キッチンのリフォームにこだわり 築60年の住宅を夫妻二人で改装

部屋にはお気に入りの雑貨が並ぶ。

渋谷さんの勤務先は建材のWebショップであるTOOLBOX。職業柄、家の改装に興味があったものの購入したいと思えるほどの物件には出会えず、日頃から悶々としていたそう。そんななか、古い戸建ての賃貸住宅を偶然発見。聞くと、大家さんが自ら改装したものの途中で頓挫し、工事途中で放置されていたそうで、運良くそのまま工事を引き継ぎ入居することになった。

「賃貸なので改装しても自分のものになるわけではない。お金をかけずに予算なしでどれだけできるかをDIYのテーマにしました。そこで、会社で出る廃材や繋がりのある職人さん、大工である兄などから、捨ててしまう建材を大量にもらえることになり、材料費が大幅に浮きました」

入居前の2カ月間を、フリーレントでリフォーム期間として設定できたため、会社の出勤前や土日を作業に当て、奥さんの枝里子さんと二人で改装を始めた。最初に行ったのは、1階のリビングやキッチンの壁、天井のペイント。塗装屋さんからもらった「水性ケンエース」という業務用の塗料で白く仕上げた。

枝里子さんは「天井は首を曲げて作業をするので苦行でした。でも友達が手伝いに来てくれて、終わるとみんなで日帰り入浴施設に行ったり飲みに行ったり。楽しい作業になったので続けられました」と話す。

一番こだわったのはキッチンだ。まず排気ダクトがむきだしの状態だったので、ダクト部分を覆うようにして梁型を造作。古い物件のため建物が歪んでおり、レーザー水準器で水平を見ながら作業をしたのだという。キッチン床は既存の床材の上から、厚さ5㎜のコルクを貼って重ねた。

最後にシステムキッチンの周辺を大幅改装。壁をタイル貼りにして、スパイス掛けや棚も造った。また壁にはハンガーバーを付け、タオル掛けやキッチンツール掛けにした。さらにキャビネットの扉は化粧合板の裏板に変えて、シックな色と質感を生み出した。こうしてキッチンは見事にリフォームされたのである。

キッチンのスパイス棚。オリーブオイルやパスタ、スパイスなど収納する瓶や缶に合わせて棚のサイズを変えている。

棚受けがひとつずつ違う お洒落で個性的な手造り棚

「夫のこだわりが強く、時には喧嘩になりましたが、キッチンには満足しています」。枝里子さんは和装スタイリストで、和のテイストの物が多い。一方、南人さんはアメリカやヨーロッパ志向が強い。大家さんから「和室の解体はNG」と言われていたため、和と洋の要素をどうまとめるかが、最も心を砕いたところだったそうだ。

「一緒にするとごちゃごちゃになってしまうので、強引に間をとって〝台湾〟をイメージしました。和室の木枠を朱色に塗り、紹興酒の壺を置いたり。何となくそれらしく……できたと思います」

和室から見たリビングとキッチン。インテリアグッズや色彩に、夫妻の住まいへのこだわりが見える。

渋谷邸で印象的なのは、様々なタイプの棚があることだ。普通の棚受けでなく、鉄・ステンレス製のリングを取り付けて板を渡しただけの棚や、Macの緩衝材を使った棚など個性的で遊び心に満ちている。DIYの基本といわれる棚造りだが、まだこんなに素敵な楽しみ方があったのかと驚かされる。

和室の棚も収納だけでなく、ゆったりと飾ってさりげなく見せる棚になっている。

また、棚のリングやキッチンの壁面タイル、ハンガーバーなど、ここぞという場所には自社商品を使用。照明器具のスイッチを工業用トグルスイッチに変えるなど、その選び方にも南人さんのセンスが光っている。長年、物のディスプレイに関わる仕事もしてきたので、部屋の見せ方を考えるのは職業病のようなものだという。

最近はWebショップで家具やインテリアアイテムを購入する人が増えているが、「買ったものを部屋に入れてみると事前に想定していたよりサイズが違うと思うことが多い。できる限り実物が見られる状況であれば、確認した方が失敗がないでしょう」というアドバイスもしてくれた。

「モノを造るのが好きな人ならDIYは必ず面白いと感じられます。自分でやったらどうなるのかと実験できる上に、お金をかけなくとも物や家への愛着が生まれる。時間がかかること以外は悪いことはひとつもありません(笑)」

南人さんは最近、第二種電気工事士の資格を取得した。そして枝里子さんはミシンを購入、テーブルクロスなどを製作する予定。渋谷邸のDIY第二章はこれから始まる。

※2018年取材