東西の多くの人に愛されてきたビール。ここ数年は、小規模なクラフトビール醸造所がつくる多様で個性的なビールのブームが訪れている。

日本のクラフトビールの歴史はまだまだ浅く、1994年の酒税法改正で規制緩和されたことで、小規模なクラフトビール醸造所が日本国内に誕生。大手ビール会社が製造するビールに飲み慣れている人は、クラフトビールを飲んだときの味わいに違和感を感じたはずだ。

クラフトビールにはさまざまなビアスタイルが存在し、それぞれの楽しみ方が異なる。選ぶビアスタイルによって、味やアルコール度数にかなりの違いがあるため、自分が好きなクラフトビールを探すことも大切だ。

世界に存在するクラフトビールのビアスタイルは100種類以上といわれているが、日本ではまだまだ認知されておらず、飲んだことがない人も少なくはない。クラフトビールのビアスタイルとアルコール度数を知ればビールを選ぶ楽しさと、飲み方に変化があるだろう。

本記事では、クラフトビールのビアスタイルとそれぞれのアルコール度数、加えてクラフトビールを選ぶ際に知っておくと役立つ「IBU」と「AVB」の意味をご紹介。

クラフトビールの世界

クラフトビール発祥の地であるアメリカでは、歴史的な背景からクラフトビール醸造所は「小規模である」「伝統的である」「独立している」といった定義がある。しかし、日本にはこれといったクラフトビール醸造所の定義がないと言われている。

厳密にクラフトビールと一般的なビールの違いについて、明確に説明できる人は少なくない。クラフトという言葉は知っていても、ビールと結びつけると曖昧な解釈になるだろう。

クラフトビールの歴史

クラフトビールの歴史を遡ると、1920年から1933年まで続いた禁酒法に辿り着く。

アメリカで1920年に禁酒法が施行され、1,500社以上あったビール会社が100社程度まで激減し、小規模な醸造所は廃業、もしくは、合併を余儀なくされた。1933年に禁酒法が廃止されたが、とくに個性や特徴がないラガービールが大量生産・大量流通している状況が1970年代にまで続くことになる。

1970年代になると、ラガービールに飽きたアメリカのビールファンたちが「自分の好きなビールを作って飲みたい」といった動機で、家でビールを作り始める。これをホームブリューイングという。

ホームブリューイングで腕を磨き上げたビールファンが中心となり、小規模なビール醸造所を立ち上げた。そこで、誕生したのが「多様で個性的なビール=クラフトビール」である。

現在のアメリカには、約8,000を上回る小規模ビール醸造所が存在し、ほかにはない味、アルコール度数など独自のクラフトビールが誕生し続けている。

日本のクラフトビールの歴史

日本のクラフトビールの歴史は、1994年4月に酒税法が改正されたことによって始まる。酒税法が改正される以前は、ビール製造免許を持つための条件として、年間200万リットル以上のビールを製造しなければならなかった。

1994年に酒税法が改正されたことによって、最低製造量が年間6万リットルにまで引き下げられ、小規模なビール醸造所が立ち上げられるようになった。法改正によって、1994年から1995年にかけて小規模のビール醸造所が徐々に設立され、観光地を中心にビールブームが訪れる。そして、その地域で誕生したビールのことを「地ビール」と名付けた。

しかし、1997年頃から地ビールは徐々に低迷することになる。地ビールが低迷した理由は主に2つある。それは「品質」と「発泡酒の誕生」だ。

品質は、地ビールブームに乗ってビール業界に他業種が参入したことが原因だろう。現在ほど、技術や機械が進化しているわけではなかったため、品質が保たれていなかった。

そして、時を同じくして大手ビール会社から味よりも価格を重視したアルコール飲料「発泡酒」が販売されるのである。低価格で、ほどよいアルコール度数である発泡酒が発売されたことにより、地ビールブームに終焉が訪れた。

しかし、一度は終焉が訪れた地ビールも、2011年頃からクラフトビールとして再燃し始めた。地ビールブームが去った後でも、より美味しいビールを作りたい高い志を持ったビール職人の努力が実り、味・品質・個性が向上し、国際大会で日本のクラフトビールが入賞するまでになったのである。

