山廃仕込みの日本酒の特徴

日本酒好きなら知っておきたい「山廃仕込み」は、伝統のある酒母造りの名称である。

山廃仕込みの日本酒をこれからもっと美味しく飲めるように、まずは山廃仕込みの日本酒の味わいや製造方法などを紹介していこう。

山廃仕込みは酒母造りの一種

日本酒の原料となるのは、水・米・米麹で、これらの原料をアルコール発酵させるとお馴染みの日本酒が誕生する。

日本酒造りにおいて欠かせないのが、優良な酵母を培養して発酵させる酒母という液体だ。

酒母造りは麹造りの後に行われる製造工程で、水・米麹・蒸米などを酒母室のタンクで混ぜて、その後のもろみ造りの工程へと進む。

山廃仕込みは酒母造りの一種であり、蔵人が自分の手で米をすり潰す工程の「山卸」を廃した仕込み方法だ。

酒造の中の空気に存在する乳酸菌を取り込んで、乳酸を増やしながら酵母を培養する伝統的な製法の「生酛」の派生といわれている。

山廃仕込みは、乳酸を増やす工程の山卸を省いたとしても、酵素の力で米を溶かす米麹の特徴を活かして酒母が造られるのだ。

山廃仕込みの日本酒の味わいとは?

山廃仕込みの日本酒は、乳酸発酵を丁寧にじっくり行うことで独特な味わいが生み出され、濃醇で旨口、そして飲みごたえのある酒へと仕上がる。

骨太で、苦味と酸味がしっかり効いた強い味わいと深いコク、そして独特のフルーティーな香りは、数多くの日本酒マニアに愛されている。

その味わいは温めても存在感が失われることはなく、さまざまな飲み方で味わうことができるだろう。

山廃仕込みの日本酒に合うおすすめの飲み方

日本酒の飲み方の好みは人それぞれあるが、山廃仕込みの日本酒を飲む場合にぜひ試してもらいたいおすすめの飲み方を紹介していこう。

日本酒の飲み方の基礎知識

居酒屋などで日本酒を飲みたい時、冷やや熱燗などの注文方法になるが、日本酒は他の酒と比べて美味しく飲める温度の幅が広く、5度〜60度までそれぞれ違った味わいを体験できるのだ。

日本酒は温度別に大きく分けて、以下の4種類の飲み方がある。

  • 熱燗(45度〜55度)
  • ぬる燗(30度〜40度)
  • 冷や(20度〜25度)
  • 冷酒(0度〜15度)

どの飲み方でも日本酒が美味いのは言わずもがなだが、銘柄によって味が引き立つ飲み方がそれぞれ存在するのだ。

日本酒全般の良い飲み方については、こちらの記事もぜひ参考にしてほしい。

温度や酒器にこだわって日本酒の美味さをより味わう方法

熱燗で濃醇な味わいを楽しむ

山廃仕込みの独特で主張の強い骨太の味わいは、熱燗で飲むことでさらに際立つ。

濃醇な味わいが口の中でじわっと広がり、柔らかな口当たりにも満足してもらえるはずだ。

熱燗の温度は細く分けると、45度の上燗(じょうかん)、50度の熱燗、55度の飛切燗(とびきりかん)の3種類があるが、山廃仕込みは上燗、もしくは熱燗で飲むのが特におすすめだ。

初めて山廃仕込みを意識して飲む際は、まずは冷やで味わってみて、その後に上燗か熱燗で飲んでどのように味わいが変化するのかを楽しんでもらいたい。

お湯割りで癖を程よく調和する

山廃仕込みは日本酒の中でも癖が強く、冷やや熱燗で飲んだ時の酸味や苦味が苦手という人もいるだろう。

そんな人でも山廃仕込みを美味しく飲めるのがお湯割りで、山廃仕込みの日本酒とお湯を8:2の黄金比で割るだけでつくれる。お湯の温度は50度くらいがおすすめで、ゆっくりとかき混ぜてから味わってみてほしい。

お湯割りにすることでアルコール度数が低くなり、強い酸味や苦味も抑えられてしまうが、山廃仕込みの特有の骨格はしっかりと残ったままだ。

夏に飲み場合は、同じ比率で割る「前割り」をおすすめしたい。

前割りで味をまろやかにする

先述の4種類の代表的な飲み方とは別に、水で割って冷蔵庫で寝かせて味をまろやかにする前割りという飲み方もある。前割りは焼酎でよく飲まれているが、実は山廃仕込みのような癖の強い日本酒とも相性が良い。

