106187厳しい自然が育む旨味のきらめき|弘前シードルの旅

厳しい自然が育む旨味のきらめき|弘前シードルの旅

男の隠れ家編集部
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今、シードルが熱い。欧州では古くから親しまれてきたが、日本でも少しずつファンが増え始めているのだ。一体どんな酒なのか? りんご王国・弘前で魅力を探ってみたい。

■りんご王国・弘前でシードルの歴史が再び動く

りんご王国らしい弘南鉄道「中央弘前駅」。懐かしいフォントに心が温まる。

春模様の都内を離れ、弘前へ。北へ向かうにつれ、次第に空気が白くなる。新幹線を降りると雪がしんしんと降り、凛とした冷たい空気が肺に入る。

この厳しい気候が、100年以上もの間、青森をりんごの生産量日本一にしている。りんご栽培には、昼夜の温度差が大きい気候が適しているが、青森の気候はまさにぴったり。

風情ある飲み屋街も。夜になるのが楽しみだ。
カーブミラーにりんごのあしらい。

昼は太陽を浴びて成長し、夜は寒さから身を守るために糖度を蓄える。この繰り返しで、みずみずしく甘いりんごが育つのだ。

さらに、その品質は世界トップ。それは、津軽の人々の気質があってのことだ。「じょっぱり」と言うべきか、真面目で頑なな性格がより美味しいりんご、美しいりんごを作ってきたのだ。

しかし2000年に入り、長年続いてきたりんご栽培にも陰りが見えてきた。就農者の高齢化と後継者不足だ。台風や雹の被害で少しでも実に傷が付けば、安価で出荷せざるを得ない。

しかも、農家には価格決定権がないため、買い手側の基準で取引が成立する。労働と収入のバランスが取れていないのだから、担い手は少なくなっていく。

青森県の県民鳥は白鳥。季節を告げる鳥として親しまれている。

このままでは“りんご王国”が失われてしまう。そこでシードルの生産に火がついた。シードルを生産することで、傷が付いたりんごを利用できることに加え、価格決定権が生産者にあるため収入が安定するのだ。

2010年、弘前が「ハウスワインシードル特区」に認定され、2年後にはシードル発祥の地であるフランス・ノルマンディー地方のブーヴロン・アン・オージュ村と弘前市が技術指導についての協定を締結した。

じつは、弘前市は昭和29年(1954)、日本で初めての本格的な国産シードル「朝日シードル」が製造された地でもある。

当時は時代もあり、それほど注目を浴びることはなかったが、約70年の時を越えて再びシードルの歴史が動き出したのだ。次第に醸造所が増え、弘前はシードルの地としての地位を築き始めた。

「kimori cidre DRY」。きめ細やかな泡立ちが美しい。

⚫︎シードルが広まったのは11世紀

11世紀、ブドウの栽培ができなかったフランスのノルマンディー地方でりんご栽培が盛んになり、シードル造りが定着。その製法がイギリスに伝わり、その後ヨーロッパを中心に愛飲されるようになった。

⚫︎生産国ごとに味わいの違いが

シードルの魅力は国ごとに味わいの違いが出やすいこと。たとえば、フランスは渋みのあるタイプが多く、スペインは酸味が強い。りんごの糖度が高い日本は甘みが強い。ぜひ、飲み比べも楽しんで。

⚫︎シードルは英語で“サイダー”

日本の「サイダー」の語源は、英語でりんご酒を意味する「cider」。発売当初の「三ツ矢サイダー」はりんご風味だったことから、サイダーという呼称に。それがそのまま定着したのだとか。

⚫︎りんごの質が直結するシンプルな造り

シードルの造り方は、果汁を搾ってタンクに移し発酵・熟成というのが大まかな流れ。ワインの造り方と非常に似ていて、極めてシンプルだ。その分、りんごの品質によって味わいが大きく変わる。

撮影/三輪卓護

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