現在では、全国に約300程度の小規模ビール醸造所が設立され、世界に引けを取らないビール職人によって、地域の特徴を活かした多様で個性的なクラフトビールを気軽に楽しむことができる時代になった。

クラフトビールのスタイルと度数

クラフトビールと一口にいっても、さまざまなビアスタイルがあり、違いがわからない人も少なくない。ビアスタイルが変わるだけで、味わいやアルコール度数、アロマにかなりの違いがあり、選ぶ種類によって楽しみ方がその都度変化する。

初めに、ビールを作るときに必要な原材料を知っておこう。

  • 麦芽(モルト)
  • ホップ
  • 酵母

原材料は至ってシンプル。上記の原材料を使う量や発酵させる時間などを調節して味わいやアルコール度数の違いを持たせることができる。

続いて、押さえておきたいビアスタイルは5種類。

  • ピルスナー
  • ペールエール
  • IPA(アイピーエー)
  • ヴァイツェン
  • スタウト

まずは上記の5種類を知っておくと、クラフトビールの楽しみ方の幅が大きく広がるだろう。

さらに、詳しく知っておくとよりクラフトビールのことについて理解ができるポイントが「ラガーとエールの違い」だ。5種類のビアスタイルと一緒にラガーとエールの違いについて覚えておくと、クラフトビールがどういったビールなのか詳しく知ることができる。

ラガーは「ラガー発酵酵母」を使い下面発酵させて作ったビールのことを指す。ラガー発酵酵母で作られるクラフトビールは、喉越しがスッキリとしており、キリッとした味わいが特徴的。ラガー発酵酵母は、タンクの底に溜まり発酵が行われることから下面発酵と呼ばれるようになり、低温で作ることで雑菌が繁殖しにくく、一定の品質を保ちつつ大量に製造ができる。

日本で流通しているほとんどのビールが、このラガーに該当する。

エールは「エール発酵酵母」を使い上面発酵させて作ったビールのことを指す。エール発酵酵母で作られるクラフトビールは、フルーティーなアロマや甘味がとくに特徴的だ。エール発酵酵母は、酵母が麦汁の表面に浮き上がってくることから上面酵母と呼ばれるようになり、さまざまな個性を楽しみたい人に向いている作り方だろう。

ラガーとエールについて理解できたら、5種類のビアスタイルの特徴やアルコール度数を詳しく知っていこう。

ピルスナー

1842年にチェコにあるピルゼンで誕生したピルスナーは、世界で最も飲まれているビアスタイル。ピルスナーは、下面発酵して作るためラガービールに該当する。そのため、キリッとした味わいと、すっきりした喉越しが特徴的で、見た目はきれいな黄金色を帯びている。

ピルスナーのアルコール度数は、3〜5%程度のものが多く、1杯目に迷ったときに選ぶと良いビアスタイルといえる。日本のピルスナービールの代表を選ぶとすれば、世界各地の品評会で受賞歴を持つ大阪の箕輪ビール「MINOH BEER ピルスナー」が挙げられるだろう。

ペール・エール

ペール・エールは、イギリスのバートン・オン・トレントという町で誕生したビアスタイル。ペールは淡い色などを意味する英語であり、当時バートン・オン・トレントで作られていたビールの見た目が淡い色だったことから「淡い色のビール=ペール・エール」と名付けられた。

ペール・エールはピルスナーよりも、麦芽の甘味やホップの苦味を強く感じられ、アルコール度数は4.5〜6%程度のものが多い。アロマを楽しみたい人や、フルーティなクラフトビールを飲みたい人は、ペール・エールから試してみるとよいだろう。

今では、ほとんどのコンビニで見かけるようになったヤッホーブルーイングの「よなよなエール」は、ペール・エールを代表するクラフトビールといえる。

IPA(アイピーエー)

IPAはインディア・ペール・エールの略称。18世紀末、当時イギリスから植民地であったインドにペール・エールを運ぶために、防腐剤の役割を持つホップを大量に投入したことで誕生したのがIPAといわれている。

