自ら焚き火を熾しコーヒー豆を焙煎し好みの味に仕上げて味わう

緑の囁きに呼応して木漏れ日がゆらゆらと揺れ、焚き火のはぜる音が森の中に響いている。風の音や野鳥の声も耳に届いてくるが、森に用意されたその特別席は限りなく静かでピースフルだ。
やがて炎が熾火(おきび)の状態に落ち着いてきたところで、白い生豆を入れた焙煎機を火にかざす。コツはリズミカルにひたすら焙煎機を振ること。シャラシャラ、シャラシャラ…。
無心で音をリフレインさせる穏やかな時間。少し手が疲れてきた頃、煙が立ち上り香ばしい匂いが鼻先に漂ってきた。「いい感じになってきましたね。もう少し黒く照りが出るまで振りましょう」。
グランピングマスターともに薪を割って焚き火を熾し、コーヒー豆を焙煎してオリジナルコーヒーを淹れる。究極の一杯を飲むため、手間をかけ時間をかけるプロセスが何とも楽しい。
しばらくすると音がパチパチとはじけ乾いたような音に変わってきた。いつもは深煎りコーヒーが好きだが、今回の豆は浅煎り~中煎りがおすすめだと聞き、程よい色具合で焙煎を仕上げた。


圧倒的非日常を提案し、日本初のグランピングリゾート「星のや富士」がプログラミングする「コーヒーディスカバリー」。昼、夜、朝の3つの滞在シーンで異なる飲み方を堪能し、新たなコーヒーの魅力を発見するというコーヒー好きに嬉しい内容である。
森というシチュエーションもコーヒーの味を特別なものにするだろうが、豆のこだわりにも興味がそそられた。
「星のや富士」が位置する富士北麓の気候や景色、季節に合わせてチョイスしたオリジナルブレンド。今回は中国雲南省の豆、エチオピアの2種類の豆がバランスよくブレンドされている。
「春から夏は酸味のある果実を意識してコーヒーは少し浅めの焙煎にし、フルーティーな味わいを楽しんでください」。
そして2種類の抽出方法で飲み比べ。ひとつは沸騰するやかんに挽いた豆を直接入れて煮出すフィールドコーヒー。北欧のワイルドな飲み方で、最初は半信半疑だったが、カップに注がれた熱いコーヒーを口に含むと雑味のない果実味に驚かされた。
もうひとつはエスプレッソ。こちらは深みの中にフルーティーさが漂い、とてもバランスがいいのだ。いずれも香りが清々しく、浅煎りコーヒーの概念がすっかり覆された。
ディナーは土地の記憶へと導く3品のコース料理「ガストロノミック・ワイルド」


「コーヒーディスカバリー」のプログラムには夕食も含まれており、コーヒー飲み比べの「午後のひととき」の後はダイニングでのディナー「ガストロミック・ワイルド」を賞味。
地元の食文化を最大限に引き出しており、アペタイザーを「水」、メインディッシュを「火」、デザートは「大地」と銘打った3品で構成されたコース料理になっている。
大鱒、和牛や鹿肉などを使った料理が物語を刻むようにサーブされ、見た目も味もインパクト抜群!まさにワイルドな口福に酔いしれた。
ディナーの後に森の中のクラウドテラスでコーヒーカクテル

夕食後は、「コーヒーディスカバリー」の3つ目コーヒーメニューを味わうため再び森の中へと移動。敷地内のクラウドテラスで焚き火を眺めながらコーヒーカクテルを味わうという趣向だ。
グランピングマスターとともに焚き火を使いながらドリップコーヒーを淹れ、アイリッシュコーヒースタイルに仕上げたカクテルを堪能。コーヒー8割、ウイスキー2割の割合と、和三盆のシロップと合わせ、ホイップクリームを浮かべた大人の味わいだ。
しっとりと深い緑の香りが立つ夜の森。焚き火の音は夜の静寂(しじま)に溶け込み、香り豊かなカクテルの味をさらに素敵にしてくれた。
朝食のBOXには一晩かけて抽出したコールドブリューコーヒーを

翌朝ももちろんコーヒーが主役の爽やかな朝食からスタート。その名も「朝食と楽しむコーヒー」は、ルームサービスのモーニングBOXに、こだわりのコーヒーを組み合わせた内容だ。
一晩かけてじっくり抽出したすっきりとした味わいのコールドブリューコーヒー。同じブレンドのコーヒー豆ながら、また違ったフルーティーさと香りが楽しめ、コーヒーの奥深さをまたまた再認識させられた。
ヨーグルトや夏野菜のスパニッシュオムレツ、ダッチオーブンで焼いた自家製パンなども本当に美味。
テラスの先に広がる河口湖の清々しいランドスケープも、コーヒーとともに記憶に刻んでおきたいメニューだろう。
静かで美しい表情を見せる早朝の湖面でカナディアンカヌー
「星のや富士」の朝、実は朝食前に、念願だった河口湖での「湖上の早朝カヌー」のアクティビティに参加していた。星のや富士専用プログラムだから参加者は宿泊のゲストのみ。
早朝6時50分に宿を出発し、インストラクターの説明・指導を受けてからいよいよ河口湖へとカナディアンカヌーで漕ぎ出すのである。
静かな凪の湖面をゆっくりと滑るように進んでいく何艘ものカヌー。朝陽はきらきらと水面(みなも)を照らし、その正面には霊峰・富士山が言葉を失うほどの迫力と美しさを放ってそびえ立っている。
オールを漕ぐ音と水音、そよぐ風がどこまでも心地いい。参加していた方の幸せそうな笑顔がまさにその素晴らしさを物語っているようだった。

住所:山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
TEL:050-3134-8091(星のや総合予約)
客室数:40室・チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
料金:1泊13万5000円~(1室あたり、税・サービス料込、食事別)
アクセス:J東富士五湖道路・河口湖ICから車で約20分
公式HP:星のや富士
「コーヒーディスカバリー」概要
期間:2025年3月1日〜通年
料金:1名41,000円 2~3名32,000円(1名あたり・税・サービス料込)*宿泊料別
含まれるもの:焚き火熾し、午後のひととき(2種類のコーヒーの飲み比べと小菓子)、夕食、夕食後の一杯、朝食ルームサービス(モーニングBOX)、朝食と楽しむコーヒー
定員:1日1組(1〜3名)
対象:満20歳以上の宿泊者
予約:公式サイトにて14日前まで受付
備考:仕入れ状況により料理内容が一部変更になる場合があります。
また、天候などの状況により内容を一部変更、中止する可能性があります。
文/岩谷雪美 撮影/新井寿彦(一部星野リゾート提供)
いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。
我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。
