンダードカクテルだ。漆黒のバーカウンターに琥珀色の輝きが映える。

「チェリーブランデーには媚薬効果があるといわれています。『ハンター』という名前は、まあ、そういうことです」と微笑む。

そんなさりげない会話の一つひとつに、長年、バーカウンターに立ち夜の街の移ろいを見てきた田中さんの懐の深さを感じる。

シンプルな店内唯一のインテリアは、客が持ち込んだ本や雑誌が並ぶ書棚。

「開店当初は、今みたいに紳士淑女はいませんでした。お客さま同士の喧嘩はしょっちゅうだし、トイレが汚れることも多かった。変わってきたのは2000年代に入ってから。仕事はしやすくなりましたが、あまり健全すぎるのもね。酒場は上品すぎても、下品すぎてもだめ。その辺の糊代は残しておきたいんです」と田中さん。

ここ数年は若い客も増えたというが、「酒場での振る舞いを少しずつ覚えて、格好良い客になってほしいですね」と話す田中さんは、取材中、「所詮、酒場だから」と繰り返した。

けれど「最高の酒場にしたい」と続けた田中さん。その姿は無性に格好良かった。

わずかな灯りのもと、漆黒の店内に純白のバーコートが浮かび上がる。

■冬の一杯

ハンター (1700円)

カナディアンライウイスキーとチェリーブランデーをステアしたシンプルなショートドリンク。ライウイスキーの力強さに、チェリーの甘い香りが漂う。

カエサリオン
東京都渋谷区上原1-33-16
TEL:03-3485-2907
営業時間:16:00~23:00
チャージ:800円 席数:10席
定休日:日曜
アクセス:東京メトロ「代々木上原駅」より徒歩2分

文/田端広英 撮影/米屋こうじ

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【今日からシゴデキ】モチベ倍増!やる気をキープしてくれる名作家具3選 https://otokonokakurega.com/furniture/selection_001/ Tue, 02 Apr 2024 08:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=furniture&p=97213

新年度がはじまり、部署異動や新しい環境で働きはじめたという人も多いだろう。仕事への気持ちも新たに引き締まるこの時期、せっかくのやる気をキープするためには「かたちから入る」ことも重要だ。

今回はそんな理想的な仕事環境になるおすすめの名作家具をご紹介。世界で活躍する成功に愛されつづける名作家具に囲まれれば今日からシゴデキ必至!?

1.ピエール・ポランの代表作 F031デスク

フランスの家具デザイナー、ピエール・ポランにより1950年代に生み出されたF031デスク。直線を基調にしたエレガントでミニマルなデザインは、名作家具愛好者なら知らない人はいないだろう。

天板や脚部の黒を貴重とした落ち着いたトーンの中に、自然のぬくもりを感じる木製ドロワーがアクセントとなり、全体のクールな印象に温かみをプラス。

面取り仕上げが施された天板や、脚部の円柱も柔らかな印象を与え、どんな空間に配置してもインテリアの印象を向上させ、かつくつろぎやすい雰囲気を演出してくれる。

毎日デスクに向かいたくなるデザイン性の高さに、仕事に打ち込む時間が増えそうだ。

▼F031デスクの詳細はこちら

2.収納ワゴンの決定版 ボビーワゴン

収納家具で圧倒的な人気を誇るボビーワゴン。コンパクトながら十分な収納力や、ワゴンならではの可動性、ミニマルでスタイリッシュなデザインなど、多くの魅力を持っている。

ボビーワゴンは異なるサイズのトレイを組み合わせて構成され、各トレイに書類や小物などを収納することができる。高さのあるトレイには生活備品を、低いトレイには書類を、など用途によって整理がしやすく、取り出しもスムーズだ。

必要なものをすぐに取り出せ、サッとしまえる利便性と、生活感を感じさせないキリッとした佇まいは、デスク脇にいつもいてほしい相棒として手放せなくなるだろう。

▼ボビーワゴンの詳細はこちら

3.ハーマンミラーの名作椅子 アーロンチェア

人間工学に基づいたデザインで、長時間座っても疲れないことから人気のアーロンチェア。オフィス環境から自宅の書斎にも馴染むスタイリッシュなデザインで、人気のワーキングチェアとして不動の地位を築いている。

アーロンチェアは、自分の好みの座り方に合わせて自在に調節が可能。アームレストの高さや、座面の高さ、背もたれに寄りかかった時の角度を調整するチルトテンション、リクライニング制御など、体型や気分に合わせてさまざまなカスタマイズができる。

誰もが一日中快適に座れる椅子は、仕事の生産性を高めてくれるスタイリッシュなワーキングチェアとして、世界中のオフィス環境で導入されている。自宅のリモートワークにも導入すれば、その快適さにずっと座り続けてしまうことだろう。

▼アーロンチェアの詳細はこちら


一生モノのパートナーとなる名作家具。時を超えて愛され続ける選りすぐりの作品とその魅力に迫る「名作図鑑」を公開中。暮らしに彩りを添える名作家具を見つけてほしい。


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メトロポリスに佇む「塔の日本旅館」星のや東京で 北辰一刀流を学ぶ https://otokonokakurega.com/meet/secret-base/97170/ Tue, 02 Apr 2024 01:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97170 都心でくつろぐ「塔の日本旅館」
第5回 星のや東京【東京都千代田区大手町】

「星のや」の5施設目として、2016年7月20日に東京・大手町に開業した日本旅館。コンセプトは「塔の日本旅館」。

地下2階、地上17階の縦の空間に、畳敷きの玄関、伝統的な和室や最上階の温泉で構成されています。 日本の歳時記に合わせた室礼、江戸や日本の文化を今に伝えるおもてなしを提供します。

デジタル機器から離れ 武士の鍛錬に身を委ねる

息も潜む静寂な空間を一瞬にして切り裂く鋭利な風音。

頭上から剣先を振り下す「真っ向切り」、刀を左から右へ動かす「胴切り」、そして右上に構え左下へ振り下ろす「袈裟斬り」。凛とした空気の中、美しくも力強い師範の剣術所作を眼前にし、思わず背筋がスッと伸びる。

「様々な要因で日々疲れている脳と体を活性させるには、武士の稽古が役立ちます」。そう話すのは、剣術稽古をつけてくださった「北辰一刀流 撃剣会」師範の髙田宏樹さんだ。

“北辰一刀流”は、江戸時代後期に千葉周作が創始した江戸三大道場の一つとして知られる剣術流派。

日本橋品川町に玄武館道場を構えた後に神田お玉ケ池に居を移し、坂本龍馬や山岡鉄舟らを始め三千余人もの門弟を排出した名門で現在で六世を数える。撃剣会は門弟の若手が立ち上げた興行部門で、現代においては新時代に即した稽古を行っている。

武士の世界に興味はあっても実際に門を叩くという機会はそうは多くないだろう。しかし今回、そんな北辰一刀流の武術修行を東京・大手町にある「星のや東京」にて体験できるというのでそのプランを予約。

