2133【日本三大雪渓】針ノ木岳|登山ルートと交通アクセス情報を紹介

【日本三大雪渓】針ノ木岳|登山ルートと交通アクセス情報を紹介

男の隠れ家編集部
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北アルプスの名峰、針ノ木岳の夏の登山の魅力をご紹介。日本三大雪渓のひとつで夏でも涼しく、登山道の高山植物も豊富だ。北アルプス全域を見渡す眺望にも優れている。初心者は日帰り登山コースを選ぶことが可能で、雪渓をゆっくり堪能するなら、山小屋に宿泊する一泊二日コースがおすすめだ。
目次

この夏の避暑に「針ノ木岳」登山をおすすめしたい。北アルプスの名峰は日本三大雪渓のひとつで、スケールの大きな雪渓を歩く登山は爽快そのものだ。雪渓終点には可憐な高山植物の花畑が広がり、峠の山小屋から山頂へ出ると、北アルプスの全景が見渡せる大パノラマが待っている。針ノ木岳は夏山の醍醐味が満喫できる人気の山だ。

後立山の名峰。針ノ木岳とは

後立山連峰の南部にあり、北アルプスのほぼ中央部に位置する針ノ木岳。北アルプス縦走のポイントとして多くの登山客が毎年訪れる。山行の歴史は古く、16世紀に当時の越中城主が冬の峠越えをした伝説が残っている。明治以降、外国人登山者が増え、針ノ木峠越えで立山まで新しく登山道が整備された。

標高・所在地

標高は2,821mで飛騨山脈に連なり、山頂は長野県大町市と富山県中新川郡立山町にまたがっている。北アルプス縦走の基点となるため、夏山シーズンだけ営業している2つの山小屋が整備された。

日本三大雪渓で有名

針ノ木雪渓は白馬大雪渓、剱沢雪渓と並ぶ日本三大雪渓として有名だ。毎年7~9月の夏山シーズンには大雪渓を目指して多くの登山者が訪れる。積雪する冬期はバックカントリースキー場に変わり、スキーヤーやスノーボーダーが大雪渓の滑りを楽しむ。針ノ木雪渓は針ノ木岳最大の名所であり、多くの登山者を魅了している。

夏期の最高・最低気温

6~8月の最高気温は15.8℃、最低気温は1.1℃。下界の暑さが嘘のように感じられる別世界だ。山小屋に宿泊する場合は防寒具も用意した方がよいだろう。

登山適期

休憩ポイントとなる山小屋が夏期のみの営業なので、スキーやスノーボードではなく、登山が目的であれば、7~9月の夏山シーズンが適している。


登山の難易度

体力や経験、スケジュールに合わせて日帰りコースや1泊2日コースなど選べるので、どのコースにするかで難易度も変わってくる。日帰りコースは往復約11km。登山道が整備されているので初心者も安心だ。大雪渓から稜線に抜けるまで道が急になる程度で、難易度は高くない。できれば途中の山小屋で宿泊すると大雪渓などの景色をゆっくり堪能することができる。

周辺の峰を縦走・周回する1泊2日コースは体力に自信のある人向きだ。登山上級者向けには後立山連峰縦走ルートもあるが、それだけ装備や食料を用意する必要があり、天気や地図を頭に入れて登山の計画も入念に行うことになるので一般的ではない。

針ノ木岳の絶景を楽しむ登山ルート

針ノ木岳は大雪渓の他にも高山植物の花々が豊富で、夏は花畑が広がる色鮮やかな景色が楽しめる。紅紫がグラデーションを織りなすコマクサ、イワナシ、明るい黄色が目を引くシナノキンバイ、オオバキスミレ、可憐なチングルマ、純白のキヌガサソウと多彩な高山植物の花々が登山客を迎えてくれる。そんな針ノ木岳の絶景を楽しむ一般的な登山ルートを2つ紹介しよう。

初心者にも安心の日帰りコース

バスターミナルの扇沢駐車場近くの登山口から入山する。約1時間30分で大沢小屋に着くので、大雪渓を登る前に無料で休憩を取ったり、装備を点検や登山道の状態を確認したりすることができる。アイゼンのレンタルも可能だ。大沢小屋から約30分で大雪渓が姿を表すのでアイゼンを装着し、雪渓を登っていく。

その年によって残雪の量が異なるので、雪渓を抜けるまでの時間は1~2時間と見ておくとよい。雪渓が無くなった山道を1時間ほど進むと、針ノ木小屋がある針ノ木峠に着く。そこからさらに小1時間ほどで針ノ木岳頂上に到達する。上りに5~6時間、下りは同じコースを3~4時間と想定しておくとよいだろう。