ペール・エールよりも苦味がかなり強く、アルコール度数も5〜7%以上のものが多い。IPAは、いわゆるペール・エールの強化版だと考えてよいだろう。

ただ、IPAは苦いだけではなく、柑橘系のアロマが口の中に広がるため、苦味のあとにくる爽快感と甘味が心地よく癖になるビアスタイルだ。

日本を代表するIPAは、新潟県のエチゴビール「Flying IPA」や、長野県の志賀高原ビール「志賀高原IPA」などがある。

ヴァイツェン

南ドイツで誕生したヴァイツェンは、ホップと大麦に加えて、小麦麦芽を50%以上使って作られるエールビールだ。しかも、小麦麦芽を必ず50%以上使わないとヴァイツェンとは呼べないのである。

小麦麦芽を使うことで、バナナのような南国フルーツを想像させるアロマと甘さを味わえるが、ビールらしい苦味はほとんど感じられない。レモンのような明るい見た目で、アルコール度数は4.5〜5.5%と女性や苦いビールが得意でない人でも飲みやすくなっている。

三重県の伊勢角屋麦酒のヒメホワイトや、山梨県の富士桜高原麦酒のWEIZEN(ヴァイツェン)が日本を代表するヴァイツェンビールだろう。

スタウト

アイルランド発祥のスタウトは、こげ茶〜黒色の見た目をしているいわゆる黒ビールだ。スタウトは「強い」という意味で、アロマや色がしっかりしている特徴がある。

一口目は、コーヒーやチョコレートを思わせる甘さと力強さを感じられるが、飲み慣れると意外とすっきりしていてドライな口当たり。ラガー系・エール系のどちらのスタウトだったとしても1杯目に飲むと重たく感じるが、ゆっくり少しずつ飲む場合に適しているビアスタイルだといえる。

一般的なスタウトのアルコール度数は、5〜7%だが種類によって10%を超えるものもあるため、酔いたいときにおすすめのクラフトビールだろう。

代表的なスタウトには、よなよなの里の「東京ブラック」や、常陸野ネストビール「スウィートスタウト」あたりが有名だ。

IBUとABVを知っておこう

クラフトビールが置いてあるお店に行くと、ビール名の横にIBUとAVBと書いてある。このIBUとABVの意味を知っているだけで、選ぶクラフトビールがどんなものなのかイメージできるようになるだろう。

気になるビアスタイルを選んだけど「苦すぎて飲めなかった」「意外とアルコール度数が弱かった」なんてこともあるだろう。せっかく選んだのに、飲んでみて自分の好みに合わなかったらクラフトビールを飲む楽しさが半減するかもしれない。

クラフトビールは、ビール名を見ただけでは味の想像がしにくいので、IBUとAVBについて知っておくととても役立つだろう。

苦味を表す数字「IBU」

IBUは「International Bitterness Units(国際苦味単位)」の略称で、ビールの苦味を表すための数字だ。製造過程で使用された・ホップの量・ホップに含まれるアルファ酸・煮込み時間などから計算された数値である。

数値が高いほど苦味が強くなり、数値が下がれば苦味は弱くなる。数年前までは、IBUの最大値は100までだったが、最近では100を超える苦味が強いクラフトビールが誕生している。

しかし、IBUという数値は、あくまで計算されて出された数値であることを覚えていてほしい。IBUの数値が高くても、ベースとなるビールの甘味が強ければ、苦味を感じにくいことがあるからだ。

一概に「IBU数値が高い=苦味しかないビール」と思わず、ある程度の苦味を想定する数値としてIBUを参考にしよう。

アルコール度数を表す「ABV」

ABVは「Alcohol By Volume」の略称で、アルコール度数を表すための数字だ。基本的にクラフトビールは「ABV5.0」といった感じで記載されているケースがあるため、ABVの意味を知らずに高い数値のものを飲めば、すぐに酔っ払うかもしれない。

一般的なビールには「アルコール5%」や「ALC5%」と記載されているが、クラフトビールはAVBと書かれていることを覚えておくとよいだろう。

世界に目を向けてみるとAVB67.5%という驚くほど高アルコールビールなどがある。クラフトビールを購入する際は、AVB数値を見て自分に合ったものを選ぶようにしよう。

(まとめ)クラフトビールの楽しみ方を探す

クラフトビールの楽しみ方は人それぞれではあるが、単語や知識があるだけで楽しみ方が大きく変わるだろう。クラフトビールの歴史やビアスタイル、味、アルコール度数など、どれか一つだけでも知りたいことを探して楽しいビールライフを送ろう。

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