もともと独創的なテーマで圧倒的非日常を提供する「星のや」だが、この体験は画期的でまさに唯一無二! タイトルも『脱デジタル滞在・東京~武士の鍛錬~』である。

現代人の日頃の疲れやストレスの要因となるデジタル機器から離れて過ごす1泊2日のプログラムで、剣術稽古や黙想で雑念を払い、集中力を高め、五感を研ぎ澄まして豊かな感性を取り戻すといった内容だ。

星のや東京が佇む大手町周辺は現在は高層ビルが建ち並ぶオフィス街だが、江戸時代には武家の上屋敷が点在していた場所。江戸三大道場の剣術道場もあったことから、まさに地域文化を生かした星のや東京ならではのアクティビティといえるだろう。

プログラムには大手町の地下1500mから湧き出る天然温泉の貸し切り入浴や、地域の食材と文化を技で紡ぎ日本の豊かな風土を表現した『Nipponキュイジーヌ~美食の集い~』と題した創作フレンチの夕食、さらにはスパトリートメントなども用意された充実内容。

もちろんメインの剣術稽古は、1日約1時間半ずつ2日に渡ってマンツーマンでみっちりと指南される。

地下駐車場からの入口。
玄関で正座して出迎えるスタッフや、畳敷きのフロアに日本旅館のおもてなしを感じる。

星のや東京はオフィスビル群に囲まれた都心の宿泊施設ながら、地下2階、地上17階の空間は現代に合わせて進化した日本旅館のスタイルを踏襲。

コンセプトは「塔の日本旅館」。隅々に伝統と季節が感じられ、日本旅館らしいおもてなしは都心にいることを忘れさせるくつろぎ感に満ちている。

それは入り口の青森ヒバの重厚な玄関扉が開いた瞬間から物語のプロローグの如く幕を開ける。まずは玄関にて座したスタッフの出迎を受け、履物を脱ぐ。

館内はほぼ畳敷きで繋がり、客室や各階にあるお茶の間ラウンジなどにも和紙や竹など自然素材が多用されている。

日本伝統の建築様式を生かした現代的な畳の客室。
障子に映る外観の麻の葉くずしの柄が趣深い。

チェックインの際には持参したデジタル機器を宿に預けるのがこのプログラムの始まりだ。そして客室でひと休みし、いよいよ北辰一刀流の剣術稽古へ。

稽古は星のや東京の2階にある和の多目的スペースで行われる。用意された袴に着替えると不思議と身が引き締る。

「礼に始まり礼に終わる。稽古は礼法である挨拶から始まります」と師範の髙田宏樹さん。礼法に則って挨拶した後は動作の基本につながる雑巾がけ、そして歩足、継足、遠足、踏込の所作を行い、抜刀、構え、納刀の刀法、さらに素振りへと進んでいく。

礼法の後に行う雑巾がけも大事な稽古のひとつ。

髙田さんの見事な刀法は惚れ惚れするばかり。自らは思うような動きはできないものの、呼吸や姿勢を整え、体幹を意識することで少しずつ形になるような気がしてくる。

「武術修行の本質は戦いのためではなく、平和な世をつくるための知恵や精神を得るもの。その精神性は日本人の道徳的価値観の基礎として今なお息づいています」

髙田さんが師範の撃剣会ではこの気高い精神を未来へと継承すべく、殺法の剣術ではなく“活法”としての剣術を伝授。武芸の心構えを普段の生活にも活用できるよう指導しているという。

歩足や継足など足運びの所作の後、構えの刀法や素振りを行う。
正眼の構えを基本とし、刀の剣先の延長線は相手の喉元に置く。素振りは上段振り、袈裟振りなどを学ぶ。

そして最後は真剣をイメージした斬道という所作を体験。立てた麩(試斬麩)の試し切りを模擬刀で行うのである。

1日目の練習を経て2日目が本番。稽古で学んだ一つひとつを踏まえ、息を整えて精神を統一し、袈裟斬りで一刀両断!

結果、1日目には割れてしまった試斬麩がスパッとした切り口に。正眼の構えに戻るまで表情を変えず集中するようにと言われていたのに、つい笑みをこぼしてしまったのは完璧ではなかったが、今まで感じたことのない爽快感と達成感を覚えた。

「体のあらゆる部位に意識を向け所作をこなすことが重要。稽古後は普段使わない部位の筋肉疲労が起こるかもしれませんが、脳疲労は解消され充実感を得ることができます」

デジタル機器を手放して自分自身と向き合う。時にはそんな時間が必要だと改めて感じ入った。

朝6時半からは黙想。正座をして手を組み、目を半眼にして呼吸を整える。
通年行われている地上160mのビルの屋上での「天空朝稽古」にも参加可能。スカイツリーや東京のビル群も一望のもと!

高田宏樹成雲

北辰一刀流撃剣会師範
北辰一刀流玄武館特練

北辰一刀流五世、六世宗家に剣術師事、剣舞一刀流宗家四世に剣舞師事、 両者の技芸を融合させた「武術舞」を六世監修のもと確立し、北辰一刀流 撃剣会として創設。星のや東京での剣術稽古の師範も勤める。東京都出身 31歳 。

「脱デジタル滞在・東京 〜武士の鍛錬〜」

デジタル機器を手放し、江戸時代から続く剣術の稽古に没頭して自分自身と向き合う1泊2日のプログラム。武士の鍛錬によって集中力や精神力を鍛えるとともに、都心に湧き出る温泉で心身をリフレッシュする。

料金:1名 94,380円(税・サービス料込)宿泊料別
含まれるもの:剣術稽古、袴レンタル、スパトリートメント、温泉、夕食、朝食
定員:1日1組(1〜2名)

夕食
「Nipponキュイジーヌ~美食の集い~」

日本各地で育まれた伝統的な食文化、郷土料理を、総料理長の岡亮佑氏が独自の感性で現代に置き換え、フランス料理の技術と融合させた独創的なコース料理。

仏料理の技術と日本人の感性で世界観を創造する総料理長・岡亮佑氏。
炊きたてのお釜ご飯と四季折々のおかずが彩り豊かに並ぶ和朝食。

江戸時代の参勤交代に着想を得て、食材が集結する東京だからこそ味わえる逸品が供される。料理名から想像する楽しさも堪能したい。

■始まりの一品(東京・江戸)

江戸の四大名物料理から「蕎麦」と「ウナギ」を取り入れ、フランス料理の技法でアレンジした逸品

■あいまぜ(三重)

栗南瓜をクロメスキに仕立て、春菊と蓮根餅などをちぢみホウレン草で包んでセリのソースで

■りゅうきゅう(大分)

大分県の郷土料理。鮮魚に絡めたごまだれの旨みに、カリッとしたゴマチュイルがアクセントに

■あほだき(三重)