針ノ木雪渓をゆっくりと堪能1泊2日コース

扇沢駐車場近くの登山口から大沢小屋を経て、針ノ木雪渓を歩き、針ノ木峠にある針ノ木小屋で一泊する。翌日、針ノ木岳頂上を目指し、下山するコース。時間に余裕があるので、大雪渓をゆっくり歩き、涼しさを体感しながら、変化に富んだ地形とロケーションを堪能することができる。写真撮影の山行にはおすすめのコースで、一日の間に変化する山の様子も体験できる。


針ノ木峠を経て山頂を目指す

古くから信州と越中を結ぶ交通の要衝となり、立山に参拝する登山者の裏参道として早くから開けた針ノ木峠。そこからピークを目指す針ノ木岳の山行を登山口から追っていこう。

登山口から大沢小屋へ

立山黒部アルペンルートの玄関口の扇沢からスタート。車の場合は扇沢駐車場が無料で利用できる。扇沢駅の左側奥のゲート脇に登山口があり、針ノ木自然遊歩道が続いている。登山口には登山届とポストがあるので、登山届を忘れずに提出することが大切だ。

何度か林道を横切りつつ、樹林の間の登山道を進むと、1時間30分ほどで大沢小屋に到着する。途中の山道は熊の目撃情報が報告されているので、念のため手を叩くか鈴を付けて音を出しながら歩き、こちらの存在に気づかせるようにすると安心だ。大沢小屋が営業していれば、中で休憩してもよいだろう。

次第に傾斜が急になる

扇沢から大沢小屋まで約3kmで標高差は300mと緩やか。けれども、小屋から針ノ木峠まで約4kmで標高差が800mと傾斜が急になっていく。約30分歩くと針ノ木雪渓に下る分岐が見える。夏の山道を行くこともできるが、ここからは針ノ木雪渓を歩くコースを選ぶ。


大雪渓を歩く

針ノ木雪渓を目にすると夏でもたっぷりの雪が残っていることにまず驚かされる。大雪渓を歩く前に、雪道に足を取られないよう4~6本歯のアイゼンをしっかり装着しておくと安全だ。急斜面になっているところもあるので、前歯のついたアイゼンの方が上りやすいと思う。

アイゼンを効かせて広い大雪渓を踏みしめるほどに、前方に針ノ木岳が近づき、振り返ると反対方向にある爺ヶ岳の峰もせり上がって見える。斜面を登るごとに視界が気持ちよく開け、涼しさと同時にアルプスの山々に抱かれている登山の醍醐味を味わえるだろう。
次第に傾斜がきつくなり、もっとも狭いノドと呼ばれる岩の間を通過すると、斜面が2つに分かれる。針ノ木峠に向かうには左側が正規のルートだ。

針ノ木峠で一休み

雪渓を外れると急な登りになり、沢を行き来するようにジグザグ道を行く。針ノ木峠近くには高山植物が群生し、可憐な花畑が登山者を元気づけてくれる。最後に砂礫の急斜面を登り切ると、針ノ木小屋がある針ノ木峠に到着。ここから山頂まで小1時間かかるので、荷物を置いて一旦休憩することにしよう。

クライマックスの山頂へ

急峻な山道を10分ほど登ると視界が開け、右手に見えるのが山頂だ。稜線歩きで斜面の横道を進んでいくと眺めがよい。途中で下を見ると、登ってきた針ノ木雪渓が見える。最後に急斜面を登り切ると、ついに針ノ木岳の山頂に到着だ。

山頂からは雄大な景色のパノラマが広がっている。まず、北アルプスの裏銀座と呼ばれる烏帽子岳、野口五郎岳、槍ヶ岳など連峰が目に飛び込んでくる。眼下には黒部湖のエメラルドグリーンが輝き、その向こうに立山と剣岳が見渡せる。北アルプス随一の大パノラマにしばらく言葉を失ってしまう。山の自然の荘厳さ、美しさに感動する瞬間だ。


針ノ木岳の山小屋に泊まる

針ノ木岳には食事と休憩、宿泊ができる山小屋が2つある。ビールも飲めて、他の登山者とゆっくり歓談し、山情報を交換することができる。テント場も併設しているので、仲間同士、または一人でゆっくり過ごすことも可能だ。


針ノ木小屋

針ノ木峠に建つロケーション抜群の山小屋。針ノ木岳と蓮華岳の間で標高2,536mの立地にある。完成したのは昭和5(1930)年で小屋の創設に関わったのは、大町の旅館主だった百瀬慎太郎(ももせしんたろう)だ。

