62352【東京の地ビールで乾杯 vol.2】土蔵散歩で巡る、酒飲みのテーマパーク「石川酒造」(福生市)

【東京の地ビールで乾杯 vol.2】土蔵散歩で巡る、酒飲みのテーマパーク「石川酒造」(福生市)

編集部
目次

東京にある個性的な地ビールブルワリーを訪問。醸造所を見学しながら、ビール造りにかける思いをインタビュー。併設されたレストランや売店にも立ち寄り、そのブルワリーならではの地ビールの魅力を探る。

今回は、土蔵造りの敷地にいくつもの楽しみが散りばめられた福生市の「石川酒造」を訪れた。

■明治期以来のビール造りを復活

石川酒造の入口にあたる門

福生を流れる玉川上水の熊川分水近くに土蔵造りの建物が見えたら、そこが「石川酒造」。1863年に日本酒の蔵元として創業し、159年の歴史を持つ酒蔵である。現在に続く地ビール造りがスタートしたのは、1998年のこと。規制緩和による地ビールブームが落ち着いた頃だった。

しかし、実は1887年の明治期に一度ビールを醸造していた歴史がある。石川家の当主は代々石川彌八郎を名乗ることになっているが、現当主・18代目の祖祖父にあたる14代目の頃だった。つまり再スタートにあたっては、かつて断念したビール醸造の復活させたい、との並々ならぬ決意があったのだ。

多摩の恵 ペールエール638円

復活したビールは「多摩の恵」と名付けられた。原料となる水に、日本酒を造るときと同じ清らかな秩父山系の伏流水が使用されているというから、ふさわしい名前だ。主力銘柄は、ペールエール、ピルスナー、デュンケル。なかでもペールエールは2000年の「ジャパンビアグランプリ」で金賞を受賞。金賞のなかでも最高得点を獲得するほど秀逸な出来となっている。

クラシックなスタイルを踏襲する定番に加えて、ブルーベリーを使ったフルーツビールや、小麦麦芽を使ったホワイトビールのヴァイツェンなどの限定ビールが季節ごとに出荷されている。

樹齢400年の夫婦ケヤキ

敷地に入ると、土蔵群や樹齢の長いケヤキの木々がゆったりと出迎えてくれる。土蔵のうち、6棟は国の登録有形文化財に指定されているが、レストランや売店もあり、気軽にくつろげる雰囲気がある。こうして敷地を一般開放することにも、石川酒造らしい理由があると広報の石川雅美さん。

「ビール造りの復活には3年の準備期間があり、当主はヨーロッパやアメリカのブルワリーにも足を運んでいます。欧米では敷地内に庭があって、地域の人が集まって、飲んだり話したりする文化がある。石川家は代々、酒蔵として地域をまとめる役割を担っていました。そのため、ここはビール造りと同時にコミュティ造りを目指して解放されています。“酒飲みのテーマパーク”と謳っているので、気軽に来ていただきたいですね」

■伝統と挑戦の2つのフラッグシップ

(左)ペールエールに使われる麦芽(右)石川酒造で使われている破砕機

ビールが造られているのは、敷地の一番奥にある「向蔵ビール工房」。訪ねてみると、ビール醸造部係長の土屋朋樹さんが明日の仕込みに使う麦芽を破砕機へと運んでいた。石川酒造では、この麦芽の破砕に重点を置いていると土屋さん。

「ビールは麦芽の糖分をアルコール発酵して造られています。破砕の状態で糖分が引き出せるかどうかに関わってくる。無駄なく麦芽を使えるように、種類ごとに粗すぎず細かすぎずの数値で大きさに合わせた破砕を行っています」

(左)発酵具合を確認する土屋さん(右)下が三角になっているのは仕込みをする発酵タンク

次に案内してもらったのが、タンクが並びビールを醸造するエリア。扉を開けると、麦汁の香ばしい香りが漂う。ここには、お湯を沸かすホットリカータンク、攪拌するマッシュタン、煮沸するケトル、発酵タンク、熟成タンクがずらりと並ぶ。熟成タンクは4000lで、全部で9つある。地ビール醸造所としては規模が大きい方だ。

石川酒造は日本酒の蔵元であることから酒販店への販路があり、さらに併設のレストランや街場の飲食店にも卸しているため、ある程度の規模でビールが造られている。

(左)2015年から登場した「TOKYO BLUES」©︎石川酒造(右)クラシックなスタイルの「多摩の恵」©︎石川酒造

1998年以来、「多摩の恵」でクラシックなスタイルを忠実に守り続けてきたが、いまやそれだけではない。18年目となる2015年にオリジナルレシピのビールを開発した。その名も、「TOKYO BLUES」。原料にホップを通常のペールエールの10倍以上もの量を使用したビールだ。