じっくり火入れした牛肉に三重の郷土料理の塩分を抜いたたくわんの「あほだき」と牡蠣を添えて

星のや東京

コンセプトは「塔の日本旅館」。
地下2階、地上17階の別世界

最上階17階にある地下1500mから湧き出る天然温泉「大手町温泉」。天井が空いた露天風呂も。泉質は塩化物強塩温泉。

各客室階に設けられたお茶の間ラウンジで寛ぐ。

東京都千代田区大手町一丁目9番1
050-3134-8091 (星のや総合予約 9:30〜18:00)
チェックイン・アウト/15:00・12:00
客室数/84
料金/11万2000円~(1室1泊あたり、食事別、税・サービス料込)
アクセス/東京駅丸の内北口より徒歩10分、東京メトロ大手町駅A1,C2c出口より徒歩2分

文/岩谷雪美 撮影/新井寿彦(一部:星野リゾート)

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【北欧デザインの巨匠】アルヴァ・アアルトと名作家具~魅力と代表作 https://otokonokakurega.com/furniture/alvar-aalto/ Mon, 01 Apr 2024 02:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=furniture&p=84543
この記事では、アルヴァ・アアルトの家具が気になっている人へ
・ アルヴァ・アアルトの家具のデザインの特徴
・ アルヴァ・アアルトのおすすめ家具
について解説。名作家具を住まいに迎えるにあたり、失敗・後悔のない選択肢を見つけることができます。

アルヴァ・アアルトとは?

20世紀の北欧を代表する建築家・デザイナーであるアルヴァ・アアルト(1898〜1976)。本名はフーゴ・アルヴァ・ヘンリク・アアルト。

フィンランドの自然をモチーフにした独創的なスタイルで、生涯にわたり名作を生み出し続けた北欧デザインの第一人者。建築のみならず、家具や絵画、プロダクトデザイン、そして自身が設立したアルテック社の経営者としてモダニズム文化を促進するなど、その活躍ジャンルは多岐にわたる。

アアルトの家具デザインはミニマルながら高い機能性を兼ね備える。自然素材を活かした温もりのある家具や、有機的で美しいフォルムの作品は、フィンランド国内だけでなく世界的に評価され、その後の北欧デザインのスタンダードとなるほど大きな影響を与えた。

アアルトの生い立ちと経歴

出身

1898年、フィンランド・クオルタネに生まれたアアルト。父は測量技師のヨハン・ヘンリク・アアルト、母はセルマ・ハクステット。

幼い頃から製図や測量に触れ、絵を描くことが好きだったことから建築家を目指し始める。また、父が所有していた雑誌で建築家のエリエル・サーリネンを知ったことをきっかけに、アアルトは建築と出会ったと言われている。

ヘルシンキ工科大学で建築を学ぶ

1916年から1921年までヘルシンキ工科大学に在籍。フィンランドの建築家・教授・画家であるアルマス・リンドグレンのもとで本格的に建築を学び、在学中に両親の家を設計する。

建築設計事務所の立ち上げ

ヘルシンキ工科大学を卒業した後、1923年にユヴァスキュラ市に自身の建築設計事務所「Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)」を開設。この頃からアルヴァ・アアルトと名乗り始める。この名前にした理由は、建築家リストのトップに名前が載ることを考慮したからなのだとか。

家具メーカー「Artek(アルテック)」の創業

1924年にはヘルシンキ工科大学在学中に知り合った建築家のアイノ・アアルト(アイノ・マルシオ)と結婚。

翌年1935年には、「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に、妻のアイノ・アアルト、フィンランドのアートコレクターであるマイレ・グリクセン、美術史家のニルス=グスタフ・ハールと共同で「アルテック」を設立する。

社名のアルテックは、「アート」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語。家具や照明器具、テキスタイルなど、数多くの名作を世に送り出しており、アアルトの理念そのものと言えるだろう。

アアルト自邸の建築

1936年、アアルト夫妻はヘルシンキのリーヒティエ通りに自邸を建築。木材がふんだんに使われた温かく心地の良い空間で、建物と家具のほとんどをアアルトがデザインした。

現在は、アルヴァ・アアルト財団が管理・運営を担い、年間を通してガイド付きのツアーでの見学が可能。ミュージアムショップではグッズなどのお土産の購入もできる。

室内には、アアルトが実際に使用していた製図用具や図面、模型なども展示されており、アアルトの気配やその素晴らしいセンスを感じることができる。

ドキュメンタリー映画「アアルト」の公開

アルヴァ・アアルトの生誕125周年にあたる2023年には、アアルトの人生と彼が生み出した作品を巡る映画作品も公開。

妻・アイノとの手紙のやりとりや、同世代を生きた建築家、友人たちの証言などを盛り込みながら、アアルトの知られざる素顔やデザイナーとしての人生をを躍動感溢れるタッチで描く。後世に残る名作の誕生秘話も必見。

映画を通して、アアルトの作品やフィンランドの空気感をより鮮明に感じられるはずだ。

アアルトがデザインした家具の特徴

出典:FLYMEe(フライミー)

もともと建築家であったアアルトは、「建築物は家具と補い合うことで初めて完成する」という理念から、自身が設計した建物内に設置する家具や照明などのデザインも手掛けるようになる。

そのデザインは、木材などの自然素材を使った有機的なフォルムが特徴的で、常に人と自然に配慮した作品づくりを続けた。ミニマルながら高い機能性を誇ることも、アアルトの作品が評価される理由だ。

アアルト最大の発明・曲げ木技術「Lレッグ」

アルテックの家具デザインを特徴づける「Lレッグ」は、アアルトが考案した曲げ木の技術。「アアルトレッグ」とも呼ばれ、1933年には特許を取得している。

無垢材に20cm程度のスリットを入れてベニヤ板と接着剤を挟み込み、機械で加熱して90度に曲げるという技法で、シンプルで機能的なデザインを生み出せる。強度と安定性に優れており、丸みを帯びた形状がデザインのポイントにもなっている。

テーブル・椅子・ベンチなど、アアルトがデザインした家具に多く用いられている。

アアルトがデザインした名作家具&インテリア

トレンドに左右されることなく、今も昔も支持され続けるアアルトの作品。あらゆる環境に馴染む普遍的なデザインと機能性には、アアルトならではのこだわりが詰まっている。ここでは、数々の名作の中から厳選した代表作を紹介していく。

スツール60

「スツール60」は、1933年にアルヴァ・アアルトによりデザインされた、アルテックを象徴するアイコニックなアイテム。アアルトが設計したヴィープリ図書館で使用するための椅子としてデザインされ、木材をL字に曲げる技法「Lレッグ」を初めて取り入れた初のアイテムである。

シンプルで実用的なデザインと豊富なカラーバリエーションも特徴で、ナチュラル、ホワイト、ブラックといった定番色から、オレンジ、グリーンなどのポップなカラーと仕様を展開する。

椅子としてだけでなく、ソファやベッドのサイドテーブル代わりにしたり、植物などをディスプレイする台として使ったりと、さまざまなシーンで使える汎用性の高さも魅力。スタッキング可能で、軽くて持ち運びやすいため来客用椅子にもおすすめだ。

