尾瀬の自然保護活動を
牽引してきた小屋三代の歴史
懐かしい校舎のような趣を醸す木造建築。玄関に足を踏み入れると一段高くなった昔ながらの三和土がある。
磨かれて黒光りする廊下や障子で仕切られた落ち着きのある客室は、山小屋というより旅館のようだ。
明治43年、初代の平野長蔵が尾瀬沼畔の沼尻に小屋を建てたのが始まり。その後、沼東岸に移転し、現在の建物は昭和9年に完成したものである。ちょうどこの年、尾瀬は日光とともに国立公園に指定。
しかし一方で、尾瀬には大正後期から尾瀬沼のダム化計画が持ち上がっていた。
長蔵はその計画阻止に奔走。また、二代目の長英、三代目の長靖の時代にも尾瀬沼は取水計画や自動車道建設問題など、様々な自然破壊の危機にさらされ、その度に反対運動などを行ってきた。
昭和46年に長靖は「尾瀬の自然を守る会」を発足。近年、会は解散するが、自然保護の精神は受け継がれている。美しい景観が今にあるのはそれらの熱意があったからこそ。
そんな歴史を紐解くのもこの小屋に滞在する楽しみでもあるだろう。そしてなにより、湖畔に佇むロケーションが抜群で、朝な夕なに変化する尾瀬沼や大江湿原の様子が観察できる。
一方で趣ある建物内部は、山小屋には嬉しい風呂や温水洗浄便座のトイレなど、快適に過ごせる設備を完備。また薪ストーブを囲む談話室、別館には洒落た喫茶室もあり、尾瀬の湧水で淹れた珈琲が美味しい。