97737江戸の老舗「砂場総本家」で昼呑み 蕎麦に精通する先輩に学ぶ 粋な“蕎麦屋呑み”の流儀

江戸の老舗「砂場総本家」で昼呑み 蕎麦に精通する先輩に学ぶ 粋な“蕎麦屋呑み”の流儀

田村 巴 (たむら とも)
田村巴

男の隠れ家の神出鬼没な編集者・田村巴は年がら年中〝休肝日〟がない生粋のお酒好き。そんなほろ酔い編集が美味い酒を求めて今宵もぶらりと旅に出る──。

突然の呼び出しにも優しく応えてくれる先輩の胸を借りて、人生初の“蕎麦屋呑み”を江戸三大蕎麦の名店で敢行しました!

ほろ酔い編集・田村巴のちょっと一杯やらないか? 第3杯

12月某日、あと幾つか寝たらお正月という日に、荒川区三ノ輪で先輩ライターの阿部文枝さんと待ち合わせ。

阿部さんは男の隠れ家の創刊期から執筆する重鎮、生き字引パイセン。そんな大先輩を師走の繁忙期に呼び出したのは、他でもないアテクシ。

「もういい大人なんだし、そろそろ蕎麦屋で一献、粋にキメたい。目指せ、渋めの45歳!」

アホな後輩の自分磨きに巻き込まれ、いい迷惑である。なのに、

砂場総本家さんは江戸時代から続く老舗の蕎麦屋。細打ちで喉ごしのよい蕎麦と灘の酒でやりましょう!」とご快諾。

阿部さんは有名食雑誌など多くの媒体で活躍する、蕎麦に精通したお方。

挨拶もそこそこにまずは蕎麦前の定番「板わさ」と「焼きのり」を注文、酒は「菊正宗 上撰」をお燗で。辛口のすっきりした味わいに、お燗派だと話す阿部さんもニッコリ。

「ここの焼きのりは箱の下に小さな炭が入っていて、湿気らずパリパリ食感を愉しめるんです」

板わさ(650円)
焼きのり(970円)
「菊正宗 上撰」のお燗(630円。生酒は900円)

板わさや焼きのりは江戸時代からある種物蕎麦の具材である。また砂場総本家では日本酒の銘柄は「菊正宗」が主。たまに「剣菱」も並ぶが“灘”の酒しか置かない。

店主の長岡孝嗣さんは、「砂場は大阪で創業して江戸にきました。当時は上方の酒が一流。良い酒を出したい、という理由で“灘の酒”を提供するのが砂場のルールなんです」とのこと。

阿部さんと店主の長岡さんを囲んで記念写真。江戸時代から続く砂場の暖簾を守り、長岡さんで14代目。

江戸時代から掟のように守られてきた伝統。なるほどと頷きつつ「天ちらし」と「天ぬき」を注文。合わせるのは米の旨みが感じられる「菊正宗 生一本」を冷やで。

阿部さん曰く、蕎麦の入っていない“ぬき”にはチェイサーの役割もあるのかも。確かに温かくて旨味の詰まった出汁は胃に嬉しい。

天ちらし(1130円)。蕎麦前の定番が並び、二人揃ってご満悦だ。
蕎麦が入っていない裏メニューの「天ぬき」(1380円)は酒の肴にも良し。
温かいつゆで頂く「そばがき」(1680円)も注文し、旨さに悶絶。

江戸落語でも語られる“蕎麦屋の二階”談義に華を咲かせ、最後に「菊正宗 生貯蔵酒」と「もりそば」を手繰って〆。

江戸の昔から続く老舗で念願の蕎麦屋呑み。“粋”がなんたるかを、そこはかとなく学んだ昼下がりでした。

この日の「もり」(650円)は福井県丸岡在来種の蕎麦。鼻に抜ける風味がよく至福の1枚である。

今月の相棒

江戸蕎麦の伝統を受け継ぐ老舗「砂場総本家」で一献

「薮」「更科」と並ぶ江戸三大蕎麦の系統「砂場」を受け継ぐ名店。大正元年に今の場所へ移転した。

砂場総本家
東京都荒川区南千住1-27-6
TEL:03-3891-5408
定休日:水・木曜
営業時間:11:00~17:00

【著者プロフィール】
田村 巴(Tomo Tamura)

1979年北海道出身、フリー編集者。長年「男の隠れ家」に携わり現在は「男の隠れ家デジタル」編集長も務める。毎日の晩酌が人生をより良くすると信じて疑わない。

文/田村 巴 撮影/Nory.k

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田村 巴 (たむら とも)
田村 巴 (たむら とも)

1979年、北海道出身。バイク(チョッパー)専門誌「HARD CORE CHOPPER」、フリーペーパー「MOLE Magazine」、ライフスタイル誌「男の隠れ家」を経て、現在は「男の隠れ家デジタル」編集長。

バイクやクルマでの日本一周・目的を決めない旅が趣味。好きな分野は「飛行機」「クルマ旅」「地方の土着的な風習や歴史」「ミステリー」など。UFOや都市伝説に興味深々。好きなものは「巨大建造物」「道の駅・SA(道の駅きっぷ収集)」「キャンプ」「ガジェット」「カメラ」「ボストンテリア」。

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