95テーブル

存在感と温かみのあるアアルトのテーブル。中でも代表的なアイテムである「95 テーブル」は、窓辺や壁際に寄せて設置することで空間を有効活用できる半円形のテーブルだ。テーブル脚には「Lレッグ」を応用している。

奥行きは60cmあり、少人数での食事や作業にも程よいスペースを確保できる。さらに、長方形テーブルと組み合わせて設置することも可能。ライフスタイルに合わせてレイアウトの幅を広げられる高い汎用性も魅力だ。

アアルトベース

世界で最も有名なガラス作品とも称される「アアルトベース」。その名の通り、アルヴァ・アアルトによってデザインされたガラス製の花瓶で、iittala(イッタラ)が1936年に発表したコレクション「アルヴァ・アアルト コレクション」の1アイテムである。

しなやかな曲線美を描く有機的なフォルムと、澄んだ空気のようなガラスの表情が魅力。無造作に植物を生けるだけでもさまになり、少ない本数の花や枝ものも思いのままに生けることができる。花を生けるだけでなく、単体もしくは複数個をそのまま並べて飾ったりと、オブジェのように楽しむのもおすすめだ。

豊富なサイズ展開に加え、美しい透明感のクリアカラーや、温かみのあるブラウンなど、イッタラ独自のカラーレシピによる絶妙な色合いのカラーバリエーションが揃っている。

レプリカ(リプロダクト)について

多くの名作家具と同様に、アルヴァ・アアルトの作品にもリプロダクト品(ジェネリック)がある。一見、本物とほぼ遜色ないデザインで安く買えることから一定の需要はあるが、購入はおすすめしない。

オリジナルのデザイナー・ブランドが手掛ける正規品や、本家から正式に技術と権利を継承した家具メーカーが製作するプロダクトは品質と系統の両面で資産価値がある一方、安価なリプロダクト品はデザイン性や品質が劣る、耐久性に難がある、リサイクル時に値段が付かないなどのデメリットがある。

アルヴァ・アアルトの作品を購入するなら、アルテック社の手掛ける正規品がおすすめ。正規輸入代理店や、アルテック社の製品を取り扱っていることを明示している家具ショップで購入することで、安心の保証が受けられる。ヴィンテージ品を買う場合も状態の良い良品を取り扱うショップで購入することで、新品より少しお得に買うことができ、売却する時も価値が下がりにくくなる。

アルヴァ・アアルトのプロダクトを買うならこのショップ

アルヴァ・アアルトの家具やインテリは、ブランド直販のショップのほか、インテリアのセレクトショップで購入することもできる。

セレクトショップから購入するメリットは、独自のポイントシステムやサービスを利用できること。キャンペーンを利用すると、よりお得に手に入れることができることも。また、他のデザイナーやブランドの家具も揃っているため、いろいろと組み合わせて部屋をコーディネートしたい場合もおすすめだ。

ここでは、正規品の取扱店で、オンラインで購入できるショップを紹介していく。

CONNECT(コネクト)

北欧のブランドの家具や照明を販売しているインテリアのセレクトショップ「CONNECT」。商品代金(税抜)の1%が還元されるポイント制度があり、1ポイント=1円として利用できる。

家具・照明を1年間、無料で保管してもらえるサービスがあり、新築やリフォームで完成はまだ先だけど在庫があるうちに買っておきたいときに便利。限定販売商品など個数制限がある商品で活用できるサービスだ。

アルヴァ・アアルトのプロダクトは、チェアやスツール、テーブル、ソファ、照明など、多く取りそろえている。

ACTUS(アクタス)

「ACTUS」は、北欧やイタリアなどのヨーロッパを中心に、北米やアジアから輸入した家具やインテリアを販売するライフスタイルストア。オリジナル商品も展開している。全国各地に実店舗もあり、家具の販売だけでなく、リフォームやインテリアコーディネートなどのサービスも提供している。

アルヴァ・アアルトのプロダクトは、アルテックの家具や照明のほか、イッタラのアアルトベースも購入できる。

ポイント制度もあり、100円(税抜)ごとに1ポイントが付与される。購入金額によりランクアップし付与率があがる。

FLYMEe(フライミー)

「FLYMEe」は、1000以上のブランドを取り扱う家具・インテリア通販サイト。リーズナブルなアイテムから高級デザイナー家具まで取りそろえていて、幅広いテイストから好みの家具を探したい人におすすめだ。

アルヴァ・アアルトの家具も豊富にあり、スツール60と合わせて使えるクッションなどのファブリックもラインアップしている。

ポイント制度は、累計購入金額により会員ステージが変更になり、付与率は1~10%。累計購入金額には期間の区切りがないので、長くお得に利用できる。

アアルト家具でワンランク上の暮らしを

シンプルで機能的でありながら、自然の美しさを感じさせる家具や雑貨を多く生み出したアルヴァ・アアルト。そのデザインは、世界中で高い評価を受けており、多くの人々に愛されている。

アルヴァ・アアルトの家具は、モダンなインテリアや北欧インテリアなど、シンプルなインテリアが好きな人におすすめ。高品質で長く愛用できる名作家具を自宅に迎い入れて、暮らしをより一層グレードアップさせてほしい。

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浄土宗開宗850年 特別展「法然と極楽浄土」開催!極楽浄土への祈り「法然」 https://otokonokakurega.com/meet/curiosity/97145/ Sun, 31 Mar 2024 01:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97145 – Latest Issue 最新号 –

時空旅人 2024年5月号 Vol.79
「法然 極楽浄土への祈り」好評発売中!

|Featured Story|

平安末期。内乱や災害、疫病の頻発によって世は乱れ、人々は絶望していた。そこに現れたのが阿弥陀仏の名号を称えることで、誰もが極楽浄土に往生すると唱えた法然上人だった。

貴族から武士が台頭する乱世へ。末法の世に現れた救世主。親鸞、日蓮、栄西、道元……後人に大きな影響を与えた法然の生涯と教えとは。そして民衆への優しい眼差しとは。

【巻頭特集】特別展「法然と極楽浄土」

法然による浄土宗の立教開宗、弟子たちによる諸派の創設と教義の確立、そして大きな発展を遂げた江戸時代……。

八百五十年に及ぶ浄土宗の歴史を、貴重な名宝でたどり、万人の救済をめざした彼らの生き方に触れる。

【メイン特集】奥州歴史紀行

浄土宗開宗八百五十年に際し、法然の遺跡をたどる旅に出よう。

彼が生涯で念仏弘通の生活を営んだ東山吉水の地。すなわち浄土宗総本山・知恩院にまずは訪ねてみたい。  

【綴じ込み】法然と仏教史

法然によって浄土宗が生み出され、広められた頃、台頭し始めていた武士の時代は未だ不安定な状態であった。そんな末法の世を救うための教えとして浄土宗は人々を照らした。

末法の世に生まれた優しき教えとは。時代の閉塞感が漂う今こそ、法然の思いを学びたい。

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今夜は一刻者と、/永瀬正敏×若木信吾 特別対談 https://otokonokakurega.com/meet/ippin/97039/ Fri, 29 Mar 2024 01:00:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97039 俳優・写真家として活躍する永瀬正敏が、各界の一流を迎える対談を行った。ゲストは写真家で映画監督でもある若木信吾さん。

