基礎知識から中古レコードを選ぶ時のポイントなどこれからレコードを聴いてみたいという方の疑問を解決。正しい知識でレコードライフを楽しもう!
■アナログレコードならではの味わいのある音に魅せられて
アナログレコードは世界で最初に普及した音楽を記録する媒体。平成2年(1990)頃にはCDラジカセの普及により次第に消滅していった。それが今、再ブームを巻き起こしている。
「レコードの音はアーティストに真摯に向き合っているように感じます」と語るのは日本随一のレコード工場である東洋化成営業部の清水峻さん。コロナ禍で、ゆっくり音楽を楽しみたいという人も増えているという。
今回は、入門編として基礎知識や知っておくと便利な豆知識をご紹介。アナログレコードで聴く楽しさをぜひ味わってみてほしい。
■レコード工場の数は?
日本には3社のみ。ただし、一つの工場でカッティングからプレスまで一貫して生産しているのは、昭和34年(1959)創業の東洋化成一社のみ。パッケージの印刷も行っている。
■レコードの回転数とは?
1分間ごとに回転する数のこと。33 1/3回転と45回転があり回転数が多いほど音質は良くなるが、溝幅が必要なため収録できる時間は短くなる。
■レコード盤の種類はいくつあるの?
大きく分けて3種類。CDに「シングル」や「アルバム」といった種類があるように、レコードにもいくつかの種類がある。音源の収録時間や用途によって変わるレコード盤の名称を覚えておこう。
・たっぷり聴ける「LP盤」
Long Playingの略で「アルバム」とも呼ばれており1948年にアメリカで開発され広く普及した。中古レコードの多くは12インチのLP盤。
・かつての主流「SP盤」
Standard Playingの略。長い間レコードの主流として広く使われ、名称もその実績に由来する。LP、EPの開発以降、国内での生産は1962年に終了。
・収録時間が短い「EP盤」
Extended Playingの略。日本では一般的に7インチシングルのことを総称してEPと呼ぶことが多い。片面に4分程度の曲が収録されている。
■表と裏で何が違うの?
A面、B面と呼び違う曲が入っている。シングル盤の場合、表の面(A面)にレコード会社の“推し曲”が収録されていることが多い。LPの場合はA面の1曲目から始まりB面の最後の曲で終わる構成になっている。
■レコード盤のサイズは?
7インチ、10インチ、12インチの3種類。レコード盤の大きさはセンチではなくインチで呼ぶ。円盤の大きさは直径30cm、25cm、17cmがスタンダード。
・7inch
表・裏に1~2曲程度収録。シングル盤やEP盤に多く、中央の穴が大きい「ドーナツ盤」もこのサイズ。
・10inch
SP盤に多く用いられた規格で、12インチLPが開発されるまで長時間録音用として使用されていた。
・12inch
収録時間は片面20分程度で、一般的にアルバムはこのサイズで発売されることが多い。重さは130g程度。
■「重量盤」って何が違うの?
重みがあるので回転が安定する。通常盤は約120~140gだが重量盤は180~200gほどで、プレーヤーに置いた時に自重でピッチが安定する。
■盤の仕様の違いは?
通常盤、カラー盤、ピクチャー盤などがある。黒色の通常盤のほか、材料に色を含有させて色を付けるカラーレコードや、デザインが印刷された絵紙の上から塩化ビニールシートを圧着したピクチャー盤なども。
■レコードを聴くために必要なものは?
基本はプレーヤー、アンプ、スピーカーの3つ。再生するためのプレーヤー、音を増幅させるためのアンプ、音を外に出すためのスピーカーがあればOK。個々に揃えると10万円以上かかる場合もあるので安価に手に入るオールインワンプレーヤーもお勧め。
■より良い音で聴くには?
カートリッジにまでこだわろう。カートリッジはレコードに刻まれた音溝から音声信号をピックアップする大事な部分。少しの違いで音質がガラリと変わったりするので、付け替えて楽しむのも良い。
■中古レコードを買う時のポイントは?
商品カードや状態をチェックする。商品カードには、盤の状態の良し悪しをアルファベットで表記している。直接見ないとわからない特記事項や、店員さんのコメントが書かれていることも。
●レコードにまつわる用語集
・針飛び
レコード盤に付着したホコリや傷、振動により針が飛び音が途切れたりすること。
・検盤
盤面をチェックすること。指紋の付着を防ぐため面の部分は触らないように注意。
・ウォーターダメージ
ジャケットが水に濡れることにより、剥がれや変形が生じている状態のこと。
・塩ビ焼け
レコードを包む内装によって盤面が白くなる化学変化。「ビニ焼け」とも呼ぶ。
・書き込みあり
中古レコードのジャケットやセンターラベルに書かれた落書きなどのこと。
・センターずれ
何らかの原因で中心がずれてプレスされたもの。再生不良を起こすことも。
■オリジナル盤とは?
そのレコードが発表された時に始めてレコード店に並んだもの。例えばブルーノートの場合、裏ジャケットに記載された住所の違い(右)や、オリジナル盤にだけある刻印の有無、マトリックス番号(左)などが判別の基準になる。またリマスター盤や重量盤、カラー盤などでオリジナル以降に再発売されたものは再発盤と呼ぶ。
■どうやってクリーニングするの?
「乾式」「湿式」の2つの方法を使い分ける。聴く前の簡易クリーニングでは乾式(乾拭き)で不純物を取り除き、盤面に目立つ汚れが付いている場合は湿式クリーナーを使いホコリや汚れをしっかり落として保管しよう。
レコードの溝に沿って円を描くように拭き取る。
■レコードの正しい保管方法は?
高温多湿を避けて、立てて置く。レコードはホコリが溜まりやすく、ジャケットも傷みやすいので基本的には袋に入れて保管すると良い。直射日光を避け、風通しの良い所に保管するようにしよう。
●収納チェックポイント
・斜めに置かない
ゆとりができて傾けて、置いたりすると負担がかかってしまう。必ずまっすぐに立てて置くようにしよう。
・積み重ねない
積み重ねて長期間保管していると、重みで変形したり、溝がつぶれて音飛びの原因になってしまうことも。
・直射日光に当てない
LPレコードの材料は塩化ビニル樹脂。日光の熱で変形したり盤面の色褪せにもつながってしまうので注意。
・湿気を避ける
湿気は盤やジャケットのカビの原因。湿気がこもりにくく、換気しやすい場所で保管することが大切。
■針先の手入れ方法は?
「湿式」と「粘着式」の2種類。針は「スタイラスクリーナー」という専用クリーナーを使う。液体で汚れを溶かし出す「湿式」と、柔らかいゲル素材に針を押し当てて汚れを剥がす「粘着式」があるので、上手に使い分けよう。
・湿式
濡れた状態でレコードを再生すると盤面を傷つけてしまうので「速乾性」の表記があるものを使うと良い。
・粘着式
粘着性がどれだけ持続するのか、水洗いしても粘着性が落ちないかなど繰り返し使える回数をチェックしよう。
協力/東洋化成、オーディオテクニカ
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