北アルプスに向かう登山客をサポートするため、今では当たり前となった登山ガイド組織の先駆けとなる大町登山案内人組合を創設した人物としても知られる。完成当時の針ノ木小屋は木造平屋建てで、間口3間奥行き4間の規模だった。その後、改装を繰り返し、現在は100人収容可能となった。明るく開放的な2段ベッド式の部屋もある。

小屋の管理人は孫の百瀬堯さんが三代目、その長男で曾孫の陽さんが四代目を引き継ぐ。居心地のよいアットホームな雰囲気があり、畳敷きの食堂で登山者同士座って食事を囲むひとときは和やかだ。バランスの取れた献立を心がけ、サバの味噌煮やメンチカツなどを定番に、地元産の米を炊いたご飯や野菜たっぷりの味噌汁が人気となっている。

針ノ木小屋は針ノ木岳と蓮華岳の山頂へのベース基地としてだけでなく、南下する七倉岳方面や針ノ木岳から赤沢岳方面に北上する稜線歩きの基点としても利用できる。小屋の前方には裏銀座の山々が連なり、槍ヶ岳、穂高連峰の峰々まで遠くに一望できる絶好のロケーションだ。広大な稜線が夕日に染まる美しさも格別で、山小屋で過ごす一夜の思い出になる。

<針ノ木小屋(はりのきごや)>
山小屋創業年:昭和5年(1930) 
連絡先:0261-22-1584(大町自宅事務所)  現地連絡先:090-2323-7145 
営業期間:2019年7月1日~10月6日 
収容人数:100名  
宿泊料金:1泊2食付9,500円1泊夕食付8,200円 素泊まり6,400円 個室:無
お弁当:おにぎり800円 ランチ&喫茶メニュー:針ノ木ラーメン1,300円、ラーメン1,100円、 カレーライス1,100円など 生ビール1,100円  飲料水:1リットル200円 人気土産:オリジナルてぬぐい1,400円など
充電設備:無Wi-fi設備:有 テント場:有(1名700円) 診療所:無
(※2019年6月時点)


大沢小屋

針ノ木雪渓に続く篭川谷大沢出合にあった石室そばに建つ標高1,675mの小さな木造の山小屋。針ノ木小屋を建てた百瀬慎太郎が最初に手がけ、大正14(1925)年創設の歴史がある。小屋の前には百瀬慎太郎のレリーフが設置されている。

収容人数20人と小さいが針ノ木雪渓に向かう前の基地となり、軽アイゼンのレンタルもできる。食事や宿泊も可能だが、部屋数が少ないので予約が必要だ。登山口の扇沢から約1時間半の距離にあり、静かな森の中に包まれた山小屋は登山者の休憩場所になっている。近くの苔沢から汲んだ湧水で淹れる香り豊かな名水コーヒーが名物だ。

<大沢小屋(おおさわごや)>
山小屋創業年:大正14年(1925) 
連絡先:0261-22-1584(大町自宅事務所) 
営業期間:7月上旬~9月1日 
収容人数:20名
宿泊料金:1泊2食付9,200円1泊夕食付8,000円 素泊まり6,300円 ランチ&喫茶メニュー:名水ドリップ珈琲500円 缶ビール(500ml)550円  
テント場:有(1名700円)
(※2019年6月時点)

登山口まで交通アクセス情報

最後に針ノ木岳登山コースの登山口、扇沢までのアクセス・駐車場について紹介する。

公共交通アクセス

JR大糸線「信濃大町駅」よりアルピコ交通バスまたはタクシーで約30~40分、「扇沢バス停」下車。
もしくは北陸新幹線「長野駅」よりアルピコ交通特急バスで約1時間45分。
バスの予約は不要で、毎年4月中旬から11月までの営業。

車でのアクセス

長野自動車道「安曇野IC」より約1時間15分、または上信越道「長野IC」より約1時間30分。
扇沢駅登山口には駐車場とトイレが完備され、無料駐車場230台、有料駐車場350台が利用できる。
有料駐車場は12時間、または24時間ごとに1,000円。
交通アクセスや針ノ木岳登山について詳細の問い合わせ先は大町市観光協会へ。
TEL:0261-22-0190

針ノ木岳は大雪渓と山頂からの雄大な景色、可憐な高山植物、そして魅力的な山小屋と登山の醍醐味、魅力が揃っている。高原のように爽やかな山の自然の中でいただく食事やビールは格別だ。蒸し暑い都会を離れ、雄大で自然豊かな山の懐に抱かれれば、知らず知らずのうちに日常の疲れが取れて、身体がリフレッシュしていることに気づくだろう。

写真/佐藤佳穂

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