約30年前の雑誌撮影で波長が合ったというふたりが、写真や旅、お酒をたしなむ豊かな時間について存分に語り合った。

対談中には、永瀬正敏が写真家としてゲストを撮影。そのこだわりの作品にも注目いただきたい。

【プロフィール】
永瀬正敏(ながせまさとし)
俳優・写真家。1966年生まれ、宮崎県出身。83年に俳優としてデビュー。
写真家としても国内外で多くの個展を開き、これまで9冊の写真集を発表。2018年、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
2021年5月、宝酒造の全量芋焼酎「一刻者」アンバサダーに就任。

若木信吾(わかぎしんご) 
写真家・映画監督。1971年、静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真学科卒業。現在は雑誌・広告・音楽媒体・映画監督として作品を手掛けるなど、幅広い分野で活動中。
2010年には、故郷の浜松で書店「BOOKS AND PRINTS」をオープンし、国内外から集めてきた写真集はもちろん、絵本、小説、雑貨なども販売。

写真と映像、それぞれの魅力とは?

永瀬正敏(以下、永瀬) 若木さんには「一刻者」のキービジュアルを撮影していただきましたが、実はこれまでも何度か撮ってもらっているんですよね。

若木信吾(以下、若木) 最初は確か1996年か97年の雑誌のファッションポートレートで、モノクロで撮った記憶があります。そこから30年の間に何回か撮らせてもらったけれど、一番覚えているのは車の撮影かな。

永瀬 すごく覚えています。とても楽しかった。

若木 雑誌の撮影は、広告と違ってコンテ(撮影台本)がないじゃないですか。だから現場で思いつくまま、相手にこうしてくださいとお願いするんですが、当然「それはできない」と断られる場合もままあって。でも、永瀬さんに「NO」と断られたことはこれまで一度もないですね。

永瀬 (笑)そのときは何をやりました?

若木 車のウィンドウから車内に潜り込み、反対側のウィンドウから出てきてほしいとお願いしました。俳優界の大スターに思いつきで言ったことをやってもらえて、すごく嬉しかったです。

永瀬 あのときは写真だけでなく、動画の撮影もありましたよね。若木さんは映画監督もされているけれど、写真と映像の違いは何か感じていますか。

若木 どちらも物語性があるんだけど、写真の場合だと、静止しているものを見つめることで、物語を自ら発見していく。映像の場合は、次から次へと目の前のものが変化していくので、それを追いかけながら、相手から物語を見せてもらえるという感じでしょうかね。

永瀬さんも長く写真家として活動されていますが、自分が被写体のときと、撮影しているときに何か違いはありますか。

永瀬 映像と写真というのは、僕の中では同じ表現としては変わらないんですが……。

物語性で言うと、昔、ある映画で、当時はまだフィルムでの撮影だったんですが撮影監督の方が、その1コマをプリントしてプレゼントしてくださったんです。そこに「1コマの映画です」と書いてあって、ああ、なるほどと思いました。

あと、著名なカメラマンの方に自分の写真を見ていただいたとき、1枚だけ手が止まって「永瀬くん、これがいい写真っていうんだ。写真の前後の時間が想像できる」と言われたことがあって。

若木 映像の中のひとコマも物語であったり、1枚の写真から前後が想像できる物語であったり。

永瀬 そう。いとこ同士みたいな感じで。

わかりたい、知りたいから、続ける

若木 永瀬さんが写真を撮り始めたきっかけは、明確にあるんですか?

永瀬 元々写真好きっていうのもあったんですが、80年代頃って枠組みをきっちりしたい、みたいな風潮があって。「役者とはこういうもの」「アイドルとはこういうもの」というカテゴライズがあったけれど、そのうちにアイドルも自分で詞を書き始めたり、レコードジャケットのビジュアルに意見したりしたじゃないですか。当時から写真を撮っていたので、そういう仲間から「作られていない今の本当の自分を撮ってくれ」と言われたりして。

あともうひとつ、祖父が写真館をやっていたんですよ。

若木 つまり、小さい頃からカメラとかスタジオとかに慣れ親しんでいた?

永瀬 いや、祖父が鹿児島で写真館をやっていましたが、戦後は廃業したんです。戦時中に食糧難になって、家族を食わさなきゃと知り合いにカメラを「後で買い戻す」という約束で渡したら、そのまま何ももらえず逃げられてしまって、それ以降、カメラを持たなかったんだそうです。

ただ、あるとき実家の倉庫を掃除していたら、祖父が書いた研究ノートが出てきたんですよ。日中シンクロ(明るい屋外で強制的にストロボを発光させて、影の暗い部分を明るく照らすテクニック)の方法とか、いろいろと書いてあって。

若木 ええ、それはすごい!

永瀬 それを読んで、「ああ、おじいちゃんは本当に写真が好きだったんだな、真剣だったんだな。なのに志半ばで諦めざるを得なかった…。僕もちゃんと祖父の好きだったポートレートを撮れるようになりたいな」と思ったんです。DNAのリベンジといいますか。

若木 一からよみがえらせると。

永瀬 ええ。だからいまも天国の祖父に助けてもらいながら撮らせてもらっている感じです。

「いま、この瞬間」が本物に感じられるように

永瀬 一般の人を撮るときと、今回の「一刻者」のキービジュアルのようにきっちりした世界観をつくって撮るときの、心構えの違いはありますか。

若木 「一刻者」に関していうと、背景に本棚があり、本を読みながら「一刻者」を飲んで味わうというテーマがしっかりとあったので、それは俳優・永瀬正敏にお任せしました。表情を含め、ディレクションはほとんどしていないです。

ただ、その空間に永瀬さんが入ってきたときに、気持ちもグッと入れるような現場づくりには気を配りましたね。ファインダーを覗くと、「なんか来たな」とか「まだ入れていないな」というのはわかるものなんです。つまりそれは、演技だけど、本物だということ。カメラマンは「いま、この瞬間は本物なんだ」と信じられるときにシャッターを切れるかどうか、それが勝負です。

カメラが旅の出会いを誘う

若木 永瀬さんが写真を撮っていて一番嬉しいのはどういうときですか?

永瀬 撮らせていただいた方から「ちょうだい」と言われるときですね。若木さんは?

若木 僕は撮っていればずっと嬉しい(笑)。新しい写真が撮れたときとか、いままでになかった世界の見方が写りこんだときは、特に嬉しいです。

永瀬 旅先にはカメラは必ず持参されますか?

