酒場ではなく、酒屋の一角で酒を飲む「角打ち(かくうち)」には、人々を惹き付ける独特の魅力がある。ここではその由来や発祥をはじめ、角打ち文化の何たるかについて解説する。

昭和レトロなムードが漂う「角打ち」の魅力

そもそも「角打ち」の語源はどこにあるのだろう。もともとは、単に酒を枡で飲むことを指す言葉だったといわれる。四角い枡の角に口を付けて酒を流し込む様子を、そう表現したのだ。

かつて酒は量り売りだったため、枡で量った日本酒をその場で飲む、すなわち酒屋で立ち呑みすることを、転じて「角打ち」と呼ぶようになった。

酒屋の一隅で酒を飲む。角打ちの一番の魅力はそのレトロな素朴さにある。初めから酒場として造られた空間ではないため、立ち飲みの店内スペースは、酔客集えばたちまち満杯となるようなところが多い。

現代の角打ちでは肴もたいてい用意されているが、店内のつまみを各自購入する方式から手作りのおかずが並ぶ店までさまざまだ。元が酒屋なので豊富な銘柄の酒を安価で提供しており、いわゆる「せんべろ」に近い飲み方も可能である。

レトロな雰囲気と安い酒、そして束の間の憩いを求めて、角打ちにはどこからともなく左党が寄り集まってくる。酒好きにとって角打ちの酒店は隠れ家のような場所であり、静かなバーやバルなどとはまた違った安心感と連帯感が味わえるのだ。

男たちが集う。角打ちの発祥と文化背景を知る

角打ちの発祥は、福岡県北九州市といわれている。八幡製鉄所を中心に工業地帯の広がっていた北九州で、仕事帰りの労働者が酒屋の酒をその場で開けて飲んだのが始まりとされる。

居酒屋は夜の営業がメインだが、交代制の労働者が日中でも勤務明けに飲めるようにと、酒屋が便宜を図っていたものがひとつのスタイルとして定着したというわけだ。

その後、角打ち文化は各地に広がり、東京や大阪などの大都市でも見られるようになった。ちなみに、角打ちと同義の言葉で、酒屋で飲むことを関西では「立ち呑み」、東北では「もっきり」と呼ぶこともあるという。

こうして、知る人ぞ知る吞兵衛の隠れ家として受け継がれてきた角打ちだが、ここに来て近年小さなブームが起きている。角打ちを行う酒屋が少しずつ増えているというのだ。

背景には、小規模酒販店の営業が難しくなっていることが挙げられる。規制緩和により大型量販店やコンビニでもアルコールの販売が認められるようになり、昔ながらの酒屋の経営が大きく圧迫されるようになった。

そこで、顧客や販路の開拓手段として角打ちに乗り出しているというわけだ。こうした新規参入の角打ち酒店には、日本酒や焼酎といった定番にとどまらず、ワインやクラフトビールなどラインナップに個性を見せているところも多い。

餅は餅屋なら、酒は酒屋。おすすめの銘柄や酒の知識を教えてもらいながらの角打ちで、新たな発見と経験が得られることだろう。