こちらはホップを贅沢に使いながら、煮沸時間が少ないため、柑橘系の豊かな香りと苦味があるのに、後味に嫌な苦味が残らない。多摩の恵に匹敵する出来栄えとなっている。多摩の恵とTOKYO BLUESの2つのフラッグシップがある理由について、土屋さんはこう話す。

「クラシカルなビールを造ることに変わりはありませんが、新しいものにも挑戦したい表れです。季節の限定品やこの酒飲みのテーマパーク巡りを含め、ファンの方には何度でもリピートしてもらいたいと思います」

■土蔵から土蔵へ。巡るたびに酒と食の楽しみが続々

左から「桜海老と酒粕クリームチーズのピッツァ」1,500円、「多摩の恵 ペールエール」、「TOKYO BLUES シングルホップウィート」ともに600円

向蔵ビール工房のあとは、レストランや売店、史料館など敷地内を順番に案内してもらった。レストラン「福生のビール小屋」屋外席は、酒蔵で利用されていた樽のふたがテーブルに利用されている。テラス席やカウンター席もあって、開放感がある。ここでは、石川酒造のコンセプトである「華やかな食卓を、陰でささえる酒造り」の世界を食事とともに堪能できる。

多摩の恵のペールエールとTOKYO BLUESのシングルホップウィートを自慢のピザとともに合わせた。多摩の恵のペールエールは、生タイプなので新鮮な味わいがいただける。食事の味を邪魔しない心地よさがある。一方、TOKYO BLUESのシングルホップウィートは、ホップを贅沢に使ったことが分かる豊かたな香りと苦味で、ふわっとしたまろやかさがある。2つを飲み比べてみるのもいいだろう。

「桜海老と酒粕クリームチーズのピッツァ」は、ペールエールとの相性がぴったり。酒粕クリームチーズのさっぱりしたコクが桜海老の香ばしい風味を引き立てる。晴れていれば、テラス席でのビール体験は最高の幸せがやってくる。ちなみに、ここは福生なので、上空をたびたび横田基地の飛行機が低空飛行する轟音が響く。これも石川酒造を訪れる際の名物の1つだ。

明治時代に使われていたビール釜

レストラン福生のビール小屋のテラスの向いには、明治時代に使われていたビール釜が見学できる。この奥には井戸があり、その周りにベンチもあるので、ここで直売店からビールやソフトドリンクを購入して楽しむこともできる。

(左)長い歴史を持つ石川酒造の日本酒とビールの資料がずらり(右)明治時代、石川酒造は日本麦酒という名前でビールを醸造していたときのラベル

福生のビール小屋の隣には、雑蔵があり、2Fは史料館になっている。江戸時代からの石川酒造の歴史や日本酒・ビール醸造に関する貴重な資料が展示されている。ここも入場無料。

直売店「酒世羅」

直売店「酒世羅」では、石川酒造で造られている日本酒やビール、オリジナルグッズが購入できる。多摩の恵が揃う酒販店は少ないため、ぜひとも自宅用に。酒のつまみやサイダー、お土産の品を買って帰るのにもおすすめ。

石川酒造の日本酒「多満自慢」が造られる本蔵

現在は、コロナ対策で見学コースは休止中だが、毎月第4土日祝は感謝デーでは蔵見学などのイベントが実施されている。より満喫したいなら、こちらを利用してみるのもおすすめ。

石川酒造の敷地内は、ビールや日本酒の世界を知るだけでなく、江戸時代からの建物や樹齢700年や400年の立派なケヤキや井戸、ビール釜なども散策できる。入場料がいらないのがお得なくらい盛りだくさんの、まさに酒飲みのテーマパークだった。

・石川酒造
住所:東京都福生市熊川1
TEL:042-553-0100
営業時間:平日8:30〜17:30

・福生のビール小屋
TEL:042-553-0171
営業時間:11:30〜21:30(LO20:30)
定休日:火曜(2022年6月20日より月・火定休)

・直売店 酒世羅
TEL:042-530-5792
営業時間:10:00〜18:00
定休日:火曜(12月をのぞく)
https://www.tamajiman.co.jp/

取材・文:岡本のぞみ(verb) 撮影:木村雅章

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