若木 カメラがないとダメですね。あと、フィルムを入れてないと駄目。空(から)のカメラを持っているのが一番不安です。永瀬さんは何か旅の思い出はありますか。

永瀬 撮影のために旅をすることはあまりなくて。海外だと、仕事で呼んでいただいて、そのときにカメラを持参して、出会った人を撮影することが多いです。

若木 例えば映画の撮影や映画祭だと、他の役者もいますよね。僕らカメラマンは、やはり役者に「撮らせてください」というのはなかなか言いづらい。マネジメントのこととか考えてしまうから。でも役者同士ならもう少し気軽に撮れそうだなと思うのですが、いかがですか。

永瀬 確かに気軽に撮れる場合はあります。ただ、やはり関係性は重要ですね。昔から知っている人であれば勝手に撮って「後で見てね」という感じでOKなこともあるけれど、「使わせてもらうときには事務所に通しますね」というのはきちんと伝えます。

若木 カメラがあったからこそ、誰かと仲良くなれたというのはありますか。

永瀬 旅先だとそれで助けられたというか、コミュニケーションがとれるところはありますね。特に昔は「プリントして送るね」とか言えましたし。写真を通して仲良くなった方も多いです。

永瀬正敏が若木信吾を撮る

永瀬は、バック地の前に立って自前のカメラを構える若木さんのポートレートを撮り始めた。

1分ほどシャッターを切ったあと、次は床に座った写真を撮らせてほしいと提案。自らスタジオの端にあった椅子などを運び出して場所をつくった。

カメラ位置が決まったところで、若木さんに座ってもらい、「若木さん、ひとつだけお願いごとがあって、あまり下を向くと顔が見えなくなるので、ちょっとだけ上を向いてください」と声をかけた。

若木さんが自前のカメラのフィルムチェンジをする姿は、大きな子どもが大切なおもちゃをいじっているようだった。

永瀬はカメラを手持ちに替え、最後には互いにカメラを向け合った。

撮影:永瀬正敏
撮影:永瀬正敏

酒をたしなむ、幸福な時間

永瀬 では、あらためて「一刻者」で乾杯。

若木 乾杯。

永瀬 今日は撮影もさせていただいて、ありがとうございました。

若木 永瀬さんって、撮っている最中にすでに仕上がりのイメージはありますよね?

永瀬 ええ、なんとなくありますね。もともとかっちりとしたポートレートとして、背景を立てライティングして撮る予定だったけれど、スタジオに入ったときに、若木さんならもしかしたらこっちもありかなと思って、白ホリからはずれたところでも撮らせていただきました。

若木 楽しかったです。永瀬さんは撮りたいイメージがはっきりしていて、「いまこの時だ!」という、いつシャッターを押したらいいか、自分の好きな瞬間を知っている。その能力がとても長けていて、まさに写真家だなと感じました。さきほどモニターでいくつか上がりを見たけれど、僕が写っているのに、そこに永瀬さんを見ることができて、まるで永瀬さんのセルフポートレートみたいだなと。撮影者と被写体がシンクロする瞬間というんでしょうか。そういう瞬間が撮れる方だと思いました。

永瀬 そんなに褒めていただいて、嬉しいです。若木さんは「一刻者」のキービジュアルを撮ったのをきっかけに、家にも置くようになったとか。

若木 そうなんです。紺色のラベルと紫のラベルの両方があって、紫のほうがいまのお気に入り。水割りで飲んでいるのですが、味や香りがはっきりしているのがよくわかります。

「いっこもん」というのは、頑固者という意味だそうですね。

永瀬 ええ、南九州の話し言葉です。実際、宮崎県の黒壁蔵を見学したのですが、本当に細かいところから職人さんがこだわっているし、「いいものを味わっていただきたい」という深い思いに、正直感激しました。

若木 まさにこだわりの酒ですね。飲む時はひとりが多いですか?

永瀬 そうですね。誰かとももちろんありますが。あと、撮影終わりの打ち上げに「一刻者」を持参して、一緒に作品をつくってきた仲間がそれを取り合ってくれる姿を見ながらほくそ笑んじゃうことも(笑)。「美味い!」なんて声が聞こえちゃうと、よしよしと。

若木 嬉しいですね。僕はひとりで飲むことが多いです。妻もあまり飲めないし、逆にお酒があることで、ひとりの時間をつくれるという面もある。

永瀬 お酒を飲むシーンって、本当にいろんなシチュエーションがありますよね。僕にとっては「一刻者」の甘みが特別なものなので、それを飲んでリラックスしたいときもあるし、逆にいろいろ考えたりするための起爆剤にもなる。とてもポテンシャルの高いお酒だと思います。

若木 シチュエーションでいうと、僕は浜松で写真集がメインの書店をやっているくらいなので、写真集は見ながら飲むときもあります。

永瀬 なるほど。

若木 新しい本や写真集を買って、最近はシュリンクに入っているので、その封を切る日は「一刻者」を飲むぞとか。

永瀬 超スペシャルな時間になりそう。

若木 ぜひ、次回はご一緒に。そして、これからも永瀬さんを撮らせてください。

永瀬 嬉しいです。僕、自慢できることがほぼないんだけど、その中で唯一自慢できるのが、出会い。若木さんとの出会いも、「一刻者」との出会いもそう。大事にしていきたいです。

若木 これまでの30年のように、今後もお互いにさらなる変化や進化があれば、また面白いですね。

永瀬 昔はいまいちできなかったけれど、いまならできる! みたいなのもありますし。

若木 ぜひやっていただこう。次回の打ち合わせには「一刻者」を持参します(笑)。

永瀬 (笑)いや、僕が持っていきますよ。

全量芋焼酎「一刻者」

“一刻者(いっこもん) ”とは、南九州の話し言葉で頑固者のこと。
「一刻者」は造り手が “芋だけでつくるおいしさ” に頑固なまでにこだわり続ける芋100%の本格芋焼酎です。

原材料に南九州産のさつまいもを100%使用し、独自の“芋麹仕込”と“石蔵貯蔵” による芋本来の甘い香りと上品な味わいが特長。本格焼酎の本場、宮崎県にある 「宮崎・日向 黒壁蔵」で仕込む全量芋焼酎。

2022 SFWSC特別金賞受賞
2023 ISC金賞受賞


【商品概要】
アルコール分:25%
容量/容器:720ml/壜
参考小売価格:1528円(消費税抜き)

■お問い合わせ先
宝ホールディングス株式会社 お客様相談室  0120-120-064(9時~17時 土日祝日を除く)
一刻者ウェブサイト https://www.ikkomon.jp/

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「役者であることを核に、生きる意義としての“欲”を原動力にし続けたい」|俳優・窪塚洋介 https://otokonokakurega.com/listen/interview/96931/ Thu, 28 Mar 2024 08:50:00 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=listen&p=96931 かつての人気テレビドラマでの強烈な個性や、レゲエDeeJayとしての活動などを通し、ヤンチャなイメージを抱いている人は多いかもしれない。いま、40代半ばとなった窪塚洋介さんは確かにヤンチャだ。だが強固な芯を持ちながらも自由に柔軟に、心が求めるものを追い続けるという意味において、だ。

近年は役者のほかにも日本酒プロデュースなどさまざまな活動を展開する窪塚さんに、その思いの源泉ややすらぎの時間などを、居心地のよいバーでお酒など楽しんでもらいつつ伺った。