山廃仕込みを前割りで飲む場合は、以下の手順を踏んで準備をしよう。

  1. 四合瓶、または空のペットボトルを用意する
  2. 山廃仕込みの日本酒とミネラルウォーターを8:2の割合で用意した入れ物に移し、しっかりと蓋をして冷蔵庫に入れる。
  3. 1日〜3日程度(長くても1週間)寝かせたら完成

寝かせている間に水と日本酒がほどよくブレンドされ、山廃仕込み独特の強い酸味と苦味がまろやかになってさらに飲みやすくなるのだ。

山廃仕込みのおすすめの銘柄を紹介

深い旨みと濃醇な味わい、そして香りを堪能できる山廃仕込み。

ここからは、一度は飲んで味わってもらいたい山廃仕込みのおすすめの銘柄を紹介していく。

ネットでも購入できるものをピックアップしているので、気になる銘柄があれば自宅でぜひ味わってみてほしい。

雪の茅舎|山廃純米吟醸

雪の茅舎|山廃純米吟醸

雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)は、美酒王国秋田と呼ばれる秋田県を代表する銘柄である。

明治35年創業の齋彌酒造で造られており、元々は由利正宗(ゆりまさむね)と銘柄だった。今は、新しい銘柄である雪の茅舎の方が有名になっている。

齋彌酒造の看板商品が山廃純米吟醸の雪の茅舎だ。フルーティーな香りと柔らかな口当たりが特徴で、口に含んだ瞬間にフレッシュな酸味と山廃仕込みとは思えない雑味の感じない味わいを感じられる。

フレッシュ感をそのままに残した冷やで飲んでも、膨らみのある味わいに変化する熱燗で飲んでも、至高の味を堪能できるだろう。

●蔵元:株式会社齋藤酒造店
●銘柄:雪の茅舎|山廃純米・生酒
●販売価格:税抜1,870円(720ml)|税抜3,740円(1,800ml)
●使用米:山田錦(麹米)|あきた酒こまち(掛米)
●精米歩合:55%
●アルコール度数:16度
●日本酒度:+1 やや辛口
●酸度:1.8
●商品販売元:齋藤酒造店

久保田 碧寿|純米大吟醸・山廃仕込み


久保田 碧寿|純米大吟醸・山廃仕込み

久保田 碧寿(くぼたへきじゅ)は、新潟県長岡市にある「朝日酒造」で造れている銘柄である。

朝日酒造の歴史は古く、1830(天保元)年に久保田屋を創業して以来、200年もの年月をかけて伝統の味を守り続けている。

朝日酒造のある新潟県長岡市越路地域は、「水」「米」「人」に恵まれた、まさに日本酒を造るに相応しい聖地なのである。そこで誕生した久保田 碧寿の味わいは、深く艷やかで、これまでになかったエレガントさも感じられる贅沢な日本酒なのだ。

山廃仕込みの存在感のある深い味わいと、透き通るような後味、そして香り華やかな久保田 碧寿は、10度以下の冷酒にして優雅な味を堪能してほしい。

●蔵元:朝日酒造株式会社
●銘柄:久保田 碧寿|純米大吟醸・山廃仕込み
●販売価格:税抜2,230円(720ml)|税抜5,030円(1,800ml)
●使用米:五百万石
●精米歩合:50%
●アルコール度数:15度
●日本酒度:+2
●酸度:1.2
●商品販売元:朝日酒造株式会社

菊姫|鶴乃里


菊姫|鶴乃里

菊姫 鶴乃里(きくひめ つるのさと)は、石川県白山市にある「菊姫合資会社」で造れている銘柄である。

全国新酒鑑評会で、昭和42年から23年連続で受賞した高い酒造技術を誇り、昭和58年には米の旨味がぎゅっと詰まった独特な純米酒「山廃仕込純米酒」を、日本で初めて発売した歴史のある酒造だ。

菊姫 鶴乃里は、菊姫のオリジナルの醗酵タンクで、吟醸酒と同じようなきめ細かい温度管理でじっくり醸されて造られている。

その味わいは、力強さがありつつも繊細で上質な旨味があり、口に含むとバナナのようなミルキーな風味を口いっぱいに広がる。喉を通った後はキリっとした酸味が後を引き、余韻も楽しむことができる。

世界最大のワインコンテストで、最優秀賞となるチャンピオン・サケを日本で初めて受賞した実績もある。

世界に認められた山廃仕込みの名酒を、ぜひとも一度味わってみてほしい。

●蔵元:菊姫合資会社
●銘柄:菊姫 鶴乃里
●販売価格:税込2,200円(720ml)|税込4,400円(1,800ml)|楽天市場
参照
●使用米:兵庫県吉川町・特A地区山田錦100%
●精米歩合:65%
●アルコール度数:16度
●日本酒度:中庸タイプ
●酸度:1.2
●商品販売元:菊姫合資会社

