トロピカル・カクテルをヒントに歌った都会の大人の恋

アメリカで流行したピニャ・コラーダは、「ザ・ピニャ・コラーダ・ソング」と副題のついた『エスケイプ』という曲がヒットしたことで、さらによく知られるものとなった。ルパート・ホルムズが歌い、1979年に全米第1位に輝いたこの曲の中に、女性が「If you like Pina Colada」と投げかける一節がある。

長年連れ添ったカップルが、互いに秘密で恋の逃避行を企てるところから物語は始まる。新聞のパーソナルコラム欄に恋人候補の条件を投稿する、ラブソングだ。この詞が多くのアメリカ人の共感を得たのは、60~70年代の西海岸でティキバーという南国テイストのバーが爆発的に流行ったことが挙げられる。当時カリフォルニアからハワイへの遊覧船が出ており、いわば西海岸は南国への入り口だった。

そして誕生したのが、“トロピカル・カクテル”という概念だ。それまでジンやウイスキーといった強い酒がバーの主役であったところ、ジュースや果実を混ぜた甘口のカクテルが登場。女性が飲みやすいカクテルが生まれたのである。

第二次世界大戦以降、カリブ海のラムが物理的に入手しやすくなったことも理由のひとつといわれている。ラムカクテルは多彩なアレンジによって広く普及していった。ちなみにこの歌の歌詞は、男性の返事「Yes, I like Pina Corada」と続く。女性のみならず、男性も虜にした美味だったことがうかがえるのだ。

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「ピニャ・コラーダ」ってどんなカクテル?

プエルト・リコで誕生したピニャ・コラーダは、ラムやパイナップルジュース、ココナッツウォーターをシェイクし、クラッシュドアイスを詰めたグラスに注いで作るカクテル。真夏にはすっきりしたホワイトラムを、秋口にはコクのあるダークラムを用い、違いを楽しむのが通の味わい方。

ちなみにカクテルの名前はスペイン語で「搾ったパイナップル」を意味するという。かつてはココナッツミルクを使うのが定番だったが、脂肪分とコレステロールがなく、ミネラルやカリウムを含むココナッツウォーターを用いるのが、今時であり、海外セレブも注目する健康的な理由だ。

取材協力/海老沢忍(SCREW DRIVER) 文/沼由美子 写真/古末拓也