【プロフィール】俳優 窪塚洋介
1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年俳優デビュー。2001年公開映画『GO』で第25回日本アカデミー賞新人賞と史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。2017年公開『Silence-沈黙-』(マーティン・スコセッシ監督)でハリウッドデビューを果たし、2019年にはBBC×Netflix London制作の連続ドラマ『Giri/Haji』でメインキャストを演じるなど、海外にも積極的に進出。2024年4月からWOWOWで放送・配信される『TOKYOVICE』Season2にも出演。映画を中心に国内外問わず多数の話題作に出演し、舞台をはじめ音楽活動やモデル、執筆と多彩な才能を発揮。自身のYouTube番組やゴルフウェアブランドのプロデュースにも注力している。

■“役者”であることを叩き込まれた10代の頃

小さい頃、芸能界は漠然とした夢でした。俳優もタレントも歌手も芸人も区別なく、なんとなくテレビで観る世界に憧れていましたね。それで母からの縁で紹介された芸能事務所に16歳から所属したんですが、そこがゴリゴリの役者系で。演技というものを厳しく叩き込まれました。素直だったんでね(笑)、俺はタレントでも歌手でもなく役者なんだと肝に銘じました。おかげで早くからさまざまなドラマや映画に恵まれました。その頃は役者はミステリアスであるべきだと教わっていたので、20歳くらいまではプライベートは出さずにいましたね。

でも、自分は本来そういうタイプではないんです。いろんなことに挑戦したいし、オープンでいながら底を見せないのが本当のかっこよさじゃないかと。それでだんだんレゲエを歌ったりファッションブランドのモデルをしたり。作品の中で与えられた役に完璧になりきれるなら、プライベートを出すことも恐くないと思えるようになりました。

本も何冊か出してますが、個人的なことをどんどん書いています。言葉は好きですね。10代から、心に刺さった言葉をノートに書き留めていました。漫画や哲学書、映画、目にした広告、知人の言葉……。もともと母や祖母がよく格言など言っていたんですよ。「人間万事塞翁が馬」とか。言葉の力って生きていくうえで如実に力を発揮するものだと実感してきました。言霊というものも確かにあると思いますし。実家にあるノートはもう何十冊か。今はスマホに入れていますが。そんなさまざまな言葉を咀嚼して、自分の核といえるものができてきたんだと思います。最新の『窪塚洋介の人生攻略本』も、そうやって熟成させた思いの結果かも。もちろん人としゃべるのも大好き。母からは「口から生まれてきた」とよく言われてましたね(笑)。

■転落事故を経て復帰しながらも、苦しかった10年余

マンション9階からの転落事故は……。いまだにどうしてそんなことになったかわからないんです。前後の記憶もない。ただ、あれがあってよかったと今は思っています。こうして必ず聞かれ、武器にもギャグにもなる。いろいろ形を変えながら今の力になっています。

でも事故後の10年間くらいはきつかったですよ。プライベートで初めて会う人にも「自殺とかじゃないんです」と言い訳から始めないとならない。会った人と最初から普通にフラットにしゃべるという行為を渇望し続けていました。役者をすることやレゲエを通して少しずつ戻していった感じですね。

完全に戻れたなと感じたのは『沈黙―サイレンス―』(2017)の出演からでした。

実はテレビドラマには21歳くらいから見切りをつけていました。当時のヒップホップではフェイクという言葉が鋭い批判として使われていました。多感な時期、自分は本物でいたいという気分とシンクロし、テレビ番組作りのさまざまな配慮や熱量の低さが残念だし、楽しくないなと感じて。だから事故後も映画と舞台でやっていました。

『沈黙―サイレンス―』のオーディションは僕自身の準備不足もあって1回目は落ちているんです。けれどマーティン・スコセッシ監督はその後もキチジロー役を探し続けていたそうで、3年後、2度目のオーディションに呼ばれ、そこで決まりました。

憧れの監督のもとでの撮影中はずっと夢の中にいるようでしたね。大きな役をもらえてうれしくて、台湾での撮影は振り返ればけっこう苛酷でしたが、その間ずっとつらくも苦しくもなく、ただただ幸せでした。持っているものを全てぶつけることができました。この作品を経て、引け目なく人に会えるようにもなりました。

今は映画と舞台だけにはこだわっていません。配信ドラマも自由で面白いことができていますしね。地上波ドラマにも久しぶりに出演しました。

日本酒やゴルフウェア……、好きだからこそ広がるプロデュース

キューバ産の葉巻を燻らせる窪塚さん。熟成されたシガーの香りが漂う

近年は副業的な仕事もかなり増えています。どれも好きなことを追っているうち気づけば……というものばかりです。

たとえば日本酒『福霧』のプロジェクト。そもそも僕は酒も煙草も好きなんで、腸の健康は大事かなと思って以前から発酵食品や根菜、海藻など摂って腸内環境を整えるようにしているんです。腸活していなければ間違いなく体を壊していたはず。今はそのおかげで相殺というか、お釣りが来るくらい健康体ですよ。金沢市の福光屋さんは日本酒はもちろん米発酵飲料など腸活にいいものをいろいろ出していてお世話になっていました。それで友人を通して社長に会い、おいしい有機純米酒を一緒に作ろうと意気投合したんです。本当にいいお酒ができました。

ゴルフウェアブランド『8G SHOOT』は、2年ほど前に打ちっ放しに付き合わされたのがきっかけ。全く興味なかったのに思いのほかきれいに飛んで、自分は天才かと(笑)。ゴルフ場にも行くうち、こんなに面白いものなのかとすっかりはまってしまいました。でもウェアに好みのものがない。だから地球環境への負荷を少しでも減らせるようオーガニックコットンやヘンプ、リサイクル素材を使い、自分たちが着たいデザインのウェアをプロデュースしたんです。いつかはフルオーガニックのゴルフ場も作りたいですね。

日本の伝統工芸技術を残したい思いからは『WATASHI JAPAN』というブランドを立ち上げました。今、東京の吹きガラス職人によるまんまるなグラス「縁」を販売しています。吹きガラスでまんまるを作るって本当に難しいんです。僕も工房でちょっと吹かせてもらいましたが、とてもとても……。

陶芸もここ何年かの楽しみですね。娘を楽しませようと工房に体験に行ったら僕のほうがのめりこんじゃって。形を作った後は丹波焼の窯元で焼いてもらっています。本職の陶芸家は決してやらないようなものばかり作っていますよ。ブーメランは一度飛ばせば割れちゃうし、壺はめちゃくちゃ水漏れするし。なのになぜかギャラリーから声がかかり個展も開催するようになりました。

いい仲間たちに恵まれ、一つひとつのプロジェクトで同じ未来を目指していける。本当にありがたいし、充実しています。

どうしてそんな時間が作れるのかとよく聞かれますが、忙しいほど時間は見つけられると思うんですよ。仕事のスケジュールは早めに確定しているんで、じゃあ空いている時間にもっと頑張れるんじゃねーの?と考える。自分への刃ですね。強欲と言ってもいいかな。