伝承山廃純米|末廣


伝承山廃純米|末廣

伝承山廃純米 末廣(でんしょうやまはいじゅんまい まつえい)は、福島県会津若松市にある「末廣酒造 嘉永蔵」で造れた銘柄である。

かつて山廃の考案者である嘉儀金一郎氏は、大正時代の初めに末廣酒造嘉永蔵で試験醸造していた歴史があり、100年にわたって末廣の嘉儀式山廃造りが伝承されている。

末廣は酸味と甘味が絶妙なバランスを織りなす純米酒であり、燗上がりのいい酒として日本酒マニアに愛されている。

熱燗にするとまろやかさが際立ち、あらゆる料理と相性の良い口当たりの良い万能な味わいになる。

お手頃な価格で手に入るので、まさに自宅で楽しむ晩酌にはもってこいの日本酒なのだ。

●蔵元:末廣酒造
●銘柄:伝承山廃純米 末廣
●販売価格:税込528円(300ml)|税込1,155円(720ml)|税込2,310円(1,800ml)
●使用米:国産米
●精米歩合:60%
●アルコール度数:15度
●日本酒度:中庸タイプ
●酸度:1.7
●商品販売元:末廣酒造

天狗舞|山廃純米ひやおろし生酒


天狗舞|山廃純米ひやおろし生酒

山廃純米酒の代表格である天狗舞(てんぐまい)は、石川県白山市にある「車多酒造」で造れている銘柄である。

1823年(文政6年)に創業された車多酒造では、霊峰白山の湧き水と加が平野で実った良質な米を使い、天狗舞の酒が醸し出されている。

車多酒造が自信を持って提供する、天狗舞の山廃純米ひやおろし生酒は、酒造好適米である五百万石が使用されており、山廃ならではの存在感のある香味と酸味が上手く調和された辛口の名酒だ。

山廃純米ひやおろし生が蔵出しされるのは年に1回だけで入手が若干難しいが、歴史と伝統が詰まったその味をぜひ、冷やで堪能してほしい。

●蔵元:株式会社車多酒造
●銘柄:天狗舞|山廃純米ひやおろし生
●販売価格:税抜1,540円(720ml)|税抜3,080円(1,800ml)
●使用米:五百万石
●精米歩合:60%
●アルコール度数:18度
●日本酒度:+1.3 辛口
●酸度:1.6
●商品販売元:株式会社車多酒造

飛良泉|山廃純米酒(特別純米酒)


飛良泉|山廃純米酒(特別純米酒)

飛良泉(ひらいずみ)は、秋田県にかほ市にある「飛良泉本舗」で造られている銘柄である。

室町時代中期の1487年に創業され、これまで26代にわたって山廃仕込みにこだわって酒造りを続けている、日本で3番目に古い蔵元だ。

厳寒の地にある蔵元だが、温度の変化に負けない快適な酒造りの環境が築かれており、山廃に適した鳥海山系伏流水の硬水と60%磨いた美山錦で飛良泉の山廃純米酒が造られている。

飛良泉の山廃純米酒は、膨らみのある味わいと心地よい酸味で飲み飽きず、味崩れしないと腰の強い旨味が特徴だ。

26代にわたって継承された伝統的な「飛良泉 山廃純米酒」は、2015年に鰻に合う酒ランキング第3位を獲得。魚料理と合わせて熱燗で味わえば、至福の時間を過ごせるだろう。

●蔵元:株式会社飛良泉本舗
●銘柄:飛良泉|山廃純米酒(特別純米酒)
●販売価格:税込1,705円(720ml)|税込3,080円(1,800ml)
●使用米:国産米
●精米歩合:60%
●アルコール度数:15度
●日本酒度:+4
●酸度:1.9
●商品販売元:株式会社飛良泉本舗

まとめ

日本酒好きなら知っておきたい山廃仕込みの特徴やおすすめの飲み方、そして一度は飲んで味わってほしい人気銘柄を紹介したが、興味を持ってくれただろうか?

乳酸を効率よく増やせる環境を蔵人たちが手作業で作り、米麹が持つ酵素の力で米を溶かす働きを最大限活かして造られたのが山廃仕込みである。

山廃仕込みの日本酒は、骨太で独特の強い酸味と苦味が感じられ、深い味わいとキリッとした後味が特徴的だ。

熱燗で飲めばより膨らみのある味わいになり、山廃仕込みの本当の美味さに気づいてもらえるだろう。

山廃仕込みの日本酒をじっくりと味わいたい場合は、この記事で紹介した人気銘柄をぜひ試してみてほしい。

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