東京にある個性的な地ビールブルワリーを訪問。醸造所を見学しながら、ビール造りにかける思いをインタビュー。併設されたレストランや売店にも立ち寄り、そのブルワリーならではの地ビールの魅力を探る。
今回は、実験的なビールを醸造し、発信する「ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリル」を訪れた。
■実験的なビールが生まれる場所

五反田はベンチャーやスタートアップ企業が集まる、新しい流れを生み出す街として知られている。その五反田にある「ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリル」も実験的なビールを生み出す醸造所。毎月、さまざまなアイデアをもとにビールが造られている。
ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリルは、2020年にファーイーストブルーイングの直営店となる醸造所併設レストランとしてオープンした。母体となるファーイーストブルーイングは、酒販店でも見かける缶のクラフトビール「ファーイースト東京IPA」でおなじみのメーカー。同社は、2011年に「日本初のオリジナリティ溢れるビールを世界に発信する」をコンセプトに東京・渋谷で創業された。
ビールはしばらくの間、委託醸造で造られていたが、2017年に山梨・小菅村に自社工場「源流醸造所」が立ち上げられた。同年に直営の飲食店「ファーイースト東京クラフトビール&バオ」を渋谷にオープン。2020年にその直営店が五反田に移転すると同時に醸造所を併設した、ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリルが開業した。
ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリルの規模は源流醸造所の10分の1。「小さなバッチで仕込めるため、ユニークなものが造られています」と醸造担当の赤松壱さん。ファーイーストブルーイングのスタッフによるレシピコンテストで入賞したものや企業とのコラボレーションによるものがあるという。

「これまで山梨の木工メーカーさんと一緒にウッドチップを漬け込んだピルスナーや、クラフトコーラをイメージしたセゾンスタイルのビールなどを造ってきました。木の香りがしたり、ビールが苦手な人にも楽しめたり、多様性がある個性的なビールができるのが特徴です。実験的なビール醸造は、いろんな人に楽しんでいただくためのものでもあります」
五反田の醸造所には300Lと600Lのタンクが合計5つあり、週に一度は新しいビールが仕込まれているそう。五反田の直営店限定で味わえるビールを多数醸造しており、訪れるたびに個性的なここだけのビールが楽しめる。今後は全国や世界にある直営店の定番ビールを造る計画もあるという。新しいものが生まれるブルワリーは、私たちに毎回新しいビール体験を届けてくれる。
■22種類もの多様で個性的なビールが飲める

ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリルはたくさんのビールが味わえるのが魅力。タップには、最大22種類のビールがつながる。そのうち、五反田で造られたオリジナルビールが3種類、山梨で造られたファーイーストブルーイングの定番が8種類、同じく限定ビールが8〜9種類、ゲストビールが2〜3種類となっている。
店内ではさまざまなスタイルのビールを味わうことが可能。個性豊かなビールの特徴を堪能できる。
五反田や山梨の醸造所で造られる定番や限定は、シリーズごとに次のようなコンセプトがある。

●五反田オリジナルビール
五反田の醸造スタッフや調理スタッフがアイデアを出したレシピや、社内レシピコンテストで選ばれたレシピといった実験的なビールが醸造される。
●ファーイーストブルーイング定番ビール
〈ファーイーストシリーズ〉
豊かな香りが特徴のアロマホップによる東京らしい洗練された上質な香りが楽しめる。
〈馨和KAGUAシリーズ〉
柚子や山椒を使った和の馨る「馨和 KAGUA」は、和の食卓が醸し出す雰囲気や伝統的な和の味わいに映えるビール。
●ファーイーストブルーイング限定ビール
フルーツの名産地・山梨で獲れた桃やブドウを使ったビールや山梨の企業とコラボレーションして造られたビールなどが醸造される。また、ワイルドイーストやビール酵母以外の微生物も活かしながらクラフトビールの新たな可能性にチャレンジするブランド〈オフトレイルシリーズ〉のビールも定期的に醸造している。
■醸造所・ショップ・レストランが一つの建物に集約され、楽しみ満載

ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリルは、ビール醸造所、グリルレストラン、ショップの3つの顔がある。ガラス張りになっている建物はオープンな空間。入口はたくさんあるが、最も五反田駅寄りの入口から入るとすぐにショップがある。ここでは缶ビールやボトルビール、ギフト、オリジナルグッズなどが購入できる。

ショップを進むと左手にあるのがビール醸造所。ガラス張りになっているのでタンクを見学することができる。手前に見える2つのタンクは仕込みタンクで400Lの容量がある。さらに突き当たりにあるのがビアタップ。ずらりとつながっている様子からたくさんのビールが飲めるのがわかる。


店内を進むとグリルレストランのエリアに。ビールや食事をゆったり楽しめる空間だ。メニューはビールに合うグリル料理が多数。牛肉や鶏肉のグリル料理を中心にピザやサラダ、シャルキュトリなどが用意されている。

ビール好きの人には、その時期限定のビールペアリングを注文するのがおすすめ。調理スタッフが店内で飲めるビールに合わせたメニューを考案しているので、ビールと旬の料理のベストマッチが味わえる。レストランは、ビール好きでわいわいとにぎやかに楽しむのもよし、カウンターでゆっくりとビールを味わうもよし。お好みの使い方ができる。
ファーイーストブルーイングは、現在のクラフトビールブームを牽引してきたブルワリー。その定番や限定のビール、そして実験的で個性的なビールができる場所として訪れることができる。歴史をつくってきたビールと新しく生まれるビール、その両方を満喫したいときにはぜひ足を運んでみよう。
【ファーイーストトウキョウ ブルワリー&グリル】
住所:東京都品川区西五反田1-15-6
TEL:03-6420-3978
営業時間:平日11:30〜14:00LO・17:00〜22:00LO、土日祝11:30〜22:00LO
定休日:なし
https://faryeast.com/bar/brewery-grill/
取材・文:岡本のぞみ(verb) 撮影:木村雅章
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