由緒あるお茶屋の建物で
独自の「フランス会席」を提供

斬新なスタイルだけでなくフレンチの王道の味を追求

「店の外観から客室、食器に至るまで、全てが和物でしつらえてあります。この建物も、元々江戸時代の終わり頃に建てられた由緒あるお茶屋でした。その良さを最大限に生かしつつリノベーション。まるで京都の伝統的なお茶屋で、会席料理を愉しんでいるかのようにフランス料理がいただけます。これは京都だから可能な、唯一無二のスタイルです」

こう語るオーナーシェフの井上晃男さんは、日本のフランス料理界で最古の歴史を誇る東京丸の内の「東京會館」で修行。当時ソースの魔術師といわれたパリの三つ星レストラン「グランヴェフール」のオーナーシェフ、レイモン・オリヴェ氏の導きにより確立された伝統的なクラシックフレンチの基本を身に付けた、フレンチの巨匠なのである。

そんな井上さんが昭和56年(1981)、先斗町にオープンさせたのが「禊川」だ。先斗町といえば、今も京都の「五花街」のひとつに数えられる繁華街で、かつては茶屋や旅籠などが軒を連ねていた。鴨川と木屋町通の間を狭い石畳の小径が南北に走り、現在は様々な飲食店が通りの両側にびっしりと並んでいる。

井上さんが語ってくれた通り、教えられなければ部屋に通され、さらに料理が出てきても、それがフランス料理だとは気づかないかもしれない。料理を口に運び、ようやく「これはフランス料理だ」と気づかされるのだ。

日本の伝統的な建物の中で、京焼や陶芸作家による和食器に盛られたフランス料理を箸でいただき舌鼓を打つ。これぞ井上さんが確立し、京都らしさを表現した「フランス会席」という独自のジャンルだ。

「とはいえ、単に見た目の珍しさでお客様を呼ぶのではなく、料理の基本はあくまでクラシカルなフレンチを守って提供させていただきます。ですから海外からのお客様も、食べ慣れた味に安心なされるようです」

そんな禊川のお昼ご飯は、ランチ会席「みそぎ」(8000円)と特選ランチ会席「なごみ」(1万3000円)が用意されている。「みそぎ」はアミューズグール、前菜、スペシャリテ、シーフード、スープ、メインディッシュ、和風茶漬け、デザート、コーヒーと小菓子というコース。そのどれもが、厳選された旬の素材を活かした、とっておきのメニューとなっている。

前菜は「白アスパラガスと小海老のサラダ仕立て」。フランスのロワール地方で採れた、大きくて香り高いアスパラを使用。甘みの強い静岡産のアメーラトマトとの相性も抜群。下には伝統的なコンソメを使ったジュレが敷かれ、素晴らしいアクセントを奏でてくれる。

スペシャリテは「茄子とフォアグラの取り合わせ」。濃厚なフォアグラの旨味が、新鮮なナスの甘みを引き立ててくれる。そして「鮎のムニエルソースアマンド」は、アーモンドの香ばしさと食感がクセになる。

メインディッシュは、開業以来炊き続けたデミグラスソースがかけられた「近江牛の網焼き」。コクのあるソースが肉の旨味をより凝縮し、キレのある逸品に仕上げている。