世界で最も貧しい大統領と言われたホセ・ムヒカさんの言葉に「いちばん貧しいのは際限なく欲しがる人」といった意味のものがありますよね。ハッとさせられます。僕自身、足るを知るというふうでありたいと思う。けれども一方で、欲が自分を動かす原動力であり、生きている意味につながっているとも感じます。大事なのはそのバランスなんでしょうね。

■自身の核を保ち、自由に、フラットに生きていく

バーのマスターは休暇のたびにクルーズ旅行へと出かけるほど、大人な趣味を楽しんでいる

自分にとっての隠れ家ってなんだろうな……。

もしかしたらお酒のある時間かもしれません。ストレス発散だったり社交の場だったり、状況を問わずです。馴染みの店で仲間とカラオケで騒いだりするにも、一人で静かに過ごすにも、お酒があって欲しい。たまには記憶を無くすくらい飲むこともありますが、さすがに45歳にもなりましたから、こういうバーで葉巻を嗜み、ゆっくりグラスを傾ける大人な飲み方もいいですよね。

日本酒では「福霧」がお気に入りですし、ウイスキーやビオワインも好きです。飲むのも食べるのもなるべく自然なものを選びたいですが、さほど厳しくは考えていません。縛りが強すぎると仲間と楽しく過ごすのに差し障りますしね。出されたものはたいていなんでも食べますよ。

気心の知れた人だけでなく、初めましての人と飲むのも楽しいですね。転落事故後、人と会ってもフラットでいられなかった期間が長かったぶん、誰とでもニュートラルに接する状況を喜べるようになったのかもしれません。

先日は息子(俳優・窪塚愛流さん)とも飲みましたよ。20歳になっているんで。息子が3歳の頃、「いつかお前と乾杯するぜ~」みたいなレゲエの曲を出したんですけれど、おおっ、もうその時が来たか~という感じでしたね。うれしい時間でした。

欲多く、いろんなことをやっていますが、僕の根幹はあくまでも役者です。そこがおろそかになってはならないと常に思っています。

役者とは死ぬまで終わりのない仕事。20代の頃から、やったことのない役は魅力でしたし、一度組ませていただいた監督とも新たな現場の数だけ自分への発見があります。しなければならない仕事ではなく、したいからする仕事としてこの先も充実させていきたいですね。その核がしっかりとブレなければ、役者以外の好きなこと、実現したいことがどんなに増えてもバランスを取っていけるのではと思っています。常に、役者である自分というものが真ん中にいてこそです。

これからも心のままに、やりたいことに向けて全力で向かっていきます。

【作品情報】
『GTO リバイバル』

1998年に放送されていた大人気ドラマ『GTO』が26年ぶりに復活。窪塚洋介さんはもちろん、主演の反町隆史さんや池内博之さんなど懐かしのメンバー6人が再集結する。
放送日時は2024年4月1日(月)21:00〜の一夜限り。当時のことを思い出しながら、今なお色褪せることのないグレート・ティーチャー鬼塚の熱血授業をぜひご覧いただきたい。

▶︎公式URL:「カンテレ・フジテレビ開局65周年特別ドラマ『GTOリバイバル』

『TOKYO VICE season2』

(Photo: James Lisle/WOWOW)
1990年代の東京を舞台に描かれたハリウッド共同制作オリジナルドラマ。大手新聞社に勤める警察担当記者のジェイクが、ヤクザのうごめく闇社会を暴こうと奔走するサスペンスストーリーだ。

▶︎公式URL:「TOKYO VICE season2
WOWOWにて4月6日(土)スタート。毎週土曜21:00放送・配信(全10話)〔第1話無料放送〕
▶︎公式Instagram:@wowow_tokyovice

【プロダクト情報】
『窪塚洋介の人生攻略本』

窪塚さんの6年ぶりとなる最新刊。若い日から書き留めてきたさまざまな言葉を咀嚼してきた中で、人生への向き合い方や伝え方、バランスの取り方、楽しみ方、幸せの感じ方などを窪塚流にストレートに伝える。
役者としての思いなどのほか家族にまつわる内容も多く、独自の子育て流儀も披露。自身の経験に即した腸活や断食の話も参考になりそうだ。

発行:NORTH VILLAGE / 出版:サンクチュアリ出版
作者:窪塚洋介
価格:1,870円(税込)

『福霧』

寛永2(1625)年に創業した金沢市の造り酒屋・福光屋とコラボした日本酒。有機栽培の米で醸した年代も異なる幾種類もの酒を窪塚さん自身で利き酒し、そのうち3種を選んで最もおいしいと感じるブレンドに至った。
作れる量が少ないため、オンラインでの先着販売のみ。2023年12月のリリース以来、手に入りにくい酒として知られている。福霧とは、福がふんわりと広がるイメージでのネーミングだ。窪塚さん自身も愛飲し、公式アンバサダーも務めている。

▶︎公式URL:「FUKUKIRI

『8G SHOOT』

名称は“エイジシュート”。ゴルフ場の18ホールを自分の年齢以下の打数で終える意味だ。思いもよらずゴルフにはまったという窪塚さん自身の目標でもある言葉を冠したブランドは、ウェアやキャップなどを展開。環境への配慮として天然素材やリサイクル素材を用いている。ゴルフ以外でも日常に使えるデザインだ。
取材当日は窪塚さんだけでなく事務所の仲間たちもこのブランドのジャンパーやセーターを着用していた。

▶︎公式URL:「8G SHOOT

文/秋川ゆか 撮影/井野友樹 ヘアメイク/佐藤修司(Botanica makehair)

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龍神様と出会う「開運の旅」 https://otokonokakurega.com/meet/curiosity/97155/ Wed, 27 Mar 2024 05:00:50 +0000 https://otokonokakurega.com/?post_type=meet&p=97155 – Latest Issue 最新号 –

|Featured Story|

多くの人が思い浮かべる龍はーー鋭い眼光と鋭い爪、長い胴体に鱗を有す姿。日本では風、雲、嵐、天候を自在に操る、恐れ多い、神のような存在であった。

今も各地に龍神信仰や龍の伝承が残っており、神社仏閣以外にも、龍穴や龍脈など龍神様は自然の中に広く存在している。

龍神パワーがみなぎる神秘的なスポットを巡り、 パワーチャージの開運旅へ出かけよう。

第一特集は「龍神伝説を旅する」。

まずは、大河の源流となる山々の間に幻想的な風景が広がる奈良県・宇陀。数々の龍神伝説が伝わる秘境の地で、 目には見えぬ龍神の姿を追った。

第二特集は、出羽三山を訪ねる。

自然への感謝と崇拝が深く結びついた山岳信仰の聖地。新たな自分と出会うため、死と再生をたどる旅へ。

そのほか全国各地に広がる龍神伝説や福を招く縁起物のコラムなど、旅に出たくなる春にぴったりの特集となっている。

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